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天パちゃんと母  作者: りなち
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幼少の天パちゃん

 覚えている出来事を書いて行こうと思います。


 まず母は、私に「他人との関わり方」について、口を出してくるようになりました。

 母は、「お前は一人っ子で、我が儘だ。我慢というものを知らない。」と、私が散々傷つけられ、一番嫌いな言葉と化している「一人っ子だから」という言葉を毎日呪文のように浴びせかけてきました。


 当然ながら、一人っ子になったのは、私が望んだからではありません。生まれた時から私は一人っ子で、その後も弟や妹のできる気配は皆無でした。


 「一人っ子」、「我が儘だ」の言葉があまりに辛くて、「なりたくて一人っ子になったわけじゃないよ。」と、私が言うと、「一人っ子にしたのはママが悪いと思ってる。我が儘にしてしまったのも、ママの責任。ごめんね。でも、これからは厳しく躾けるからね。」と、訳の分からない言葉が返ってきました。

 

 幼い私は、自分のせいで母を悲しませていること、自分がどうしようもなく悪い子どもであること、でも自分では何をどうしていいかわからないことで混乱し、ただ泣くことしかできませんでした。それさえも、「これくらい怒られたくらいで泣くなんて…」と小言を言われました。


 また、体が弱いと指摘されたことについても母はとても気にしており、何かさせなければと考えていたのでしょう。ある日突然、私は近所の体育館に連れて行かれ、そこで空手を習うことになりました。私にとっては寝耳に水な話です。


 習い事をすることに憧れはありましたが、内気な私は空手などに興味は無く、当然「やりたくない。」と抗議しました。ですが、「体が弱いといじめに遭う。やりたくないとかじゃなく、やるの。もうお金も払ってきちゃったんだから、来週から行くからね。」と、母は相手にしてくれませんでした。


 やる気のない私は、毎週の空手の日が苦痛で苦痛で仕方ありませんでした。

 確かに、体は以前より丈夫にはなりましたが、年上でみんな同じ学校に通っている男の子ばかりの道場だったので、既にコミュニティは出来上がっており、話し相手はいません。また、女の子で空手をやっている珍しさからか、休み時間はヒソヒソと陰口を言われます。正直、楽しいなんて感じたことは一切ありませんでした。

 行きたくない、辞めたいと何度も言いましたが、辞めさせてはもらえず、私は小学生になるまでずるずると空手を続けることになります。

 

 そして、母が止めを刺された片付けに関してのこと。私は自分のお気に入りのスペースにお気に入りの物をまとめて置いておく癖があったのですが、きちんとした棚が置いてあるわけでもないので、見た目は雑然としていました。

 でも、私にとってその場所は家の中で最も安らげる場所で、誰にも侵されたくない空間でした。

 しかしある休日、母がゴミ袋を持って、「片付けるよ。」と言い、突然私の宝の山を崩し始めました。「これ、もういらないよね?」と言って、次々ゴミ袋に物を放り投げていく母。私は、「それは大事なものだからやめて!」と泣きじゃくりましたが、「うるさい!こんな紙切れゴミでしょ!だから片付けられないって注意されるんだよ!?片付けられない人はろくな大人にならないよ?ゴミ女になるよ。」と、捲し立てるように怒鳴られました。


 私が大切にしていたものは、主に自分が描いた絵や、思いついた話を書き留めていたノートで、確かにただの紙切れかもしれません。でも、私はそれらを眺める時間がとても好きで、それらに囲まれているととても心が安らいでいたのです。

 私が次々に捨てられていく宝物を見て泣いていると、あらかたの宝物を捨て終わった母が、「ちゃんと片付けないのが悪いんだよ。」と冷たく言いました。


 「そうか、私が悪いんだ。いつも怒られてばかりの私が悪いんだ。だから、宝物は捨てられちゃったんだ。」と、私は自分を責めました。何故かこの時、母を責めるという思いはありませんでした。


 これらの他にも、幼稚園時代は母に対して納得のいかないことが沢山ありました。

 子ども同士の喧嘩で、私は悪くないのに、ろくに事情も聞かれないまま、謝ることを強制されたり、私が苦手としていることや、上手くできないこと、失敗したことを、私が嫌がっているのにも関わらず、他人に笑いのネタとして話したり。


 私は今でも、自尊心が低いと言われますが、この頃の経験もその原因の一つだと思っています。


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