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1D4Hの木製勇者  作者: 神楽野 鈴
アウトサイド・タムル
38/38

34話 6D:強制ログアウト


 大地の切れ目の底に立った。

 峡谷は深く、底から崖を登って脱出する事は難しそうだ。


 底の幅は10メートルほどで、その割れ目は上空で見た時に前後に十数キロ続いていた。


 大地震で大地が引き裂かれて出来たと思われる峡谷は、曲がりくねっており数百メートル先までしか見えない。


 このような峡谷が複数あるのも上空で確認している。


 左右の壁には、直径3メートルほどの穴が所々に出来ていた。

 自然に出来たにしては円形に近い穴なので、人工的に作られた物かも知れない。

 しかし、人が掘ったとしては、高さが10メートルくらいの場所にも穴があり不自然な場所を掘っている。

 まるで何かを探して掘ったような感じだ。


 峡谷の底には、その穴を掘った時に出たと思われる1メートル程の大きな石や土が、いくつも散らばり盛り上がっていて歩き難そうだ。



 2枚の羽として使用していた布地が、再び木人形の上半身に巻き付き白い服に戻ってくる。


 俺たちの木人形の姿は、以前の様に白く石膏像のような姿に戻ってしまった。


 ちなみに、俺の木人形は、ライナを取り込んでも男性型だったが、直人の木人形はモーラを取り込んでから女性型に形が変わっている。友美は元々ユリスティアと背丈がそれほど変わらないので、女性型も以前と余り変わっていない。


 俺は、友美と直人に怪我がないか確認したが、怪我はなく、オオワシに掴まれた時の傷もふさがったと聞いた時に、ズキッと心に痛みが走った。


 <…… トシヤ様?>


 ライナが、俺が感じた感情の痛みを敏感に感じたのか、心配そうに声を掛けてくる。


 <何でもないよ>


 俺は、すぐにそう答えて、心の痛みを隠すためにライナに意識を向ける。


 <ライナは、何処か怪我はないか? あんなに高いところから飛び降りて恐くなかったか?>


 そう話しかけながら、思考会話はフタバとライナで話せると思っていたが、ライナには俺の感情も感知できるみたいなので、注意しなければいけないと俺は思った。


 <いいえ、恐くなかったです!ちょっとドキドキしましたが、楽しかった>


 嬉しそうに答えてくるライナの言葉に、今まで落ち着いて話せる状況でなかったので、確認するのを忘れていたあの時の事を思い出した。


 <ライナ、そう言えば言葉が上手に話せるようになったのか?>


 <あ!……そうだね?どうしてなんだろう?……いつもは、頭で思った言葉が口から、こんなにスラスラでることなんて、なかったのに不思議。……トシヤ様が治してくれたのですか?>


 <いや、俺は何もしていないけど。……フタバなら何か分かるかな?>


 <マスター。推測ですが、ライナ様を取り込んだ時に”えにし”の糸が深く絡み合いましたが、その時にマスターとライナ様の間に感情レベルまでの深い繋がりが出来てしまったかも知れません。それによってライナ様の思いが、マスターにはそのまま言葉や感情の起伏で認知出来る様になり、ライナ様の言葉が上手になったと感じるのではないでしょうか>


 <そうなのか?……それはつまり、ライナが言葉を発しようとする前の思考と直接会話をしているって事かな?>


 <はい、ガーディアンの補助もある様ですが、マスターの考えで合っています。ただ、ライナ様が友美様たちに直接話しかける場合は、今までと変わらない状態になりますが、マスターを経由すれば友美様たちとも上手に話すことは可能でしょう>


 <そうなのか。……でもなぜライナは、発声が上手く出来ないんだろうか?>


 <マスター。ガーディアンを利用してライナ様のお体と意識をお調べすることが出来ますが、どう致しましょうか?>


 <……トシヤ様、言葉が上手く話せるようになれるのなら、調べてもらいたいです。……上手く話せないのは………辛いです>


 ライナの最後の言葉には、苦しく辛い感情がのって俺に伝わってきた。

 まだ7歳であるにもかかわらず、一生懸命生きてきたライナが、上手く言葉と感情を表現できないで辛く苦しい想いをしてきたのだろう。


 <フタバ、ライナの体を調べてやってくれ>


 <はい、マスター。ガーディアンの能力が抑えられているので、瞬時にはお調べできませんが、検査を開始します>


 <ライナ、何か分かるといいな>

 <はい、フタバ様、トシヤ様。ありがとうございます>


 少し嬉しそうに返事をしてくれるライナに、そこで気になったことを俺は1つ提案をしてみる。


 <ライナ、出来れば俺には”様”を付けないで欲しいんだが、ダメだろうか?>


 どうも俺は「様」呼ばわりされるのは、くすぐったい。

 フタバの「マスター」は、まあ仕方がないと思っているけど、さすがにライナのような幼い子供にいつまでも「様」を言われるのは、罪悪感が募ってくる。

 それに暫く一緒にいるのなら、もう少し親しく気軽くフレンドリーに話せる様にしたいと思ってしまう。

 

  <トシヤ様?……それは、お名前を呼んでは……いけない………と、言うこと……でしょうか?>


 先ほどの嬉しかったライナの声と感情が、見る見る萎んでいくのが分かる。

 ライナの勘違いに、俺は慌てる。


 <い、いや。名前じゃなく、「様」を付けないでって事だよ。トシヤって呼んでくれれば良いんだけど>


 <ト、トシヤ様! それは出来ません!!私の命を救って頂いたトシヤ様に言えません>


 困ったな。

 ライナからは、頑として「様」を取ることは出来ないという感情が流れてくる。

 命を助けたことを盾に、脅迫めいた変更は出来るだろうが、そんな事はしたくないし、どうしたものか。


 暫く悩んだ俺は、あることを聞いてみる。


 <それじゃあ。ライナは、兄妹はいないってユリスティアから聞いたけど、俺をお兄ちゃんの位置におくことは、ずうずうしいけど出来ないかな?>


 <え?! お兄ちゃん?……ですか?……そんな……でも、良いのですか?>


 突然、ライナの感情と思考が目まぐるしく回り始めるが、俺にはどの様な思考か分からないほど高速で、そこに現れる感情も起伏が激しく、何を考え何を感じているのか理解出来なかった。


 <……ダメ!!……あ!……トシヤ様。………分かりました。……まずは・・・お兄ちゃんと呼びます>


 突然、ダメと叫んで、俺が聞いていたと分かって、赤面したような感じだったが、どうやら「様」は止めてくれるようだ。

 何がダメだったか気になるが、感情を害して戻されるよりは、今は聞かない方が良いだろう。


 <じゃあ、練習で呼んでみてくれないかな?>


 <え? いまですか? ……わかりました。………ト、トシヤお兄様>


 <違うよ。「様」は無しで>


 <は、はい。……ト、トシヤお兄ちゃん>


 その呼び方に俺はむずがゆかったが、「様」よりまだ、ましだし、ライナの年相応の呼び方だと思って我慢する。

 しかし、ライナはすごく嬉しいのか、喜びの感情が俺に伝わってきた。


 そして、このライナとの遣り取りは、俺がライナに意識を向けたことで、専用通話となってしまい、友美達には聞こえていなかった事を後になって知るが、その事がある種の大事件になる事は今は知らなかった。



 〜〜〜



 俺たちは峡谷の底で、再度話し合った。


 まずは、峡谷に沿って本砦に戻るか、人工的に掘られたと思われる穴に入って調べるか、それともオオワシを打ち落とした光弾が発射された場所に向かってみるか。


 そこで、魔人から助けてくれた光弾を発射した場所に行けば、人に会えるだろうと言うことになり、その人達に助けを求めるか、それが出来なくても『カリュプスの民』やこの外の世界について情報を聞ければいい事になった。


 オオワシを打ち落とした光弾が何処から飛んできたか、直人が把握していたため方角とおおよその距離も分かっているが、峡谷の底は歩きにくく思ったほど進むことが出来ない。


 それに時々、微かに地鳴りが聞こえて地面が少し振動した。


 どこから発生しているのか分からない地鳴りに、直人にも方向が分からないらしい。


 そんな事もあって、慎重に進んでいく。


 俺たちの強制ログアウト時間も30分をきった。


 『トシヤ、友美、あの光弾が発射された位置は、丁度この峡谷の真横の方で並列した3つ目の峡谷からだった。この峡谷の崖を登ることは難しいけど、この横穴を通っていけば次の峡谷に出られるかも知れない。どうする?』


 <安全を取るなら時間を掛けて、一度、崖を登って脱出してから向かう方が良いけど、もう1つ峡谷を渡る必要があるなら、この横穴を抜けていくしかないな。だけど、この横穴は何処に続くんだろうか?>


 直径3メートルほどの横穴の中は曲がりくねって奥が見えない。

 しかし、微かだが風の流れがあって何処かと繋がっているようだ。


 『分からない。音の反響から穴の通路を推測してみたけど、複数の穴が繋がって迷路の様になっているのは分かる。だけど、隣の峡谷に最短で繋がっているかは僕にも分からないよ』


 『それでも私たちが強制ログアウトする前までに、目的地までは辿り着かないとユリスティア達が迷子になっちゃうわ。行きましょう!』


 友美はすぐにでも横穴に入ろうとするが、俺は再度、安全を確認する。


 <分かった。この横穴を使おう。その前に再度確認させてくれ。フタバ、直人、この横穴に生命反応はないか? この横穴が自然に出来た物でなければ、それを作った人か生き物がいるかも知れない>


 <マスター。ガーディアンの機能低下で感知範囲は狭いですが、それでも魔力を持った魔獣の気配はありません。ただ、通常の生物が住み着いている可能性があります。戦闘の準備をして行く方が安全です>


 『僕の予測でも、この洞窟を作った生き物との遭遇は、高い確率でありそうだよ。今まで通ってきた谷に溜まっていた石や土の状態を見ると、余り時間が経っていない堆積も数カ所あったからね。』

 

 <分かった。だけど穴の中では戦闘を控えよう。倒せないと思ったら全速力で逃げ出すこと。戦闘は広い空間で行わないと、俺たちに不利になる>


 『分かったわ』

 『OK』

 『そうですね。戦闘になったら私と友美に任せて下さい』

 『私も直人くんと一緒に加勢するわ』


 友美と直人の返事に続きユリスティアとモーラも同意してくれた。



 最初は警戒してゆっくりと横穴に入ったが、奥に行くほどに穴全体が強固に補強されており、少々の地震で穴が潰れないようになっていた。

 

 本来なら真っ暗な穴の中だが、木人形の暗視性能が良く、昼の外の様に見える。

 その壁を見て俺たちは、この穴を作ったのが人でないと確信した。


 壁を触ると透明なプラスチックの様な物質で覆われていて、一度だけ剣で切りつけ見たが、ても剥がれることはなく、”キーン”と金属音をだして剣を弾き返した。


 その音は余りにも明瞭に鳴り響いたので、暫く俺たちは息を潜めて穴を作った生き物を、引き付けていないか確認するために動きを止めた程だった。


 暫く何も動きがないことを確認して、慎重に穴の中を進んでいく。


 曲がりくねった道だったが、直人に地図作成を任せてその出来上がった地図を俺と友美に表示してもらっている。


 目的地方向も出ているので、歩いている方向は間違っていないが、道が曲がりくねっているので、反対方向に進んで行きそうな場合は、分岐点に戻って別ルートを探索するという地道な地図作りになり始めてくる。


 直人の予測で洞窟の全長の半分ほど来た時に、峡谷に降り立った時から時々鳴り響く地鳴りが、段々と強くなっていくことに俺たちは気が付いた。


 何かが俺たちの方に向かって来ているのかも知れない。


 この狭い洞窟で、この洞窟を作った生物と鉢合わせはしたくない。


 3メートルもの大きな穴を空けて進むことが出来る生物、それに洞窟の壁を固めた特殊な物質を出しているならば、強固な皮膚を持っているかも知れない。


 そんな生物にガーディアンの機能が殆ど抑えられている状態で、立ち向かえるのか?


 黙々と地図作りをしている俺たちは、その考えが嫌な恐怖となって、俺たちを支配しようとしてくる。


 『友美、直人、トシヤ、恐怖は判断を鈍らせます。落ち着いて下さい。……今の私には何も出来ませんが、それでも1つだけお手伝いができる事があります。それは古くから砦の皆が知っている歌があります。静かな歌ですが、不思議と心が落ち着く歌です。モーラ、ライナも良ければ一緒にお願いします。友美達はそのまま出口を探して下さい』


 『そうね!ユリスティア、あの歌ね。分かったわ』

 『ユリスティア様……分かり……ました』

 

 ユリスティアが、俺たちの恐怖を分かったのか、それをほぐそうと俺たちに話しかけてくれた。

 

 『ユリスティア、ありがとう。ちょっと神経質になっていたかも。話しをして気分を紛らわせるよりも、音楽の方が良い時もあるものね。じゃあお願い』


 友美の返事を聞いてユリスティアが歌い出す。


 念話で聞こえてくる歌は、静かに流れるような歌であるにもかかわらず、力強く歌に生命力が宿り、俺たちに流れ込んでくるような感じだった。


 ユリスティアの歌に合わせるように、モーラとライナも歌声を合わせてくる。


 モーラの歌声は、ユリスティアよりいくらか妖艶を感じさせるが、全然不愉快ではない。

 言葉下手のライナもゆっくりなテンポのこの歌では、ユリスティア以上に澄んだ歌声を聞かせてくれる。


 いつまでも聞き続けたくなるような歌だった。


 歌詞はあるようだが、歌詞を聴くと言うより音色を聴くことで心が落ち着いてくる。


 楽器を使わず歌声だけで、ここまで先ほどの恐怖心を追い払えることに、俺は驚いてしまう。


 俺たちの恐怖心が薄れたことで、俺は風の流れと匂いに気が付くことが出来た。


 外から流れ込んできたと思われる少し温かい乾燥した風に、麦藁のような乾燥した植物の匂いが微かに漂ってくる。


 <直人、友美、温かい風を感じるぞ。外からの風かも知れない>


 友美と直人もすぐに分かったようで、風を逃さないようにゆっくりと出口に進んでいく。


 先ほどの地鳴りも聞こえるが、ユリスティア達はまだゆっくりと歌ってくれている事で、はやる気持ちを抑えられ道を間違えずに進んでいく。


 そうしてとうとう薄らと明かりが差している通路に出た。


 一気に俺たちは走り出して、外に出た。


 穴の出口は数メートルの高さにあったが、走りきった状態で峡谷の地面に着地していく。



 『ふう〜』


 誰かが緊張を解いたようだった。

 ユリスティア達の歌も終わっていた。


 俺もその場に座り込みたがったが、素早く周りを確認する。


 周りは、一番最初の峡谷と同じ雰囲気だったが、一つだけ違っていた。


 100メートル程先に巨大な生物の死骸が横たわっていた。


 その生物は、死んでから長い日が経った様で干からびていたが、その死に方は内側から弾け飛んだ様に見えた。


 生物の姿は、干からびて詳細は分からないが、その大きさからこの峡谷に穴を空けていた生物に違いなかった。


 その姿は、地球のミミズのような姿であるが、大きさが違う。


 直径3メートルの胴体が数十メートル伸びており、端は、岩盤を削るための歯が無数に付いている。


 反対側の端にも同じように歯が無数に付いている。どっちが前か分からない。


 先ほど洞窟に流れ込んできた麦藁が乾燥した様な匂いは、この死骸からの匂いだった。


 俺はフタバに確認してみるが、フタバも初めて見る生物だそうだ。




 俺たちは、慎重に死んだ生物に近づこうと歩み寄るが、その時、地鳴りが大きくなっていることに気が付いた。


 突然、俺たちが出てきた崖とは反対側の崖の数メートル上に巨大な穴が空き、先ほどの死骸と同じ様な全面に歯を生やした生物が現れて谷に底に落ちてきた。


 俺たちはその生き物に驚いた。


 死骸は巨大なミミズの様にみえたが、目の前の生き物の胴体は真っ黒で禍々しさを持った生き物だった。


 ここは逃げるのが一番と俺は思ったが、その生き物がこっちを見つけたーー目が無いのどうやって見つけたか不明だがーーようにこっちに無数の歯が並ぶ先を向けてくる。


 『私が倒すわ!』


 そう言うと友美が、禍々しい生物に立ち向かうために槍を取り出して駆けだして行く。


 <友美、止めるんだ! ガーディアンの力がない状態じゃ敵わないかも知れない。ここは一旦逃げよう>


 『ダメよ。逃げている時間が無いの。私の強制ログアウトが5分前なのよ! ここでユリスティア達を置いて行けないわ。せめてこのバケモノを倒さなくちゃ!』


 急いで俺も自分の時間を確認すると、俺も強制ログアウトが5分30秒後に始まる事が確認できた。

 

 ここで逃げたとして、もし逃げ切れずにユリスティア1人に戦闘を任せるより、まだ俺たち3人が戦える今ならば、倒せなくても今のうちに深手を負わせてユリスティア達が逃げる時間を稼いだ方が良いのかも知れない。


 <分かった。俺も戦う>


 そう言うと、俺と直人も短刀と大剣を取り出して、友美に続いて戦闘を開始した。


 巨大な生物は、こちらを向いていたが友美の攻撃に即座に反応して、口を大きく開いて友美を吞み込もうと襲ってくる。


 友美は、それを難なく回避して槍で口の側面を切りつけるが、”ガキーン”と鋭い音を立てて弾かれる。


 <マスター、あの生物の外皮はやはり、洞窟を固めた特殊物質と同じ構成で出来ています。通常の武器では外皮が壊れません>


 <分かった。友美、直人、聞いた通りだ。時間が無い。”空豆”がまだ5個残っているから、その1つを使ってみる。離れてくれ>


 『分かったわ』『OK』

 

 俺は、数千の魔獣を焼き尽くした火力なら、この生物ならすぐに倒せるだろうと思い、懐から空豆を取り出す。

 ーー ちなみに空を飛んだ時に、空豆は生地に収納されていたので落ちることはなかった。


 友美と直人が退避したのを見届け、空豆を生物の下に投げる。


 <フタバ>


 <はい、…”バーストフレア”>


 俺たちは大きな石の裏に隠れる。


 爆炎が立ち上がり辺りが灼熱となっていくが、驚いたことにこの生物は苦しそうにのたうち回るが、焼け崩れる様子が無かった。


 周りの石が溶けていくが、まだ生きている。


 1分ほどで爆炎が終わったが、不気味な黒い生物は生き残った。


 爆炎による黒い外皮に変化は無かった。


 この生き物は、予想以上に強敵かも知れない。


 俺のログアウト時間が、3分を切った。


 <もう一度行う。今度は2つ使って内側から攻撃してみる>


 そう言うと、俺は2つ空豆を取り出して、口に向けて投げ込むと、その生物はまるでシュレッダーの様に空豆を砕いて体内に取り込んでしまった。


 フタバがトリガーを言う前に、生物の口から炎が噴き出す。


 これでこの生物も死ぬだろうと思ったが、炎を噴き出しながらも体をよじるだけで、弱る様子を見せない。


 ”ギュオーーーーン”


 炎を吐き出す口とは反対側の口が、突然地面が震動する程の大音量の鳴き声を上げた。


 その声は、助けを求めるような切ない鳴き声だった。


 すぐに俺と直人は、その鳴き声が仲間を呼んでいるのだと意味が分かったが、余りにも重低音でガーディアンの動きが止まってしまう。


 それと同時に友美がログアウトすると叫んで、友美との念話が途切れる。


 その間も、鳴き声が鳴り響く。


 炎を吐き出す口は、大きく開かれ爆炎が高く舞い上がるが、それでもその生物は生きている。


 凄まじい生命力だ。


 直人が続いてログアウトした。


 ユリスティアがいるガーディアンを見ると、白いガーディアンが茶色く木の表皮の様に変わっていくのが見えた。


 直人の方も白いガーディアンが茶色く変色していく。

 その表皮も木のように凸凹となっていっている。


 俺ももうすぐ強制ログアウトだ。


 <ユリスティア、すまない。あの生物は倒せない。逃げてくれ!>


 『分かっ』


 ユリスティアの言葉が途中で途切れる。


 ”強制ログアウトします”


 

ここまでお読み頂きまして誠にありがとうございます。

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