32話 6D:救出
先週に引き続き投稿が遅くなりまして申し訳ありません。
タムル砦の谷の出口から数キロ離れた魔人族の砦。
砦のラプソはバチが人間の砦に侵攻した事を、谷を監視していたナーティからの第一報で知った。
本来ならバチを監視しているはずのトルアから最初に知らせが来なければならないが、それが行われていない。
ラプソはその事は内に秘めて、ナーティには監視のみを継続する様に指示する。
ラプソは配下の魔獣5体を選び出してバチの抹殺および魔獣の撤退を指示するが、その指示もナーティからバチの戦死を報告で受け取ると、すぐに取り消すことになった。
人間より遙か強力なバチが倒されたことに驚いたが、ナーティから追加報告で白色のガーディアンが3体現れ、そのガーディアンによりバチの魔核が体外に打ち抜かれて倒されたという報告で納得できた。
白のガーディアンについては、先ほどタスク卿の伝令で白のガーディアンが動き出したと聞いており、それに関連した指令が出ていた。
バチが倒されたことにラプソは、人間への報復は考えていなかった。
今回はバチの軍規違反で人間の砦に侵攻して、敗れたのだ。
軍規違反を犯した時点で、バチの帰る場所はなくなっていたのだ。
バチもその軍規を知っていたはずだが、暴走したバチには軍規違反をしているとの認識が欠落していたのかも知れない。
その後暫くしてからトルアがバチの死亡報告をしてくるが、ラプソは、なぜバチが行動する前に報告しなかったか問い質すと、十数キロ先に魔獣が集結し始めた事の調査を優先させてしまい、バチの監視がおろそかになったと話した。
しかし、ラプソはトルアがわざとバチの監視を緩めたと感じていた。
そうでなければ300頭近い魔獣が動いて、気が付かないはずがない。
トルアは長年、ラプソの参謀として付き従って来てくれていたが、このような命令を無視したような行動を何度か取ることがあった。
そのためラプソは内心トルアを信用していなかった。
それもラプソがトルアを参謀として置くのは、プロム1世からの命令であるためだ。
ラプソは、十数キロ先の魔獣集結について、あの魔獣達は魔人王プロム1世の命令で動いているグループであり、トルアとナーティに係わらないように指令を改めて出した。
その後、ラプソは、ナーティが特命を実行するため暫く砦を留守にすると、トルアに話してラプソはナーティを従えて砦を出立した。
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ライナは、体の痛みで目を覚ました。
力強く体を締め付ける毛むくじゃらな腕に抱えられて、乱暴に何処かに連れて行かれようとしていた。
体を動かすと毛むくじゃらの魔獣は、牙をむきだしてライナを威嚇してくる。
ライナは、すぐに状況を思い出した。
昨日の魔人と魔獣の襲来で魔獣を焼却する薪が不足していた為に、急いで薪を拾いに神の山脈の麓に、トリティと一緒に出かけて薪を拾うことに一生懸命で、周りの警戒を怠ってしまった。
突然、茂みから出てきた毛むくじゃらな人のような形の魔獣を見て、ライナは大人達から聞いていた猿の魔獣だと直ぐに分かった。
慌てて逃げようとするが、あっと言う間に捕まって、頭をガツンと何かにぶつけて気を失ってしまった。
ライナは周りの風景を注意深く観察した。
遠くの方に神の山脈が見えたが、いつも見ている見え方が違っていることに気が付いた。
そして、すぐに谷の外に出ていることに気が付く。
小さな時から砦の大人達から教えられていたことをライナは思い出す。
魔獣に捕まって谷の外にでた場合、兵士達は助けにいけない事を。
ライナはすぐに自分の運命に思い当たった。
自分はもう死ぬんだと思った。
死ぬのは恐い。
だけど、注意を怠って魔獣に捕まったのは自分のせいだ。
誰も谷の外へは助けに来てくれないだろう。
血の気が引き、絶望感が体を締め付ける痛み以上に、ライナの心を締め付けてくる。
魔獣に食われて死ぬことを考えると、震えが出てきたが、その考えを他のことで押し出そうとする。
もう少しすれば、お父さんやお母さんに会える。
ライナは堅く目をつぶり、お父さんとお母さんの笑顔を一生懸命に思い出していく。
痛いのが一瞬でありますように、お父さんとお母さんに会えますように、そう願って迫り来る死の恐怖を押しだそうと幼いライナは震える手を握りしめる。
しかし、幼いライナはどうしても考えてしまう。
”……だれか、……たすけて……”
その微かな想いに、あの御神体様の姿に助けを求めてしまう。
◇
俺達は、谷を出て魔獣の集まっている場所に駆けていく。
直人と友美の木人形は、モーラとユリスティアの体が取り込まれているのにも係わらず、駆ける速度や体の動きは、俺の木人形より早く滑らかになっている。
ユリスティアが以前ユンデ砦に駆けた時より、遙かに早い走りだ。
あの時は、直人は遅れてきたのに今は俺以上に早く駆けても、疲れた様子がない。
これが20%の差か?
しかし、20%向上するためだけに、なぜ人を取り込む必要があるのか?
その疑問にフタバが答えてくれる。
<マスター。ガーディアンの本来の使われ方は、人を守る事に重点をおかれています。ガーディアンが砦の人々を守る事もそうですが、ガーディアンの本質は取り込んだ人を守る事であり、その人の想いと同調して外部の人々を守る事です>
フタバの説明は難しく感じたが、俺が理解できた部分を確認してみる。
<……それは、ガーディアンに取り込まれた人を守る事で、ガーディアン自体の強さが増して、その人の意思の強さが人々を守る強さでもあるって事か?>
<はい、マスター>
ユリスティア達には御神体と呼ばれ、フタバにはガーディアンと呼ばれているこの木の人形は、ただ単に俺たちがスフィアの世界に留まるための物だけではなく、何か深い目的で作られた物の様だ。
この戦いが終わった後に、もう一度、フタバから詳しく聞き出した方が良さそうだ。
魔獣達の集まる場所の1キロほど手前の風下で、俺たちは一度作戦を再確認するために立ち止まった。
魔獣達は小高い丘に囲まれた広い平原に集まっていた。
<フタバ、再度確認するけど、友美とユリスティアのガーディアン性能は、剣と槍の戦闘特化で、直人とモーラは、多重並列の情報処理に特化していると言うことでいいんだな?>
<はい、マスター。谷からここまで駆けてくる際に、友美様と直人様のガーディアンが、その形態に特化していくことを確認しました>
『私たちって戦闘特化だって!』
友美の嬉しそうな声に、ユリスティアが心配そうに返事をしてくる。
『友美、私は御神体を動かすことは出来ませんよ。それでも戦闘に特化していると言えるのでしょうか?』
<ユリスティア様、それは大丈夫です。ユリスティア様がガーディアンを操作できなくても、友美様と同調していることでユリスティア様の戦闘経験は、友美様が使うことが出来るのです。それは直人様がモーラ様の魔法を使うことが出来る事や、モーラ様が直人様の情報処理を補うことも同じ事です>
『つまり、僕とモーラさんとでお互いの能力を共有して高め合えるって事かな?』
<はい、直人様>
<じゃあ、フタバ。作戦は、直人が”雪綿”を使って戦況を監視するのと同時に、直人と友美が一緒に魔獣達の注意を引き付ける。その間に、俺がこの空豆を、ライナがいる場所を中心に円形にばらまけばいいんだな?>
そう言って、俺は黒装束の懐に入っていた空豆にそっくりな見た目の種を取り出した。
<はい、マスター。その空豆は成熟すると鞘から弾けて、内部の魔法を放出して種自体が遙か遠くに飛んでいき生息領域を広げる植物ですーー空豆とは空を飛ぶ豆ですーーが、今は高濃度の魔力を充填してあります。フタバがトリガーを引けば、高濃度の魔力が解放されて”バーストフレア”という火炎地獄が発生します>
なんか空豆としか見えないのに、そんな恐ろしい魔力が封じ込められているのか?
これを間違って食べたらどうなってしまうんだろう?
<マスター。ガーディアンであれば、食べても即座に魔力を吸収してしまいますので、大惨事にはなりません。しかし、間違って人が食べようとしても、この豆は、魔力を封じ込めるために固い表皮に覆われているので、煮ても焼いても食べる事は出来ませんので、人が持っていても問題ありません>
それじゃ、この空豆はガーディアンの魔力補給として使えるかも知れないな。
そんな事を俺は考えてしまう。
<分かった。それじゃ、これをばらまいた後は、俺がライナを救出して保護すればいいんだな?>
<はい、マスター。……ただ、ライナ様とマスターの合性が良いと思われるので、ガーディアンに取り込むことも可能と思われます>
なにかフタバの言い方がハッキリしないが、以前俺にも合性がいい相手がいるって言ったのは、ライナの事かな?
<マスター、以前言った合性が良い方はライナ様の事ではありません>
そうなのか、それでも俺に合性が良い相手がよく知っているライナで少し安心した。
<だけど、俺とライナも合性がいいんだよね?>
<はい、……ただ……何でもありません>
<どうした?何か気になることでもあるのか?>
<マスター、申し訳ありません。フタバにもマスターとライナ様の合性が、良さそうと言う以外が分からないので、実際に取り込んでみないと、どの様に合性が良いのか、……どのくらい合性の度合いが深いのか分かりません>
<そうなのか?……だけど、今悩んでも始まらないから、ライナの安全を考えて、取り込む方向で行こう。ライナを取り込んだ後は、直人と友美と合流して、魔法防御を張って一気に空豆を破裂させて魔獣を焼き払うって手順でいいんだな?>
<はい、マスター。友美様、直人様。よろしくお願い致します>
『分かったわ』
『了解したよ』
友美と直人の返事を確認して、俺たちは作戦を開始した。
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俺たちはステルスで姿を消して魔獣達の中に入っていく。
魔獣の種類は、地球の獣としたらオオトカゲ、大蛇、ヤマアラシ、サーベルタイガーなどの姿に近いが、この世界の魔獣の方が動きの速さ、凶暴さが上のようだ。
あと、固そうな鱗に覆われたダチョウのような大鳥や、所々に小型の龍の様な魔獣も見える。
それらの魔獣達は雑然と何か指令を待っているように、この場所に集まっている。
異なる魔獣は、お互いを牽制し合っているが、喧嘩をするような事はない。
俺たちは、南から姿と気配を消して魔獣達の中に入ったが、ライナは魔獣達のほぼ中央に捕らわれているようだ。
俺は、南から東、北、西と円を描いて魔獣の中を走り、空豆を撒いていく。
『トシヤ、それじゃ、始めるよ!』
直人が俺の動きを監視して戦闘の火ぶたを切った。
すぐに南側と東側で友美と直人がステルスを解除して姿を現し、魔獣達と戦いを始める。
直ちに魔獣達が友美と直人に集まっていく。
魔獣達が何をここで待っていたのかは分からないが、ライナを人質として連れてきたのなら、俺たちが来たと分かったらすぐにでもライナが殺されてしまうかもしてない。
俺はライナがいる場所に急ぐ。
透明化している俺は、直人達に向かって行く魔獣を避けながらライナがいる場所に駆け込む。
平原の草に隠れるように猿の魔獣に、抱きかかえられているライナを見つける。
ライナの周りの殆どの魔獣は、友美達の方へ移動して行き手薄になっていく。
俺は音を立てずに、猿の魔獣に忍び寄っていく。
猿が動き出した!
友美達が動いたことで、役目を終えたと思った猿が、ライナを殺そうと鋭い牙でライナの後ろ首に噛みつこうとしている。
俺が駆けつけるには、まだ距離がある。
俺は腰の短刀を抜くと、猿の頭に投げつけた。
”スパァァァン!!”
ライナの細いうなじに、猿の牙が刺さる直前に、短刀が猿の顔をざっくりと切断して吹き飛ばす。
ライナが猿の腕から転げ落ちる前に、俺はライナを抱き止めることが出来た。
「ライナ! 大丈夫か?!」
俺の声に、ライナは何が起こったか分からない様子で、俺の方を見る。
そのライナの瞳には涙が溢れ、こぼれ落ちていく。
真っ青な唇と、恐怖に震える体が、俺はすぐにライナが極限状態に耐えていたことを理解すると、優しく抱き締める。
ライナは、御神体の俺と分かったのか、腕を伸ばししっかりと抱きついてくるが、声を出して泣くことはなかった。
今泣けば魔獣達が、また集まってくることを知っているからだ。
俺は、周りを瞬時に見るが、猿の魔獣が倒されたことに気が付いた魔獣はいなかった。
しかし、猿の緑の血の匂いに気が付く魔獣がいるかも知れない。
俺は、すぐにライナを木人形に取り込むことを考える。
「ライナ、落ち着いてくれ! まだ魔獣が周りにいる。すぐに俺たちに気が付くだろう。そうなる前に、ライナを御神体の中に保護したいんだ。……何を言っているか分からないかも知れないけど、俺の言うとおりにしてくれないか?」
他の魔獣に聞こえないように、抱きついているライナの耳元に、俺は出来るだけ優しく話しかける。
ライナは少し体を離して、涙を溜めた青白い顔で暫く俺を見た後、頷いてくれた。
<フタバ、急いでライナを取り込んでくれ!>
<了解しました。マスター。ライナ様をマスターの膝の上に正座させて、腕を胸元で組んで頂くようにライナ様に、話して下さい>
俺はフタバの指示に従い、俺は足を投げ出して地面に座り、ライナを膝の上に足を折り曲げて正座させ、胸元で腕を組んでもらった。
幸い魔獣達は、まだ俺たちに気が付いていないようだ。
<では、マスター。始めます>
そのフタバの掛け声で、俺の木人形がメキメキと割れて、ライナを吞み込んでいく。
膝を折り曲げた正座のままで俺の太股が、それを包み込み、俺の喉元より低いライナの上半身が、俺の胸元に収納されていく。
ライナは驚きもせずに、俺を信頼しているのか、目を瞑って御神体に取り込まれて行く。
すぐに木人形の割れ目が閉じて、ライナをお腹の中に閉じ込めた後、液体が充填されてくる。
その状態になっても、ライナは驚きもせずに、ずっと我慢してくれている。
ライナの肺に液体が満たされる時、ビクンと少し痙攣したが、すぐにライナは眠りに落ちたようだ。
ライナが眠りにつくと同時に、ライナの存在が俺に寄り添うように現れてくる。
それは不思議な感覚だった。
俺という存在に、ライナという異質な存在が同時に感知できる感覚。
木人形を自分の体のように動かしていた俺という存在に、重要な何かが加わったような、安心感と幸福感に満たされる。
しかし、ライナの幼い存在は、先ほどの魔獣に捕らわれていた恐怖の残りで、まだ震えていた。
俺は、出来るだけその恐怖を取り除こうと、ライナに声を掛ける。
<ライナ、もう大丈夫だよ>
その瞬間、ライナの存在が強い光を放ち弾け飛び、その強い光が俺を包み込んだ。
その光が収まると、俺は見覚えのある場所に立っていた。
辺りは暗く上を見上げると夜空が見えた。正面を向くと、そこには聖樹があった。
そう、タムルの本砦で聖樹が目の前に現れていた。
突然のことに俺は驚くが、その聖樹の根元に幼い女の子がうずくまって泣いている。
「お父さん、お母さん、……会いたいよう……」
その声は聞き覚えがあった。
俺はゆっくり女の子の元に歩いて行く。
「お父さん、……お母さん……」
その声はライナだった。
先ほど助けたライナより、幼く小さいライナ。
俺は訳も分からず、ライナを助け起こそうと手を伸ばすが、ライナに触れられず、幽霊のように手がライナの体を抜けてしまった。
俺は自分の手を見たが、俺にはしっかりと木人形の手に見える。
もう一度、試したが、ライナを起こすことは出来なかった。
うずくまり泣き続けるライナを、どうにかしたいと思った時、聖樹の一つの枝が淡く光っているのが見えた。
鼓動するように強弱する光りは、俺に合図を送っているようにも見えた。
俺は、余り深く考えずに腰に挿してあった短刀を抜くと、その枝に投げつけた。
本当ならユリスティア達が神聖と考えている聖樹に、刃物を投げつけることなど考えられないことだったが、今はそうしても良いように思ってしまった。
短刀は、光る枝をうまく切り落として、そのまま聖樹の他の枝に刺さってしまった。
しかし、俺はその短刀を取り戻すより、足下にうずくまるライナに気を取られていた。
切り落とした枝は、ライナのすぐ近くに転がり落ちた。
驚いたライナは、周りを見ていたが、俺が見えないようだ。
その事にも俺は、驚くこともなかった。
ライナに触れられないと思った時点で、ここは夢の世界だろうと何となく分かったからだ。
ライナは、落ちた枝を拾うと、驚いた後に懐かしい人に会えたような、嬉しそうな顔をした。
俺はそれを見てホッとした。
<……マス……マスタ………マスター……マスター!>
フタバが力強く呼ぶ声が聞こえたと思った瞬間に、俺は目を開く。
<マスター。戻って来てくれましたか>
<俺はどうしたんだ?>
<マスターの縁の糸がライナ様と絡み合って、意識が飛ばれさていました。思った以上に合性の深度が深かったようですが、今はもう大丈夫です。ライナ様も先ほど戻って来られました>
<ライナ、大丈夫か?>
すぐ側にライナの存在を感じていたが、俺はライナに声をかけた。
『はい、トシヤ様。不思議な感覚ですが、大丈夫です』
<それは良かった>
『トシヤ様、私を助けて頂きまして、ありがとうございます』
ライナが嬉しそうに頭を下げているイメージと共に、御礼の言葉を言ってくる。
そこで、ライナの話し方がスラスラと話せることに気が付いたが、友美が声を掛けてきて、その事をライナと話すタイミングが無くなってしまった。
『トシヤ、意識は大丈夫? 急に返事もなくなってトシヤの木人形が止まってしまった時には、驚いたわ』
友美の声に俺は立ち上がって、草原の様子を見渡す。
すぐ側に友美と直人の木人形が、俺を守る様に魔獣と戦っていた。
<俺は長い時間、意識を失っていたのか?>
『そんな事無いよ。60秒ほどだった。トシヤの木人形が動かなくなったことは僕がすぐに分かったら、友美とここに駆けつけたところだよ』
直人の的確な返答が返ってきた。
<友美、直人、ありがとう。助かった。もう大丈夫だ>
友美と直人がここに来たことにより、魔獣が周りに集まってくる。
友美と直人が倒していくが、その死骸を乗り越えて多数の魔獣が襲いかかってくる。
すぐに直人が、殆どの魔獣がここに集まったことを俺にに知らせてくる。
<じゃあ、二重の防御結界を張って一挙に殲滅してしまおう>
俺の掛け声に直人と友美が走ってくると同時に、俺たちの周りに1層目の防護結界をモーラに張ってもらった。
魔獣達はその結界に阻まれて、俺たちに襲いかかれない。
瞬く間に、頭上の結界まで魔獣に覆い尽くされてしまう。
『モーラさん、2層目の防御結界を張って下さい』
『分かったわ!』
直人の指示で2層目の防御結界を正確にモーラが張っていく。
『これで、魔獣達は逃げられない状態になったのね』
<はい、友美様。それではいきます。……”バーストフレア”!!!>
フタバのトリガーで灼熱の炎が1層と2層の結界内に吹き荒れる。
逃げ場がない魔獣達は瞬く間に焼かれていく。
数千の魔獣が灼熱の炎で焼かれ、解放された魔力が結界内に充満して来ると、結界を通して俺たちのガーディアンが、もの凄い勢いで魔力を吸収していく。
数分後、炎が治まると結界内に魔獣の姿はなく、ドーナッツ状に焼きただれたマグマの池に取り囲まれていた。
マグマはすぐに冷えて固い岩肌となった。
直人に状況を確認してもらうが、周りにいた雪綿も焼き尽くされて状況が分からないと言われた。
俺はモーラさんに結界を解いてもらった。
念のために俺は雪綿を散らす。
その時、視野の隅に陽炎の様に風景が揺らいだと思った時、何処からか現れた金属の輪が、”ガチッ”と首にはまった。
突然、俺の首にはまった金属の輪を、外そうと手を首まで持ち上げるが、急に力が抜け崩れ落ちた。
何とか目だけを動かして、友美と直人を見るが、2人も同じように首に金属の輪がはまって倒れている。
<マ、マスター!! これは対ガーディアン『ケーラの輪』です!!!!>
<どう言うことだ! 詳しく話してくれ!>
<はい、マスター! 古代にガーディアンが暴走した時に、封じ込めるために造られた対ガーディアン用の兵器です。この輪でガーディアンの99%が封印された状態になってしまいます。既に製造方法は失われて、ケーラの輪はもう無いと思われていましたが、まだ魔人族は持っていたようです! フタバが今から解除を試みますが、時間が掛かります>
<分かった。まずは解除を優先してくれ>
俺はそう指示するが、友美達と同じ様にどうすることも出来ずに、地面に倒れているしかなかった。
しかし、誰がこの輪を付けたんだ?
突然、隠密を解いて蒼い髪に20代後半の若い青年と20歳前後に見える赤毛の美しい女性が目の前に現れる。
手には、先ほどまで体を覆っていた透明マントを持っている。
<マスター!魔人です。それも魔力量が異常に高いことから高位の魔人の様です!>
そのフタバの話しに、ユリスティアとモーラが息を呑む音が聞こえた。
「白のガーディアンよ。私はラプソ、こちらはナーティ。先ほどのバーストフレアを使ったことに驚いたが、それで近づき捕らえることが出来た。訳あって貴方達は魔王様に合って頂く事になった」
そう一方的にラプソが話すと、ナーティが口笛を吹く。
暫くして、日差しが遮られ強い風が大地に吹き付けた。
”グヲォォン”
”グォォン”
”キュォォン”
複数の巨大な鳥の羽ばたきと共に俺たちの近くに降りてくる。
<マスター、魔獣「オオワシ」です。ガーディアンを魔王城へ運ぶつもりです!>
「では、ナーティ。すまないがこのガーディアンを王都まで運んでくれ」
「了解しました。ラプソ様」
<フタバ、魔王城まではどのくらい離れているんだ?>
<ここからだと、数百キロは離れています。しかし、オオワシを使えば丸1日飛び続けると着く距離です>
オオワシは、俺達をかぎ爪でしっかり掴むと力強く飛び立った。
ここまでお読み頂きまして誠にありがとうございます。




