閑話 ガトラのある1日
今回の最後の閑話となります。
1/4 追記しました。
二日酔いで目が覚めた。
食料は制限されているが、酒はある程度最前線で戦うオレたち兵士に優先して配給されてくる。
昨日は魔人族の奇襲もなく平和な一日だった。
それで調子にのって他の兵士と飲み比べをしてしまった。
「頭、痛てぇ」
オレはグワン、グワンする頭の痛みを我慢しながら巨漢の体をベッドから起き出す。
ベッドがギシッ、ミシと悲鳴を上げるが構わない。
既に窓の扉は開かれて太陽の光りが差し込んでくる。
少しゆっくり寝ちまったな。まあいい、何かあれば誰か呼びに来るだろう。
妻は既にベッドからいなくなっている。
多分、朝の洗濯に行ったんだろう。
妻は、器量好しで性格もいい。16歳でオレと結婚してくれた。
昨夜も酒臭いオレと一緒に寝てくれた。
結婚してすぐの16歳の終わりの頃にキトラを生んだから今は36歳になったか?
それにしちゃ妻の見た目は20代後半に見えるな。
オレが今は50だかからもう20年も一緒にいるのか。
まあ、それより頭が痛えからちょっと飲ませてもらうか。
部屋の棚に仕舞われていた小瓶を取り出してほんのちょっと飲む。
徐々に頭痛が消えてシャキッと意識がハッキリする。
やっぱ凄げえな!
小瓶に入った聖樹の雫を見ながら関心してしまう。
この雫はオレに支給された小瓶でほんの少しの量だ。
本来の使い方は、戦闘での些細な傷を治すことや、毒を中和するために砦の責任者に支給されている物だ。
こんなことに使っていると妻やフィシスに知られたら、酒を取り上げられてしまうので絶対に秘密だ。
意識はハッキリとしたが、それでも酒の匂いは消えない。
昨日の奴らに会ったら二日酔いの振りをしておこう。
そんな事を考えながら顔を洗って食堂に行くと、やはり妻達女性陣は川の水場へ洗濯に行ったそうだ。
遅い朝食を終えて見張り台に登って状況を聞くが、特に魔獣らしい姿は見えないと報告を受ける。
それを聞いて安心して中庭に降りてくる。
ユンデ砦を任されてもう何年経ったか?
もう忘れちまった。
妻に聞けば怒りながらでも教えてくれるだろうが、そのためだけに怒られるのは割に合わない。
中庭に降りると、一人息子のキトラが他の兵士と対戦訓練を行っていた。
キトラは、今年で20歳になるがまだ戦場に出すには危なっかしい。
少し甘やかせて育てすぎたのかも知れんな。
今から鍛えたとしても、そこそこの剣士になるだけだろう。
まあ、妻が何やら魔法を教えていたから魔法が開花すればいいのかも知れん。
オレが中庭に出ると20人ほどの兵士達が訓練しているが、オレを見つけた数人が挨拶をしてくる。
「ガトラさん、ちーす!」
「おはようです。ガトラさん」
「ガトラさん、おはようっす!」
「お疲れさんです!」
「おう、おまえら朝から頑張ってるな!」
「はい!そりゃ魔獣なんかに負けたくないっすからね!」
「そうか、そうか、じゃあ、オレが相手になってやろう」
「い、いや、隊長とおれ達じゃ訓練になんねいっすよ」
「じゃあ、4人同時でオレとやってみるか、それでも訓練にならんと言うなら、一から鍛え直す必要があるな!」
オレは朝の腹熟しに指導してやろうと思ったが、訓練していた奴らは皆、及び腰になってやがる。
まったくよう!今の奴らは弱っちい奴らばかりだ。
オレの脅しにもなかなか手を上げる奴がいない。
「誰からオレと訓練するんだ?」
「へい、ワシがお相手しやしょう」
そう最初に言ってきたのは、この砦で古参のトングだ。
40代後半のトングは、手には棍棒を持ってオレの方に来る。
背が低いが握力はオレと互角くらいにある。その握力で持った棍棒はなまくらな剣なら簡単にへし折ってしまう。
それに戦場での狡賢さはオレでさえ尊敬してしまうほどだ。
トングは気難しい所もあるが、オレの副長を任せている。
オレより遙かに頭がいいから、難しいことは全てトングに任せている。
「それじゃ、私もお願いしようかしら。今度こそガトラから一本とるわ」
そう次に言ってきたのは、このユンデ砦で唯一の女剣士のカリナだった。
まだ、20代前半だったはずだが、黒い髪に青い瞳で皮鎧に包まれた体つきは、妻と互角にいい感じだ。
オレの目つきに気が付いたのか、チャキっと剣の鍔を少し抜いて威嚇してくる。
おっとやべぇ。
剣の重さはないが、カンが鋭く、剣速はユリスティアの次に速い。
これから更に鍛錬すれば、ユリスティアの嬢ちゃんと互角まで行きそうだ。
「じゃ、私も」
そう言ってきたのは、スネイクというヒョロッとした体で何処か病的な雰囲気がする短剣使いだ。
こいつは何を考えているか分からん奴だが、気配を消して背後から短剣で急所を突いて来るのが得意な奴だ。
どうもこの砦に来る前に、どこぞの貴族の隠密をやっていたらしいが、嫌気がさしてこんな最前線に来たようだ。
こう見えてもこいつの部屋には、いろんな植物が植木鉢に植わって育てている。
ちなみに綺麗な花を咲かせている植物の名前を聞いたら、人を簡単に殺せる根を持った植物の名前だった。
一応、人には使うなとは厳しく言っておいたが、おっかねえ奴だ。
「あと一人くらいなら問題ないぞ! だれか他にいないか!」
オレの声を聞いた他の兵士達は戦意喪失したような顔つきになっている。
「隊長、そんなに威嚇しないで下さい。隊長の怪物じみた訓練じゃ、戦いが不慣れな奴なら下手すると手足がもげてしまいますよ。……仕方がない。私が参加しますよ」
そう言って休んでいた一人の兵士がオレの前に進み出てくる。
半年前にこの砦に来た20代後半の金髪の青年だが、名前が思い出せん。
いつも練習もせずに木陰で休んでいるところしか見たことがない。
「おめえは、なんて名前だったか?」
「隊長、半年も一緒にいるんだから部下の名前を覚えて下さいよ。……私の名前はタクトと言います。忘れないで下さいよ」
「そうだったか、まあいいさ。さあやろうか。誰かオレの斧を持ってこい」
~~~~~
オレは斧を受け取って訓練が始まる。
通常の戦闘訓練は、刃を潰した剣などを使っているが、オレとの訓練は実践で使っている本物だ。
当たれば切れる。
防げなければ腕や足が切り落とされて、下手をすれば死んでしまうが、まあ、手足が落ちたくらいなら聖樹の雫をかけて、1日くらい縛っておけばくっつくだろう。
死んだ場合は、まあ、諦めろ。戦場に出てもそんな奴は、すぐに死んじまう。
オレを囲むように4人の部下が動き出す。
オレはまずタクトに狙いを定めた。
こいつだけは、どんな剣技を持っているか見たことが無い。
弱ければいいが、強い奴だったら後々面倒だ。
横に移動していたタクトに、オレは駆け寄り斜めに斧を振り下ろす。
タクトは斧の軌道を見て、紙一重で斧の下をくぐり抜ける。
オレは振り下ろした斧の重さを利用して、回転して再度タクトを狙う。
斧のリーチを考えた距離に離れたタクトに、斧を素通りさせて下から足を蹴り上げる。
オレの足先がタクトの顎にヒットしたと思ったが、タクトは後ろにバク転した。
なかなか出来る奴みたいだ。
オレの背後がチリチリした。
振り替えらずに地面に伏せる。
その直後に頭上をカリナの剣が流れていく。
地に伏せたオレは、すぐさま横に回転して逃げる。
”ドゴッン”と転がる前の地面に棍棒が打ち込まれていた。
オレはすぐさま斧で顔面をガードする。
キンと短剣を弾く音がするが、手を頭上に伸ばして短剣を突き刺したスネイクの足を捕まえて、寝たままでぶん投げる。
投げ飛ばされたスネイクは、見学していた兵士達にぶち当たって伸びてしまった。
ちっとばかし力が強かったか、ちょっと不利な体勢だったから力加減が出来なかった。
オレは、すぐに立ち上がったが、その間に襲いかかってくる奴はいなかった。
さすがにカンが鋭い奴らだ。
普通なら起き上がる時が、チャンスとばかりに襲いかかってくるが、それはオレの方がチャンスになる。
しばらく動く奴はいなかったが、トングを見てオレが動いた。
トングの奴が、ニヤリと笑ったからだ。
あいつオレに勝つつもりだ。
オレは訓練だと言うことをスッパリと忘れて、トングと勝負するために駆け出した。
ヒュンと足下を狙ったカリナの剣を斧で弾き返しながら、オレはトングとの距離を縮めていた。
トングの頭上に斧を振り下ろすが、棍棒で受け止められた。
そのまま力で押しつぶそうかと考えたが、背後がチリチリする。
ちっ!っと舌打ちを撃って、すぐさま斧を持ち上げ、そのまま斧の背でオレの後ろをなぎ払う。
バキッと音がして背後から襲ってきたタクトの剣が折れた。
タクトは両手を挙げて降参の合図をした。
すぐにトングがいた場所に振り返るとトングがいなくなっていた。
カンで左に避けた。
トングが頭上から右にかけて襲ってきた。
背の低いトングがオレの背丈より高くジャンプして不意を突いて襲ってきた。
右に避けていたらあの棍棒で肩の骨を打ち砕かれていた。
奴め。あんなに高いジャンプをいつ覚えたんだ?
こんな隠し技があったからあの不敵な笑いで誘い込んだのか、後で締めて聞いてやる。
オレはそう思いながら、ジャンプの着地から態勢を立て直そうとしていたトングの背中を、斧を使わずに蹴り飛ばした。
さっきの不敵な笑いの仕返しが出来て、少しスッキリした。
トングは地面を転がりながらすぐに立ち上がった。
まだ戦う意思はあるようだ。
おっとやばい。
意識が逸れていた間に、カリナの剣が突きとなって背後から迫ってくる。
オレはギリギリの所で剣を脇と腕の間に通して、その剣を締め上げる。
剣が抜けなくなったカリナは、すぐに手を放して打撃に移ってくるが、オレにはそれほど効かない。
オレはくるっと回ってカリナの後ろに回り込むと、皮鎧を着ていても豊かに膨らむ胸をワッシと手の中に包み込んだ。
悲鳴を上げることもせずに、カリナの後頭部をオレの顔にぶつけてこようとする。
それと同時にカリナが足の踵で、オレの足をつぶしにきた。
オレは斧の柄でカリナの太股を軸にしてヒョイッとひっくり返してしまう。
斧を持っていない腕にカリナの胴体を抱えて、斧を持っている手で器用にカリナの太股をなでなで。
う~ん。この太股は妻と同じ位にいい感じだ。
そう思った瞬間、絶妙なタイミングで”カーン”とオレの頭に鉄鍋が飛んできた。
いてて。
オレは頭を押さえながら周りを見渡したが、妻の姿が見えない。
魔法で鍋を飛ばしてきたのはいつもの事だが、何処から飛ばしてきたんだ?
地獄耳ならぬ遠視の能力でもあるのか?
おれは、ハッとして周りを見るとトングは呆れたように見詰めて、もう戦闘を行う様子はない。
足下を見るとカリナが顔を真っ赤にして睨み付けている。
「すまん。すまん。……本日のオレの戦闘訓練はこれで終わりだ」
そう言うと、トングやタクト、それから目が覚めたスネイクが、やれやれという感じに自分の訓練に戻っていった。
オレはまだ顔が赤いカリナを立たせてやった。
「ガトラ、次こそは勝つわ。勝ってあなたの大切なXXXを切ってあげるわ!」
そう言うと剣を拾って砦に入っていく。
ちとカリナの扱いが酷かったか?
後で妻に厳しく怒られそうだ。訓練だったのだからまあ仕方がない。
そう少し反省をしていると、見張り台から笛が鳴った。
反射的にオレは見張り台に駆け登り始める。
魔獣が攻めて来た合図だ。
あの音は1分以内に砦に到着する知らせだ。
中庭で訓練をしていた兵士達が、慌てて戦闘服を装備し始める。
1分以内と言うことは、移動速度が速い『蒼の狼』か?
見張り台に着くとやはり蒼の狼が、こちらへ駆けてきている。
数が多いな。
15……いや20はいるな。
オレは見張り台にいた1人に伝令を頼む。
「モーラに伝令! 『蒼の狼』20匹の襲撃あり。こちらで対処する。以上だ」
「は!」
伝令を頼んだ男は、砦内にいるモーラを探しに走って行く。
中庭を見ると戦闘の準備は出来たようだ。
オレは中庭の兵士に状況を伝える。
「蒼の狼が20匹こちらに向かってきている。もうすぐ戦場に現れる! その前に組を作って戦場に陣地を取れ! 以上だ!!」
「「「おお!!」」」
兵士達は雄叫びを上げて戦いに有利な陣を立てるために、戦場に駆けて行った。
戦場に2人から4人の組を作った陣が12カ所出来た。
それと同時に魔獣が襲いかかってきた。
オレは見張り台から砦の外壁に飛び降りて、戦場の状況を見詰める。
兵士達は何とか蒼の狼に対処出来ているようだ。
これなら被害も出ずに撃退出来るだろう。
しばらく戦場では兵士達と魔獣の小競り合い続いていた。
徐々に魔獣を倒していくことにオレはほんの少し安堵した。
「『炎の熊』発見!!!数、5!!!到着予測3分、以上」
見張り台から悲鳴に近い報告が発せられた。
ちっ! この状況に『炎の熊』かよ。それも5頭も。
オレは傍らにいた兵士に伝令を依頼する。
「モーラに伝令! 『炎の熊』5! 至急援軍を頼む! 以上だ!」
「は!」
すぐに兵士は駆けて行く。
それと入れ違いにキトラが外壁に登ってくる。
見張り台から戦場に向けて『要注意、襲撃あり』の笛の音が響き渡る。
戦場の兵士達が更に気を引き締める気配が伝わってくる。
速くも1頭の炎の熊が現れてくると、次々と炎の熊が戦場に現れた。
あの巨体な熊の魔獣を見て、オレも戦場で戦ってみたくなった。
オレはキトラに鎖網を運ぶように命令する。
そのくらいならキトラでも問題なく対処出来るだろう。
戦場の様子を監視しながら、オレは戦いたくてウズウズしてると、モーラが伝令を持ってオレの所に来た。
確かモーラは18歳だが、とても色っぽい。オレが一人もんなら速攻に口説いていた。
そう考えた瞬間、ヒュンと首筋を風が通り過ぎて、外壁の壁にアイスピックが刺さった。
あっぶねぇな!!
オレは首を庇いながら中庭や砦を見るが、やっぱり妻の姿は見えない。
お前が一番いい女だ!心配するな!そう心の中で叫んで、すぐに戦場に意識を戻す。
モーラからユリスティアの嬢ちゃんが、こっちに来ると聞いて、もう戦場に出ようとするとモーラに引き留められてしまった。
イラッとして指揮をモーラに任せると言ったら、モーラが冷たい笑顔でサラッとおっかねえ事を言って来やがった。
モーラなら倉庫にある魔核を使って、本当にここいらを消し去ることも出来そうだ。
オレは冷静になって嬢ちゃんが来るまで、我慢することにした。
イライラしながら戦場を見ていると、嬢ちゃんがもうオレの所に来ていた。
その後ろにいる白い木のお化けは、今話題の御神体様とか言っていた奴か?
御神体に憑依している小僧達に注意をして、オレはすぐに戦場に飛び込んだ。
やっぱ、オレは戦っている方が性に合っている。
すぐさま炎の熊の背後から素早い斧の一刀で頭を切り落とす。
しかし、オレの近くにいた兵士が、他の炎の熊の腕を大きく切り裂いてしまった。
血を浴びた兵士は瞬く間に炎に包まれる。
他の兵士に対処を叫んで、炎を噴き出す魔獣をその場から遠ざけるが、なかなか止めが刺せない。
今日の魔獣は連携攻撃を行って来る。
オレが炎を噴き出す魔獣を攻撃すると、背後から他の炎の熊が威嚇したり鋭い爪で襲ってくる。
魔獣でも仲間で育った奴らは、このように仲間の魔獣と連携できるらしい。
これは厄介な魔獣が襲ってきたな。
炎がオレの体にも降りかかり、皮鎧が焼けていく。
顔に掛かりそうな炎を腕で庇っているが、周りに飛び散った炎で他の魔獣達も獰猛になって来てやがる。
視野が悪い。
その時、オレは、少し離れた場所にいたまだ若い4人1組の兵士が、炎でいつも以上に獰猛となった3匹の蒼の狼に取り囲まれていることに気が付いた。
若い4人は、恐怖に顔を引きつりながらも円陣を組んで、何とか攻撃を防いでいるが、素早い魔獣の動きに翻弄されているのは、オレの目からハッキリ分かった。
4人の誰かが攻防に失敗するか、あともう1匹増えたら、あの組は崩壊してしまう。
そうならない様に、他の組との連携を常に行っているはずだが、他の組の奴らは、傷を負った炎の熊を対処しているために、その事に気が付いていない。
オレが助けに行かんとならんか。
そう思ったオレはすぐに行動に移した。
巨体な体でありながら足音を消して、4人組を襲っている魔獣に駆けて行く。
駆けつけて最初の1匹の胴体を斧でなぎ払おうとした時、背後がチリとうずいた。
感を信じてなぎ払おうとした魔獣の向こう側に飛び込んで逃げるが、”ブオン!!”と風が追いかけて来る。
1回転して立ち上がって見ると、いつの間にかオレがさっきいた場所の後ろに、炎の熊が太い腕を振り切っていた。
オレがここに駆け寄ってきた時に、背後に回り込んで来たようだ。
この炎の熊は俊敏だ。
ちっ! やりずれぇ熊だ。
オレは4人組に目で合図して、他の組へ合流するように指示を出す。
目が合った1人が他の仲間に伝えて、移動していくが、蒼の狼がそれを阻止するように動いてくる。
オレは、動きの速いこの炎の熊を放置して、移動を阻止している蒼の狼に割り込んで、4人の若い兵士を逃がすが、3匹の蒼の狼と、1匹の炎の熊に取り囲まれる。
さすがに他の兵士もこの状況には気が付き加勢しようとするが、炎で獰猛となった他の魔獣が邪魔をしてきて、なかなか動けないようだ。
まあ、この位ならオレはどうって事ともない。
ほんの少しオレと魔獣たちのにらみ合いがあった時、”わっ!”と他の場所の兵士達が悲鳴を上げた。
それと同時に、傷を負った炎の熊が兵士達の包囲網を抜けて血を振りまきながらオレの方に突進してきた。
太い鋭い爪が迫って来るが、斧の側面で爪を弾き返す。
弾き返すことは出来たが、その熊の血がオレに降りかって来る。
それを飛び退って炎を避けたが、避けた場所が悪かった。
オレは2頭の炎の熊に挟まれてしまった。
前の1頭は倒せるが、その間に背後の熊から一撃を食らってしまう。
そう覚悟した時、光りと共に目の前の熊の頭が消えた。
振り返ると背後の熊の頭も無くなっていた。
オレは唖然として戦場を見渡すと、全ての魔獣が倒れていた。
何が起こったんだ?
何かが頭上を越えて飛び去る黒い鳥に突き刺さって爆発した。
すぐに外壁を見ると御神体が身を乗り出していた。
オレにはすぐに分かった。
あの御神体の小僧達が何かやったらしい。
ようやっと状況を確認した兵士が歓声を上げているが、オレは外壁に向かって駆けて行く。
外壁を登って、佇む御神体に近寄るとオレは感動して抱き締めてしまった。
ミシミシと音が聞こえたが、まあ大丈夫そうだからいいか。
オレはまだ暴れ足りなかったが、まあ、早い段階で退治できた事は良いことだ。
その後、御神体が魔核を食べるとか驚かされた後、砦や戦場を案内して魔獣除けを施してくれたのは助かる。
これでゆっくり酒が飲める。
なぜかモーラの様子がおかしいが、御神体の小僧達が砦を出発した後は、少し落ち着いたようだ。
まあ、あれだけ簡単に魔獣達を倒せた御神体に、惹きつけられたんだろう。
そう言うこともあろうさ。
さて、魔獣の後片付けは戦闘に出なかった兵士達に任せて、まずは勝利の宴会だ!
今までの経験から次の襲撃は早くても6時間後くらいだろうが、魔獣除けを信用すれば12時間以上は大丈夫だろう。
まあ、たまにはゆっくり酒を飲みたしな。
と言っても昨日も飲んでいたけど、ガハハハ。まあ、気にしても始まらん。
なる様になるさ。
今日も生き延びることが出来た祝いだ。飲むぞ!
日が沈む前から飲み始めたが、気が付いた時は作業を終えた兵士達も混ざった宴会は、もう終わって夜も遅い時間となっていた。
まあ、トングの奇襲の秘密もトングを酒責めして吐かせて分かった事だし、いい宴会だった。
ちなみにトングがとった戦法は、腕と棍棒を縄で繋いでその棍棒を台代わりに踏み台にして飛び上がった後、棍棒を引き戻して襲ってくるって事だった。
オレの体重じゃ出来ねえ戦法だ。
オレは適度の酔いでふらつきながらも、オレの部屋に帰った。
部屋は窓の扉が閉まって、真っ暗だったが、明かりも付けずに皮鎧を脱いでベッドに入り込む。
ベッドがギシ、メキと壊れそうな音を出すが、まだ大丈夫だ。
オレが布団に入ると妻の手が伸びてくる。
暗くて顔が見えないがヒンヤリとした肌が、酒にほてったオレの肌から熱を奪っていく。
冷たい素肌が気持ちいい。
頬にキスを感じてオレはギュッと抱き締めた。
顔を見られないが妻のいい香りを間違える事はない。
酒を飲んでほろ酔い気分のオレに安心感を与えてくれる。
素肌の妻の大きな胸を手で包んでオレはゆっくりと眠りについた。
ここまでお読み頂誠に有り難うございます。
1/4 ガトラの戦闘を追記しました。




