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1D4Hの木製勇者  作者: 神楽野 鈴
タムルの砦
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25話 4D:スフィア4



 【プロム魔都】


 プロムはゆっくりと瞼を開いた。


 数千の光の情報の渦から数日ぶりに自分の体に戻ってきた。


 自分を包んでいた保護液の繭を破って外に出る。


 窓のない暗い広い部屋の数カ所に明かりが微かに灯っている。

 いつものことだがその光りは数日ぶりの瞳には眩しいくらいだ。

 綺麗な絨毯が保護液で濡れてしまうが、プロムは気にした様子もなく広い部屋を歩き出す。


 プロム1世の目覚めで部屋の一部と同化していた召使いが王の目覚めに気が付き、一人が静かに部屋を出て行く。

 残り2人の召使いが、プロム1世の瑞々しくがっしりとした逞しい体を無言で拭いていく。


 「ヘドニックはいるか?」

 「はい。ただ今お呼び致しました」


 プロム1世の問いに召使いが俯いて答える。

 2人の召使いは、体を拭き終わると手早くプロム1世に服を着せていく。

 それが終わると召使いが部屋の扉が開く。

 扉の前には、白髪で白い髭の渋い初老が先頭に立ちその後ろに40代の男性が3名控えていた。


 「プロム様、今回は早い目覚めでございますね。何かお有りでしたでしょうか?」

 

 先頭の初老の男が、そう言いながら部屋に入ってくる。


 「ヘドニック、白のガーディアンが動き出した」


 その言葉を聞いて男達に動揺が広がる。


 「それは、誠でしょうか?」


 ヘドニックだけは冷静に確認をしてくる。


 「我が嘘をついたと?」

 「いいえ、滅相も御座いません。しかし、既に人間には白を操縦する者はいないと聞き及んでおりました。それが急に動き出したと?」

 「そうだ。それも憑依型だ」

 「それは何処からの情報でしょうか?」

 「我のクロが1羽、それによって落とされた」

 

 「では、プロム様、早々の人間どもの領地を侵攻しましょうぞ」


 先ほどまでヘドニックの後ろに控えていた男達の一人が、興奮してプロムに進言してくる。


 「それが出来ればどれだけ簡単なことか、ゲドア。それは貴様も知っていようぞ」


 ゲドアの進言はヘドニックの厳しい叱責に絶たれた。


 「ヘドニック、これを与える。破壊が出来ればそれで良いが、出来なければそれで連れて来い。使い方は分かるな?」


 そう言ってプロムは何処から出したか、いつの間にか手に持った3つの金属の輪を召使いに渡す。

 ヘドニックはそれを受け取る。


 「白のガーディアンはタスク卿が管轄している領地に?」

 「そうだ、人間のセイリル領地にいる」

 「それでは人間の領地に侵攻する事になりますが?」

 「白を破壊するための一時的な侵攻で、その影響で人が死傷する事は仕方がないと過大解釈に捉えろ」

 「了解しました。……承認されました。直ちに指示を出します」


 そうしてヘドニック以下3名の男達はプロムの部屋を退出していった。

 ここは人間のセイリル領地から数百キロ離れた魔人族の王都『プロム魔都』の中央に位置する魔王城の寝室。

 プロムは目を瞑り魔力を使って特例の短信命令を瞬時に5000の魔獣に発信した。


 「これで少しは現在の白のガーディアンの力が分かるか」





 ◇◆◇◆◇◆◇◆




 4日目、ログインから1時間20分。


 フタバから突然お腹が減ったと言われたことに驚いてしまった。

 フタバは木人形に寄生しているから養分は木人形から摂っているんじゃないのか?

 それでもさっきの活動でお腹が減ったのかな?


 <マスター、違います///>

 <マスター、正確に言うとガーディアン・・・・・・がお腹が減ったため力が出ません。マスターが先ほどから感じている脱力感は、ガーディアンの生体エネルギーが不足している為です>


 フタバが慌てて言い訳をしてくるのが可愛い。

 そう言われてみると、確かに自分のお腹が減った感じもある。

 そうか、この木人形も何か食べなければ活動が出来ないって事か。

 何を食べるんだろうか?

 普通の木のように水と光合成と肥料が必要になるのか?

 それとも食虫植物のように虫や動物を食べる方か?

 それはやだな。


 <マスター。本来のガーディアンは、そんなに非効率な摂取はしません。ガーディアンの修復が終われば、ある程度の自動回復が機能が出来るようになります。しかし、現状は外部からのエネルギーを摂らなければなりません>

 <それはどんな物を食べればいいんだ?>

 <それはこの砦にある『魔核』からエネルギーを摂って下さい>

 <え!?魔核を食べるのか?>


 本砦に報告を指示していたユリスティアに俺が魔核を食べたいと話すと、周りの皆は驚いた様だがすぐにガトラだけは「魔核を御神体が浄化してくれると言うことでいいじゃないか?なあ、ユリスティア」と簡単に許可を出してくれた。ユリスティアもトシヤ達の活躍を考えてそれで良い言ってくれる。


 「ところで、魔核って不浄な物なのか?」


 「そう言えば、トシヤ達には魔核について話していませんでしたね」


 「魔核は魔人族が生まれた時に既に体内に持っているそうです。そのため人間を滅ぼす魔人族の魔核は不浄の力と忌み嫌われていますが、魔核は魔力の結晶で魔法のエネルギーを蓄えています。魔人族はその魔核で魔法を使えますが、魔核を持っていない私たち人間では、極僅かごくわずかな人間が魔核を利用して魔法を使えます。この砦だと今は私とこのモーラとガトラの奥さんが魔法を使えます」


 その話しをもっと聞きたかったが、段々と俺の力が入らなくなってくる。


 「ユリスティア、聞いといてすまないけど、どうもこの御神体の力が無くなり始めているみたいだ。すぐに魔核を持ってきて貰えるかな?」


 それを聞いたユリスティアは慌ててガトラと息子のキトラにユンデ砦で今まで貯めた魔核510個が詰まった木箱を持ってきて貰った。

 持ってきてもらった魔核は水晶のように透明でその中に淡い赤い炎が揺らめいている。


 どの様に魔核を食べるのか、フタバに聞くと口を付けて炎を吸い込む様に吸えばいいらしい。

 試しに一個の魔核に口を付けて吸ってみると、魔核の中の赤い炎はピリッとしたが味はなくスッと吸い込まれしまうと、空となった魔核は砕けて無くなってしまった。


 俺と直人で各200個、友美も110個の魔核を10分程で吸い出したが、それほど力が湧く感じはしない。

 しかし、先ほどの脱力感は無くなり、普通に立って歩けるようになった。


 <フタバ、今後急に今のようにエネルギー切れが起こらないように、何か状態を表示する方法はないのか?いま、俺の視野に表示されているのは、ゲームで使っていた状態なんだけど、それはレベル2とかHP 、MPが100のままで変化がないんだ>


 <マスター。それは多分『夢見』で『改変の実』を食べたのではないでしょうか?>

 <夢見で食べた実?それじゃあの桃のような果実かな?>

 <はい、マスターのイメージからそれが『改変の実』です。そのため古い状態表示は意味をなさなくなっています>

 <フタバなら正しい表示に出来るか?>

 <はい、マスター。ガーディアンの修復中ですが、今から修正を行えば明日の昼には状態表示が正しく出来ます>

 <じゃあ、修正をしてくれ。あと友美達にもその説明と修正を頼むよ>

 <はい、マスター。了解しました>


 その後、ユンデ砦の中庭に出ると兵士達に囲まれてしまい、皆から御礼や労いの言葉をかけられて何とか抜け出せたのが30分ほどした後だった。


 ようやっと兵士達の笑顔の包囲網から抜け出した俺たちに、ユリスティアはユンデ砦を案内してくれた。

 砦から戦場の広場に出ると、まだ魔獣の解体作業が行われていたが、いつもより魔獣の死体が綺麗なので解体が楽なのだそうだ。

 

 <マスター、先ほど支援に使った5枚の板に魔獣除けを施しておけば、炎の熊くらいの下級魔獣ならここには近づけなくなりますが、魔獣除けを行ったらどうでしょうか?>

 <ほう、それは頼もしいな。ちょっとユリスティアに確認して見るよ>


 そう言ってユリスティアに確認を取ると、ユリスティアはそれはもう抱きつきそうな喜びようだった。


 「ああ、ありがとう。トシヤ、それが本当なら連日の奇襲がかなり減ることになるでしょう。嬉しいです」

 「ユリスティア、そんなにトシヤに気を遣わなくっていいわよ。トシヤが偉いって言うよりフタバちゃんが有能なんだから」

 「だけど、兵士達の負傷者も減って、それに休める時間が出来るのは嬉しいことです。ありがとうトシヤ、フタバ様」


 そのユリスティアの言葉を聞きながらフタバは、木や岩に刺さっている5枚の白い板に魔獣除けを施していく。

 施すと言っても、フタバの指示で俺の手を白い板に重ねるだけで、そこから先はフタバが何か書き込んでいるような感じだが、何をしているのか良く分からない。


 <マスター。これは魔獣が嫌う固有周波数を、この周辺一帯に強力に放射するように、この板に設定を行いました。この状態は1ヶ月ほど続きますが、再度魔力を補充するだけで更に1ヶ月と延ばしてくことが出来ます>


 <その魔力の補充はユリスティアたちでも出来るのか?>


 <はい、魔力を感知できる人なら可能です>


 <じゃあ、ユリスティアに話しておくよ>


 その事をユリスティアに話すとモーラとガトラの奥さんにも定期的に魔力を補充する事になった。


 そこでモーラの話しが出てたので言っておくが、モーラはなぜか直人を気に入った様子で、常に直人の傍らに付き従い甲斐甲斐しく砦の説明や面倒を見ているのだ。


 ユリスティアになぜああなったのか聞いてみたが、ユリスティアも分からないそうだ。

 ユリスティアの話しだと、モーラが妖艶で男に詳しいと思われるみたいだが、至極純情で浮いた話しもないと言うことだった。

 俺は直人に何かしたのかと聞いても、「特に何も話していないし、助けた事もないんだけど」と困惑していた。

 友美もその様子を見て少し困惑しているようだが、特に今のところ何も言ってこない。

 しかし、砦の若い男達に直人の御神体が睨まれる。


 まあ、原因は分からないから暫く放って置くしかないか。

 そんなちょっとした出来事があったが、ユンデ砦の魔獣除けも施して、それと友美が投げた棒も無傷で残っていたので無事回収した。



 そうして本砦に戻ることになった。


 そこで一悶着があった。

 直人にベッタリだったモーラも一緒に本砦に行くと言い出して来たのだ。

 ユリスティアとガトラがまだ任務があると言っても聞こうとしない。

 仕方なしにガトラ達の砦の兵士がモーラを取り押さえている内に、俺たちは逃げるように砦を出た。


 しかし砦から離れた後は、ゆっくり歩いて帰ることになり周りの景色を見て帰ることが出来たが、途中の下に流れる川に大きな魚を見つけた。

 その魚が食べられないのかとユリスティアに確認すると毒があると言う。

 しかし、フタバが1匹捕まえて調べて見たいと言い出して、俺と直人が数メートル下の川に降りて魚とりを行ったが、網も釣り竿もないのでなかなか捕まえることが出来ない。

 その様子に友美が業を煮やして持っていた棒を投擲して、見事に魚を仕留めてくれた。


 その魚は紅鮭の様な大きな魚だった。フタバが調べてくれたところ、体内に毒を循環させて外敵から身を守る様に進化した魚との事だった。


 しかし、フタバが浄化できる水を作れば、その中に浸けておけば2日ほどで毒が中和されて食用にする事ができると分かった。

 崖を登ってユリスティアにその事を話すと、早々にこの周辺にいる魚を調べて捕まえることになった。


 そんな事を帰り道で行っているといつの間にか、ログインして3時間半程が経ってしまった。


 砦の中ででもない場所で、俺たちがログアウトしてしまったらこの木人形はどうなるんだろうか?


 <マスター、修復が完了すればフタバがガーディアンを守る事が可能となりますが、まだ修復が完了していないのでマスターの意識がなくなった場所にガーディアンは取り残された無防備の状態になってしまいます>


 急いで本砦に帰った方が良さそうだ。

 その事をユリスティアと友美達に話して俺たちは本砦に急いで帰った。






ここまでお読み頂誠に有り難うございます。

11/30 本砦に帰る場面で追加を行いました。

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