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1D4Hの木製勇者  作者: 神楽野 鈴
タムルの砦
15/38

14話 3D:フィール1

9/17 1話から5話の修正と8話分割に伴いこの話も修正しました。前話(13話)が14話になっています。申し訳ありません。

9/26 誤記を修正しました。

 3日目、ログインから10分。


 俺たちは、東部にログインしていた。


 昨日のサンダータートルのクリアした事や、異常に強くなった俺たちが、他のプレーヤーに目撃されているかも知れないので、用心して南部以外の場所で一度ログインすることになった。

 そこで俺が、初日にログインした東部が、地中海の風景とエメラルドグリーンの海が見えたことを言うと、友美は是非行ってみたいと言い出したので、今は東部にログインしている。


 雲一つない青い空、照りつける真夏の太陽、輝く白い家々。

 町の外には、エメラルドグリーンの海。


 「わ~! すごいきれい! 風がサラサラで気持ちいい!」

 ログイン直後から友美は、はしゃいでいる。


 俺たちのチートがどうなったかって?

 ログインして直ぐに確認しました。で、復活していました。


 友美が、他のプレーヤーに見えないように拳大の石を拾って、ギュッと握ったらボフっと小さい音を立てて砕け散りました。

 だけどレベル2で、HP、MPも変化なし。ステータス表示は完全にバグっているみたいだ。


 と言うことで、俺たちは、今はゆっくり歩きながら、東部の町を歩いている。


 ゲートを開ける場所を探しているのだが、ここにいるプレーヤー達は、避暑地の観光なのか初日より人が増えている様だ。

 なかなかプレーヤーがいない場所が見つからない。

 やはり、町の外のフィールドに出ないとダメかな。

 そんな俺の悩みを無視して友美ははしゃいでいる。


 「海に行こう! 海!、海!。 う~み~行きた~い!」

 「ミュウ、早くユリスティアに会いに行かなくていいの?」

 直人が友美を諭してるが、なかなか海を諦められない様だ。


 「う~、そうなんだけど、この景色見ちゃったら、ちょっとだけ海で遊びたい!」


 まあ、確かにこんなに綺麗な海を見ると泳ぎたくなるよな。だけど、ここは我慢して浜辺に行くだけにしよう。


 「じゃあ、ちょっとだけ浜辺に行ってみようか? ジンもいいか?」

 「仕方ないね、僕も少し遊びたかったら、いいよ」

 「やった! それじゃ行きましょう!」


 そう言って友美は走り出そうとする。

 俺はそれを予想していたので、友美のジャケットの襟首をギュッと引っ張る。


 「きゅっ」

 友美は首が絞まって可愛く鳴く。

 「けほ、けほ、トーヤなにするのよ!」


 首が絞まって怒り出す友美に俺は、友美だけに聞こえるようにそっと囁く。

 「ここじゃ俺たちチートになってるんだよ。今、本気で走り出そうとしただろう。注意しろよ」

 「あ、そうだった。ごめんなさい」

 友美も囁くように謝ってくる。


 「じゃあゆっくり歩いて行こうか」

 「は~い」

 俺たちが、人混みを避けながらゆっくり歩き始める。


 その時、後ろから声を掛けられた。


 「あの~、トーヤさんとミュウさんとジンさんですね?」

 俺たちが振り返ると、そこには美しいエルフの容姿をした女性が立っていた。


 何ですかと俺が女性に返事をしようと口を開きかけたが、グイッと肩を引っ張られた。

 友美が、俺と直人を引っ張っていた。


 友美は俺と直人で円陣を組む様に顔を近づけると、真剣な表情で「本気で逃げるわよ」と、俺たちの耳元に囁いてくる。


 どうしたのかと聞き返す前に、友美はくるりと後ろを向くとシュンとダッシュしてしまう。

 一瞬、霞んだかと思うと、周りのプレーヤーを器用に避けて、一陣の風となって遙か彼方を走って行く。

 あれなら俺たちのプレーヤー名が表示される前に、視界から消えてしまうので、例え人が通ったと分かっても、それが俺たちだと特定できないだろうな。

 そんな事を俺が考えている内に、直人も駆けて行く。

 俺も訳も分からず、それに続いて駆け出す。


 「え? ええ!?」

 残されたエルフの神谷は、走り去ってしまった少年達に、驚きの声を出すしかなかった。



 ◇



 走り出してから気がついたが、他のプレーヤーがいる場所で止まると、突風と共に突然俺たちが現れた様に見えて、騒ぎになってしまうことに気がついた。


 しかし、凄い速さで流れる景色を見ていると、俺たち音速を超えて駆けていると思うんだが、衝撃波が発生していない。

 後ろを見ると、確かに風を巻き上げているが、少し突風が吹くくらいの様だ。どうなってるんだ?

 フィールゲームだと物理法則が違うのか?

 それとも異常な俺たちが、システムルールの外に出てしまっているのか?


 そんな事を考えながら友美に追いついた俺と直人は、町の外の浜辺を止まる事無く一陣の風の様に駆けている。


 友美に、逃げ出した理由を聞く前にどこか人目のつかない場所を探さないと。

 町の中よりは人が少なくなっているが、まだ浜辺で日光浴をしてくる人達がいる。


 あそこがいいか。

 俺は、走りながら見つけた隠れる場所をフレンド通信で教える。


 『友美、直人、あそこの浜辺の向う側に見える岩場の陰まで行こう。あそこなら人がいないみたいだ』

 『OK』『分かった』

 まだ、町から走って10秒ほどだが、もう三日月型の砂浜の端に着く。


 岩場を飛び越えて、反対側の砂地におれたちは着地する。人はいないようだ。


 俺たちは、息も切らしていない。


 「ミュウ、どうして逃げ出したんだよ?」

 俺は直ぐさま友美に聞いてみた。

 「ふ~、あの人はヤバイって感じたのよ。あの容姿は、ルナ医師に共通するやばさがあるわ。……(私の強敵になりそうなのよね)」

 友美は、汗も出ていないのに額の汗を拭く真似をしている。


 最後の方がよく聞き取れなかったが、俺にはあのエルフがヤバそうには見えなかった。


 「そうなのか? 雰囲気は似ていると思ったけど、ヤバそうな感じじゃ無かったぞ? ジンはどうだった?」

 「僕も危険な感じはしなかったよ」


 「そんな事ないわ! 今の私には強敵なのよ!」

 なんか友美が切羽詰まったように訴えてくるが、よくわからん。


 「あの~」


 岩陰に身を潜めていた俺たちに、背後から声が掛けられた事に、俺は驚いて振り返る。

 そこには、さっき町で振り切った美人のエルフが立っていた。

 その背後に空間が切られたような隙間が見える。


 「わ~!?」


 友美が、幽霊にでも会ったように驚いて、海に向かって駆け出してしまう。

 俺は、友美が海に沈むかと心配したが、なんと殆ど飛沫を上げずに海面を走っている。

 ーー おお、忍法の水走りしているぞ!


 俺はチラッとエルフを見るが、友美の水走りに驚いて声が出ないようだ。

 ちょっとエルフの女性が気になったが、海面を走り去っていく友美の方がもっと心配だ。

慌てて俺と直人も追いかける。何かエルフの女性が叫んでいるが、この際無視だ。


 凪で海が穏やかなためか、緩やかな起伏があるが、あっという間に友美に追いつく。


 『何処行くんだよ!』

 『あのエルフから逃げるの!』

 『どうして逃げるんだよ』

 『危険だからに決まってるじゃない! それよりあの小島に向かうわよ』


 フレンド通信で友美と話しをするが、逃げる原因を友美は教えてくれない。

 友美が指し示した先に小島が見えている。

 仕方が無い、まずはあの小島に行こう。


 ほんの5秒ほどで俺たちは小島に着く。

 俺たちは海の上を走った割には、濡れたのは膝下が少し濡れただけだった。

 この小島から町の方を見るが、陸が見えない。


 後で分かったことだが、この小島は地下の迷宮を通って来るか、大型船で海の魔物を退治しなければ来ることが出来ない、海賊の宝島だった。


 そんな事を知らない俺たちは、小島に着くと直ぐに海に面した洞窟を見つけた。


 「あの洞窟に隠れましょう。そして直ぐにユリスティアに会いに行くわよ!」


 急かすように俺たちを洞窟に引っ張って行く。

 もう、なぜ逃げるか聞く間もない。


 洞窟に入って、友美はすぐに入ったことが失敗だったと気がついたようだ。

 なぜかと言うと、洞窟の奥の広い空間に、溢れるばかりの黄金と金塊の上に、木の椅子に座った海賊船の船長の衣装を纏った骸骨が座っているのが目に入った。その骸骨が動き出したからだ。


 「われの財宝を盗む盗人どもよ! この洞窟から生きて出られるとは思うな!!」


 骸骨の何処から出てくるのかと思われるほど、大声が洞窟に響き渡る。


 「ああ、なんでこんな所でイベントが発生するのよ!」

 すぐにでもゲートを開いて夢見の世界に行こうと考えていた友美は、ちょっと苛立っているようだ。


 骸骨のステータスを見ると、レベル30、HP1000、MP5000となっていた。

 名前は「キャプテン・キッド」らしい。


 「私とジンで、これを退治するから、トーヤはゲートを開いてくれる?」

 俺たちはまだレベル2だけど、まあ、今の異常な状態なら何とか友美達だけで勝てるかな。


 「分かった。早めに片づけて来なよ」

 そう言って俺は、洞窟の少し離れた所でゲートを作り始める。


 「ジン、行きましょ」

 「了解」

 俺はゲートを作りながら、友美達の戦いを観戦する。

 と言っても友美が危なくなれば助けるつもりだが。


 戦闘開始早々に骸骨は、無詠唱で全方位に火炎魔法を打ち出してくる。

 それを直人は、大剣で切り裂き、友美は、初級の防御魔法で難なく防ぐ。

 友美が瞬時に近づいて槍を骸骨の腹に突き刺すが、腹を素通りして後ろの椅子を粉砕するだけだった。

 次の瞬間、骸骨の右腕が、赤いオーラに覆われて友美に迫る。

 友美は後ろに飛び跳ねるが、赤いオーラのかぎ爪がジャケットを擦る。

 ジャケットの一部がボロボロと崩れ落ちる。

 右腕に腐食の魔法がかかっているようだ。


 直人も骸骨に瞬時に駆け寄り、大剣を骸骨の右足に叩き込む。


 「ガキン!!!!」

 金属のぶつかり合う音共に、右足が切断され、右足はすぐに光の粒となって消える。

 それでも骸骨は、回復魔法でMPが200減って瞬時に右足を復活させる。

 友美がまた瞬時に近づき、槍で骸骨の頭を突く。


 「パァーーン!!!」

 電球が割れる様な音を出しながら骸骨の頭が砕け散る。一気にHPが500も減る。

 これも瞬時に自動回復魔法でMP1000減って、破壊された頭が回復していく。

 骸骨のステータスは、HP500、MP3800とまだまだ健在だ。


 俺たちがチートだから、このキャプテン骸骨と何とか戦えているが、すぐに回復してくるこのモンスターには普通のプレーヤーだと、なかなか攻略できなさそうだ。


 俺はゲートの準備は終わったので、ちょっと助けに参加してみる。

 メニューから70センチほどの巨大な手裏剣を2つ取り出す。

 「ミュウ、ジン、そこからちょっと離れてくれ」


 20メートル先で戦っていた友美達にそう言って、俺は力一杯に投げる。

 ブンっと羽音の様な音を立てて、飛んでいった手裏剣は骸骨の頭を粉砕して、後ろの壁に深々と刺さる。

 HPが250に減る。

 もう一つの手裏剣も力一杯に投げると、今度は腹を砕いて同じように後ろの壁に突き刺さる。

 HPが10に減る。

 あとちょっとだったが、クリアできなかった。

 「ミュウ、ジン、止めをよろしく」


 そんな短い会話の間にも、骸骨は自動回復魔法でPM2000減って、HP500で体が回復する。


 「トーヤ、ありがとう。楽になったわ」

 そう友美は言いながら、槍を骸骨の胸に突き刺して、HP400にする。

 続いて直人が、腰を落として大剣を上段から一気に振り抜く。

 骸骨が真っ二つになるが、それもでHP50 を切る所までだ。なかなかしぶとい。

 また復活しそうだったので、友美が慌てて止めを刺す。

 HPが0となった。


 ステージクリアのファンファーレが鳴って、ドロップアイテムが出てくる。

 金貨1万枚、高級回復薬50本、水神のフォルン、空間拡張魔法の巻物が出てきた。

 クリア証明申請はNoでボタンを押す。


 戦闘が開始されて、3分ほどでレベル30を難なく倒してしまった。


 しかし、余韻に浸る間もなく友美に急かされて、全てのアイテムを俺のレジストリに保存させて、逃げ込むようにゲートに潜り込んでいく。

 そのゲートもすぐに閉じてしまう。


 ◇


 ゲートが閉じると同時に、空間に切れ目が入って、エルフの神谷が出てくる。


 「あれ? ここのフィールドモンスターと戦っていると思ったんだけど……これは、な、なによ!」


 神谷は、周りを見てもう攻略されてしまったことに驚く。ここのモンスターはレベル30なのにもう少年達はいない。急いでこのフィールドのシステムログを見ると、戦いは2分40秒で終わっている。有り得ないクリア時間だ。


 そう驚きながらも神谷は、手早くシステム管理権限を実行してこの洞窟の情報を収集していく。そこで興味深い事があった。巨大な手裏剣2つが洞窟の壁に減り込んでいるを見つけたのだ。この大きさの手裏剣を投げて固い洞窟の壁に減り込ませるには、レベル30以上の経験値が必要となるが、開始3日目で取得される最大レベル9までのはずだ。明らかにあの少年達は異常な状態になっている。


 システムログを見ると少年達は、まだログアウトはしていないようだが、このフィールゲームで少年達の存在位置を見つけることが出来なかった。このフィールゲーム以外で仮想世界があるのは、今のところ開発環境のメインシステムしかない。


 ーー 一応、開発環境のメインシステムのアクセスログも調べておく必要がありそうね。


 しかし、一般アカウントであの海の上を高速で逃げた方法は異常だった。システム管理権限を持っている今の神谷でも海の上を歩くことが出来るが、あの少年達は管理者権限を持っていないのに、一瞬で見えなくなるほどの俊足を使っていた。


 「これは、もしかしたらただのバグじゃないかも知れないわね」


 神谷は呟きながら周辺の情報をサーバに転送していく。その作業を行いながら今度会った時に、逃げられないように何か手段を考えておいた方が良さそうと神谷は考える。







ここまでお読み頂誠に有り難うございます。

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