13話 2D:スフィア4
9/17 1話から5話の修正と8話分割に伴いこの話も修正しました。
2日目、ログインから3時間50分。
シラブルとエディが部屋を出て行った後、ユリスティアはスレスとピナに話しかけていた。
「スレスとピナは、今日は非番よね? まだここにいる?」
「ピナ、どうしますか?」
「ピナは、もう少し殻の欠片を食べたいなぁ」
ピナの顔を見てスレスは頷くと、ユリスティアに返事をする。
「ユリスティア様、ピナと一緒に子供達のとこに戻ります」
「そお? じゃあ、転ばないように気をつけてね」
「はい、分かりました。それではフィシス様、御神体様、失礼します」
そうスレスが、フィシスと俺たちに会釈をしてくる。
「あ、失礼します」
慌ててピナも会釈をしてくる。
「御神体の殻の欠けらは、大事に食べるんだよ」
「じゃあね、スレスちゃん、ピナちゃんまた後でお話しましょう」
「「はい」」
フィシスの気遣いと、友美の言葉にスレスとピナはニッコリ笑って部屋を出て行く。
『スレスちゃんとピナちゃん、可愛いわ。ギュッと抱き締めたい』
俺たちだけのフレンド通信で、友美がそんな事を言ってる。
可愛い物好きだが、今の動けない状況で居た堪れないようだ。
『友美、落ち着け。直ぐに動ける様になるさ』
俺はいつ動けるか分からないが、動いたとしてもこんな木の人形でどう抱き締めるのか疑問だったが、友美を落ち着かせるためにそう言っておいた。
◇
パタパタパタ。
少女達が部屋を出て行って直ぐに、誰かが走ってくる足音が聞こえてくる。
「はぁ、はぁ、はぁ」
走ってきて疲れたのか、長い金色の髪を持った白衣を着た20歳過ぎの女性が、俺たちのいる部屋の入り口に手を付いて下を向いて息を整えている。白衣の下の大きな胸が、大きく上下している。
部屋に入って来た時にチラッと見た顔つきは、日本の都会にいたら10人中8、9人は振り返る程に綺麗な人である。
「おや、ルナ、来たかい」
「ルナ医師、大丈夫ですか?」
ユリスティアは、慌てて入ってきた女性に駆け寄っていく。
「砦の中を走ったくらいで。情けないね。砦の医者ならもうちょっと体を鍛えな!」
フィシスの厳しい言葉に、まだ息を整えている白衣を着たルナと呼ばれた女性は、笑顔で言い返してくる。
「そんな……こと…言って…も、は~、この砦は、上り下りの階段が多すぎですよ」
「仕方が無いさ。この砦が山の谷間に作られているからね。それより、もう少ししたら御神体が3体動き出すよ」
それを聞いたルナ医師は、バッと顔を上げて俺を見詰めてくる。
あ、いや、俺が憑依している御神体を、見ているのだろうけれど。
先程の少女達もそうだったが、どうしてここの人達は、こんなに眼光が鋭いんだ?
戦いの場にいるとそうなってしまうのか?
いや、友美も時々凄いときもあるな。
そうなると、女の子と言うのは、恐ろしい生き物だろうか?
ルナ医師が俺(御神体)を見詰めてくるので、そんな事を考えているとルナ医師は手が届く範囲に来てしまう。
「ほう、これが御神体の触り心地か。ちょっと思ったより固いかな? 木と言うより金属に近いのかな? そのくせ、ゆっくり押すと柔らかいわね。不思議だわ」
そう言いながらルナ医師は、俺を触り始める。
腕から顔、胴体とペタペタ触りながら、独り言をつぶやいている。
フィシスは、面白そうに見ているだけ。
ユリスティアは、ハラハラと心配している様子だが、ルナ医師に注意できないでいるようだ。
中2になれば、他人に自分の体を触らせることは、病気以外にまずはないだろう。
俺も、人に触られることには慣れていない。
俺は、真っ赤になって我慢していたが、流石に腹の下あたりを撫ぜようとしてきたので、ついに声を出しながら、手で股間を押さえる動作をした。
「あ、あの、もうそれ以上触るのは止めて頂けないでしょうか?」
そう言う俺の声と共に、白木の腕がバキバキと音を出しながらゆっくりと股間を隠す動きをする。
「おや、ようやく動き出せるようになってきたね」
フィシスの言葉に、ルナ医師が更に目を輝かせる。
「おお、それは凄い、どうやって動いているんですかね?」
そう言って、俺の言葉が聞こえていなかったのか、更に前のめりに顔を近づけてくる。
肩の関節を見ているようだが、ルナ先生、あなたの大きな胸が俺の腕に触れてますよ。
柔らかい二つの大きな膨らみの弾力が、俺に伝わってくる。
友美が何か言ってるが、良く聞こえない。
俺はガチガチに緊張して固まってしまったが、心の中で少しこのままでいたいなあと思ってしまう。
「あ、あの、ルナ医師? 今日のところは、もうそれくらいにして、トシヤを解放してあげて頂けないでしょうか?」
意外にも俺を助けてくれたのは、ユリスティアだった。
「あら、そうですね。ついはしゃぎすぎました。数百年触れられなかった御神体が、目の間にあって我慢できませんでした。御神体に憑依されている方、すみませんでしたね」
そう言うとルナ医師は、俺に頭を下げてくる。
「いいえ、ちょっと残ね……いや、俺でお役に立てればいつでも協力します」
俺がそう話した直後に友美から1対1の短いフレンド通信が入る。
『トシヤのエッチ』
直ぐに切断されてしまった。
その後、ルナ医師にも直人が俺たちを紹介していく途中で、強制ログアウトの通知が俺たちに表示されてきた。
「僕達、そろそろ元の世界に戻ることになります」
「おやそうかい、まだ来たばかりなのにね」
「トシヤ達が、元の世界に戻ったらこの御神体をもう少し調べてもいいかな?」
「はい、いいですよ。と、言うか元々はこの砦の物ですから」
ルナ医師の相談に、友美が答えている。
「それじゃ、ユリスティア、また明日の同じ時間くらいに、夢見の世界からこの御神体に憑依してきます」
「あ、それでしたら、明日は残りの3体の方に憑依して頂けないでしょうか?」
「また、動けない状態になるのかな」
俺の言葉に疲労感が出てしまったことに、ユリスティアは身を縮めるように謝ってくる。
「申し訳ありません。私が御神体には入れればいいのですが、お祖母様の話だと私たちでは、御神体に憑依出来ないように成っているようなのです。殻を砕いて少しでも子供達に行き渡ればと思ったので……」
俺たちも痩せた青白い少女達が、ピンクの肌に成っていくのを見ている。
「俺たちもまだ、この砦や夢見の世界について聞きたいことは、いろいろありますから動けなくても、大丈夫です。それにライナ達の笑顔が見られるのなら嬉しいですからね」
「トシヤ達には、すまないね」
「よろしくお願いします」
フィシスとルナ医師も頭を下げてくる。
「それでは、僕達はこのまま元の世界に戻ります。明日ここに来たら念話で、シラブルさんに話しかけてみます」
『トシヤ、友美、まだ4分程あるけど、僕達でログアウトしよう』
『そうね』
『いいよ。ギリギリまで話したいことは今はないしね』
◇◇◇ ーーーー ◇◇◇
俺は、自分のベッドの上で目を覚ます。
ヘッドギアを取り外して、エアコンの効いた部屋から外を眺める。
日本の町並みが見える。外では蝉の鳴き声が五月蠅いほどだ。
時計を見ると午後4時過ぎだ。
フィールゲームを開始して、まだ2日なのにいろいろなことがあった。
フィールゲームで無謀にサンダータートルに挑んで、一度は負けたがチートになって簡単に勝ってしまった。
フィールゲームから『夢見の世界』と言われる仮想世界にいけるようになったり。
その世界でユリスティアに会って、砦を救って欲しいとお願いされて、スフィアという世界に行って白木の人形に憑依したりもした。
なぜ、フィールゲームでチートに成ってしまったのか。
なぜ、黒豹は俺たちを追い出そうとしたのか。
ユリスティア達は、本当に人間なんだろうか、良くできたNPCなんだろうか。
そんないろいろな解決されていない疑問があるが、俺はこの2日間の体験は面白かったと思っている。
途中で嫌なトラウマを思い出したりしたが、トータル的に見ると楽しい。
今後の問題も少し見えてきた。
御神体と言う白木の人形を人並みに動けるようにすること。
それに砦の子供達の健康を回復させること。
あとは、砦の作りや敵対している魔人族という種族についても、早めに聞き出したいな。あ、フィールゲームでチートになった原因もユリスティアに聞いてみないと、忘れるところだった。
そんな事を俺が考えていると、スマフォが鳴った。
相手は友美だ。
「トシヤ、今日もトシヤの家で反省かをするわよ。いいわね」
ちょっと怒っているようだが、来るらしい。
「どうした? ちょっと怒っていないか?」
「怒ってなんかいないわよ」
そう言いながら怒っている声なんだけどなあ。
「そうか、じゃあ待ってるよ」
「…分かったわよ。 ……(トシヤのエッチ)」
最後の方は声が小さくて聞こえなかったが、また友美達が来るようだ。
俺は、階段を降りてお母さんに友美達が来ることを、話しておく。
お母さんは、喜んで何か夕飯を作り始めたようだ。
友美達が来て、昨日のように騒ぎ始めるが今日はちょっと友美が怒っているようだ。
けれど、通信兵のスレスとピナ、あと痩せていても可愛かったライナやトリティ、リリアナの話しが出てくると俄然話しに乗ってきて夕方まで盛り上がっていった。
友美達の帰り際に、お母さんからの夕飯のお誘いに、友美は少し緊張して直人は嬉しそうに「「はい、食べていきます」」と返事をしていた。
今日は、焼き肉にしたみたいだ。俺もそうだが、友美と直人も瞬く間にカルビ焼きを平らげていく。お母さんもその食べっぷりに嬉しそうだ。
美味しい物を満足いくまで食べれる幸せ。
俺は、ふと砦の少女達にもこんな思いをさせたいと思ってしまう。友美と目が合う。
「リリアナ達にも、いろいろ美味しい食べ物食べさせたいね」
友美の言葉に直人も頷いている。
「じゃあ、食の改善からしてみるか?」
俺の提案に、友美と直人も頷いてくれた。
「あら、私のご飯まずかったの?」
俺の発言に一人落ち込むお母さんに、俺達は慌ててそうじゃないと言うが、なかなか納得してくれなかった。
そんな、落ちがあったが、友美達は食事に満足して帰って行った。
ここまでお読み頂誠に有り難うございます。




