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1D4Hの木製勇者  作者: 神楽野 鈴
タムルの砦
13/38

12話 2D:スフィア3

9/17 1話から5話の修正と8話分割に伴いこの話も修正しました。


 ユリスティアが戻ってくると、直ぐにフィシスへ報告している。


 「ルナ医師に御神体が動いたと話したら、殻を片付けて直ぐに来るそうです。それと殻をありがとうと言ってました」

 「そうかい、ルナも御神体が動くのを楽しみにしていたからね」


 そんな、フィシスとユリスティアの話しを俺が聞いていると、フレンド通信に今まで聞いたことのない他の声が聞こえてきた。


 『数百年動かなかった御神体が動き出したって』

 『フローラ、あの御神体って動くの?張りぼてだと思ってた』

 『そんな事言っちゃあだめよエディ。罰が当たるわよ』


 『モーラ、ユリスティアがお婿さんを御神体に憑依させているらしいよ』

 『シラブル、それは一大事ね! 砦の男共が御神体を壊しに行くわね。ふふふ楽しみ』


 『これ御神体の殻よね? 美味しいねピナ』

 『うん! スレス、これ美味しい! 今日は非番で良かったね』


 複数の女の子の声が聞こえてくる。

 『友美、直人、フレンド通信で複数の女の子の声が聞こえないか?』

 『聞こえる。フレンド登録されていないのに! また、お化けなの?幽霊なの?』

 『よく聞くと6人ほどいるようだね』

 『友美、落ち着け。幽霊じゃない(と思う)』


 「どうした? 何かあったのかい?」

 フィシスはユリスティアとの話しが終わった後、直人に話しかけていたが返事がなくてどうしたのかと聞いてくる。


 直人が、俺たちだけで話しが出来る方法があることと、その話しに複数の少女の声が聞こえてきたことを話す。


 「それは念話だね。お前さん達も念話が出来るのかい。それは助かるね」

 「お祖母様、それより複数の少女の声って言うのは、もしかしてシラブル達ですかね?」

 「そうだろうね。だけど双子達以外で念話を、同時に別々の双子の念話を聞くことが出来るとは、直人達は凄い掘り出し物かも知れないよ」


 フィシスとユリスティアの会話から、フレンド通信がここでは念話と言われていることが分かった。

 その念話を見たこともない少女達が使っていて、俺たちが聞こえてしまったようだ。


 『よかった。幽霊じゃないんだよね』

 すこし涙声の友美の声が聞こえてくる。


 そこで入り口に扉に隠れて、こちらを覗く少女達にフィシスが気がついた。


 「シラブル、エディ、スレス、ピナ、入っておいで!」

 フィシスの厳しい声に慌てて、4人の少女が部屋の中に入ってくる。



 「わ~! 本当だ御神体の殻が取れてるよ」

 エディと呼ばれた少女が話し出すと、それと同じく念話が始まる。

 『フローラ、御神体って真っ白だよ』

 『エディ、私も見てみたかった』

 『大丈夫だよ。次の非番にはフローラも見られるよ』


 「こう見ると御神体って大きいわね」

 シラブルと呼ばれた少女も話し出すと、同じく念話が始まる。

 『モーラ、御神体ってガトラさんより大きいわよ』

 『ガトラのおっちゃんより大きいのか。その中にユリスティアのお婿さんがいるのか?』


 入ってきた少女達の中で、最も年下に見えるスレスとピナと呼ばれた女の子は、口を閉じてコロコロと何かを舐めているようだ。


 『スレス、この甘いお菓子って、この御神体の殻なのね?』

 『そうね。リリアナがそう言ってたわ。ピナ』

 『じゃあさ、この御神体を舐めたらもっと美味しいのかな?』

 『そうね、そうかも。ちょっと固そうだけど、ピナ、舐めてみる?』


 そんな4人+2人の念話が俺たちにダダ漏れしてくる。

 段々と五月蠅くて鬱陶しいくなってくる。

 その内に俺は我慢が出来ずに、少女達に対してフレンド通信で呼びかけて見た。


 『あのー、ちょっと静かにしてくれませんか?』


 俺の割り込みに、ピタッと少女達の会話が止まる。

 4人全員がバッと凄い勢いで俺の方を見る。

 見るって言っても俺が憑依している御神体を見たのだが。

 なぜ俺が憑依している御神体が分かるんだ?

 

 なぜと思う間もなく、また凄い勢いで少女たちが念話を開始した。


 『ねえ、モーラ聞いた?』

 『ええ、男の子の声よ。シラブルどう思う?』

 『それより私たち二人以外の念話を初めて聞いたわ!』

 『あ、そうね。それも驚くけど、それよりユリスティアのお婿さんなの?』

 『ねえねえ、そこの御神体の少年。ユリスティアのお婿さんなの?』

 『少年だよね? どこから来たの? ユリスティアとは手は繋いだの? もうキスはしたの?』


 『……』

 『エディ? どうしたの』

 『……お、男の子に念話聞かれちゃった。どうしようフローラ、……あの御神体に憑依している方、私たちの話を聞きましたか?……責任取って私と……』


 『あ! 御神体が喋った。スレス』

 『そうね。だけどピナ、私たち二人に念話で話しかけてくるって、凄いことじゃないのかな?』

 『そう? 話したら舐めさせて貰えるかな?……御神体様、私に舐めさせて下さい。お願いします』

 

 俺の声に反応した3組の少女達が、また念話で騒がしく話し始めてくる。

 念話の所々に危ない発言が多数あるんだけど、それに、徐々に俺の方にじり寄ってくるのは止めて欲しい。


 『だ、だめ!!』


 突然、友美が焦ったように叫んでくる。

 その大きな念話に、少女達はまたビックと猫が驚いたときのように驚く。

 ギロリと今度は友美が憑依している御神体を、少女達が睨む。

 ーー あっちの右側の白い木の人形に友美が憑依しているのか。

 俺は少女達の動きで友美の人形が分かった。


 『あ? あれ? 私なんで叫んだんだろう? あれ?』

 友美は、自分が大声を出したことに驚いている。


 『女の子の声だ!』

 『こっちの御神体には、女の子が憑依してる』

 『なになに、ユリスティアと三角関係なの?』

 『少年はどっちが本命なんだ?』

 『女の子の方がもっと甘いかな? ねえ舐めていいよね』

 『ピナ、やっぱ舐めるのは止めた方がいいかも』

 

 そんな念話を喋りながら、俺から友美にターゲットを変えた少女達は、段々と友美ににじり寄っていく。

 『え、なに? どうしたの? なんで貴方達こっちに来るのよ』

 友美が、興味津々にじり寄ってくる少女達に、たじろぐ様な声を出している。


 フィシスやユリスティアには、少女達が言葉を喋っていないので、何が起こっているか分かっていないようだが、それでも少女達の行動から今何を行おうとしているか、推測できたようだ。


 「おまえたち! 客人に何をしようとしているんだい?」

 フィシスの怒りを含んだ声に、少女達はフィシスがいることを思い出して、冷や汗をかきながらビシッと姿勢を正す。


 「フィシス様、私たちは、念話が使える御神体がどのような方であるか、調査を行おうとしていました」

 一番年上に見えるシラブルがビシッと姿勢を伸ばし、緊張して言い訳をしてくる。

 他の少女達も緊張して、冷や汗を流している。


 「そうかい、私の客人を勝手に調査しようってことだね? まだ調査は必要かい?」


 そう聞かれた少女達は、直立不動の姿勢で、滝のように冷や汗を流していく。



 「はぁ~、どこで御神体の話しを聞いてきたんだか、おそらくルナあたりが話したんだろうね」


 フィシスは、暫く4人の少女達を睨んでいたが、大きなため息をついて少し怒りを静めている。

 俺はそのため息から、フィシスがこの少女達に苦労している事が、なんとなく分かってしまう。


 「まったく、シラブル、エディ、おまえ達は今は歩哨だったんじゃないのかい?」

 「はい、現在は休憩で交代しておりました。直ぐに戻らせて頂きます」

 シラブルは、そう言うとエディを連れて出て行こうとする。


 「まあ待て。お客人におまえ達を紹介してから行きな。ただし、今は、念話での話しは止めてもらおうかの」

 「り、了解しました!」

 呼び止められたシラブルは、緊張した面持ちですぐに返事をする。


 「私は通信兵のリーダーを行っているシラブルと申します。年齢は18となります。ここにはいないモーラとは、双子で私が姉であります。以後宜しくお願い致します」

 シラブルは、俺たちの御神体に向かって紹介してくる。

 通信兵と言うからそうなのか、兵士が上官に話すような話し方だ。


 「私も通信兵で、双子の姉のエディよ。妹のフローラは、今はメテ砦にいるわ。……あと13歳です。よろしく」

 エディは、砕けた話し方で了解してくる。まだ先程の念話を聞かれたことを恥ずかしがっているみたいだ。


 「私はスレスと言います。こっちが妹のピナです。10歳になりました。今日は非番ですが、私たちも通信兵です。御神体様これからよろしくお願いします」

 「よろしくお願いします」ペコリ

 スレスの紹介に続いて、ちゃっかりピナも簡単な挨拶をしてくる。

 スレスとピナも双子で、顔つきも体型もよく似ている。

 それにしてもスレスは10歳にしては、しっかりした話し方をする少女のようだ。


 通信兵と紹介された4人の少女達は、先程の殻を拾っていた幼いリリアナ達よりまだ健康的だ。

 通信兵と言っていたからまだ食事制限が厳しくないのかも知れない。


 今度は直人が俺たちを紹介する。

 直人が主に紹介をしていくが、俺と友美も自分の事を簡単に紹介する。

 その時のシラブルの眼差しが、飢えた野獣の様で少し怖い。

 シラブルの念話の内容を覚えていた俺は、御神体の情報に飢えているのか、それとも恋愛に飢えているか疑問に思ったが、あの眼差しは恋愛に興味津々って感じのようだ。


 そんな簡単な自己紹介が終わった後、フィシスが、砦の皆に御神体が動き出した事を伝えるように少女達に指示を出している。


 「いいかい。魔人族と間違って攻撃しないように、砦の皆にちゃんと伝えるんだよ!」

 「「はい、了解しました」」

 シラブルとエディが、姿勢を正しながら返事をしてくる。


 「あと、いらない尾ひれは付けるんじゃないよ!」

 フィシスが釘を刺した一言に、シラブルとエディは、ビクッと小さく震えたが、表情は緊張したまま返事をする。


 「「り、了解しました」」

 シラブルとエディの息がぴったりと合った返事だった。


 俺はそんな少女達をまだ少し霞んでいる目で見ながら、何となくフィシスの注意がなかったら、尾ひれを付けるつもりだったんだなと分かってしまう。


 ユリスティアを見ると苦笑いをしている。

 やっぱりユリスティアも、この少女達には手を焼いているようだ。


 「じゃあ、シラブルとエディは、休憩が終わる頃だろう。さっさと持ち場に戻りな」

 「「はい、直ちに任務に戻ります!」」

 フィシスの命令に、シラブル達は直ぐに部屋を出て行く。


 直ぐにエディとフローラ、シラブルとモーラの2組の念話が聞こえてくる。

 『あはは、またフィシス様に怒られちゃった』

 『エディ、もう少しフィシス様達に迷惑を掛けないようにしないとダメよ』


 『ふ~、モーラ、やっぱフィシス様は怖いわ』

 『それよりシラブル、この念話は、御神体の少年達にも聞かれてるんだよね?』

 少し不安そうに念話をするモーラに、直人が話しかける。


 『初めまして、モーラさん、直人と言います。これから……』

 直人が自己紹介がてらに、シラブルとモーラの念話に話しかけて分かったが、シラブルとモーラに話しかけるとその間、エディとフローラの二人には聞こえていないようだ。


 エディとフローラが直人の念話に反応しないことで分かった。

 俺たちからの念話は、念話する対象を自動的に絞り込んで話すことも出来るってことか。


 友美もエディとモーラに自己紹介をし始めるが、それはシラブル達には聞こえないようだ。

 エディは、友美の念話に驚いて恥ずかしそうだったが、直ぐに友美と打ち解けたようで、先程のように元気に友美と話している。

 だけど、俺と直人がエディ達の念話に加わると、恥ずかしそうにして声が小さくなるのは変わらなかった。

 まあ、そのうちに打ち解ければいいか。


 ちなみに、フレンド通信欄に載っていないシラブル達の念話をどう切るか分からなかったので、俺たちのフレンド通信を終話したところ、シラブル達の念話も聞こえなくなった。


 今のうちは、こんな切断の方法しか分からなかったが、四六時中、シラブル達3組の念話を聞いているは耐えられないので仕方が無い。あと、どの位離れると聞こえなくなるかも調べておく必要もありそうだ。そのうち、シラブル達との念話のON/OFFを見つけよう。





ここまでお読み頂誠に有り難うございます。

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