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「ちゃーは?」


黒茶色の仔犬に少女は名前を付けていた。茶色だから”ちゃー”、安易だが少女はこの名前の響きが気に入っていた。少女の親は顔を見合わせて気まずそうに明後日を向く。その頃村では犬の病が流行っていた。


「サクラ、ちゃーはね、病気でいなくなっちゃったんだよ」


病気が発覚した時には手遅れだったという親の言葉は少女の頭の中には入らない。


「ちゃーは、ちゃーはどこなの、ちゃーは?」


しつこく聞く少女に、大人たちは放っておけばそのうち忘れるだろうと考えた。


ずっと一緒にいた存在がある日急にいなくなる、そのことの意味をまだ幼い少女は理解できずに仔犬の姿を探し回った。


「……なんでいないの?」


少女は、家の中の箪笥だとか、仔犬がよく遊んでいた勝手口の段差だとか散々探したが仔犬の姿はなかった。もしかしたら外にいるかもしれない、と少女は勝手口からそのまま外に出る。勝手口から裏庭の方に回るとあることに気づいた。普段は玄関付近で番犬の役割をしているはずの母犬が、裏庭の奥の地面の一か所を執拗に嗅ぎまわり、前足で掘っているのを。その一か所だけが新しい土で周りの土と色が違う。

倉庫の壁に立てかけてある小さな鍬を手に取り、少女は母犬と共にその土を掘り返した。


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