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「おい、井戸水汲んでこい」


考え事をしていたから人が来たことに気づけず、突然牛小屋にかけられた声にサクラは息を飲んだ。声からしてアサの息子達の誰かだろう。


「でも、わたし、今日は、外に出ちゃいけないって……」


サクラがもごもごと答えるが、反論を許さない声が遮る。


「そんなのバレなきゃいいだろ、早く井戸から水汲んでこいよ」


「はい……畏まりました」


サクラは緩慢な動作で立ち上がる。牛小屋の中からは逆光になっていてよく見えないが、その身丈からするとアサの長男か次男か。サクラよりも二回り以上大きい身体を持つ彼等はこうして自分が面倒だと思う仕事をサクラに押し付けることが日常的にあった。それらは全て巧妙にアサやフツの見えないところで行われていた。きっと二人は気づいているに違いない。それでも、何も言われない現実に、サクラの立場の弱さが垣間見える。


牛小屋の前で立ったまま此方こちらを見る視線を気にしながら、サクラはまた朝と同じように井戸へ向かった。この国には井戸が至るところにある。昔、両親がこの国は王の龍に守られているから水脈が豊富だと言っていた。

深く底の見えない水面に映る自分の姿と見つめ合いながら井戸の水を汲み終ったその時、背後に大きな影が出来た。今朝も同じようなことがあったとサクラがおそるおそる振り向くと、やはりそこにはアサの姿があった。牛小屋の方を見やるともう誰もいなかった。


「表に出るなと言ったはずだ」


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