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三十四
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ある村が、一夜にして壊滅状態となった。
その村の者は誰も何が起こったのか語らず、
またその村に留まる者は誰一人いなかった。
誰もが何かしらの原因を言えない怪我を負っていた。
そんな中で只1人だけ、怪我一つない者がいた。
その齢5の少女はその夜のことは何も覚えていなかった。
生き残った人々はその少女を恐ろしいものを見るように怖がっていた。
少女は、自分の純粋な恐怖が皆を傷つけたことを知り、それが故に記憶を閉ざしてしまったのだ。
月日は流れ、少女が7つになった頃、
再び村に少女は現れ自分の真名と共に自分の罪を思い出した。
少女は、自分の力の恐ろしさを再び知り、
しかし、もう二度と忘れることはなかった。