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三十三
「【樹下】、この山賊たちを、わたしたちの目の前から……消して」
息をゆっくり吐くようにもう一度サクラは静かに言い放った。もうすっかり記憶は戻っていた。過去の自分がやったこと、それは今と同じく、谷底の亡骸を操ることだ。
雲が退いていき、異様な光景が露わになる。サクラはゆっくりと樹の枝伝いに谷道へと辿り着く。蹴られた痛みで失神し、倒れているボウの怪我の様子を確認した。
(……良かった、大事にはなってないみたい)
倒れているボウの傍に座り、どこか上の空でサクラは考えていた。記憶通りであるならば、今と同じく自分は亡骸を操り村人を襲ったのであろう。何が、どうして、こんなことになったのか彼女には理解出来なかったが、自分がやったのだという事実はもはや明確であった。
(村も、人がいなくなって当たり前だよ……)
山賊たちが次々と異形のものにやられていくのを、サクラは重くなる瞼の隙間から見ていた。