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三十
「崖の方から声がしたぞ!!!」
山賊の1人がその叫びに応えるように大声を出し、松明を持つ集団が集まってくる。
「みてみろよ、子供2人だぜ、しかも片方は女だ。 綺麗なべべ着せりゃあ高く売れるぜ」
崖の上から遠慮なく伸ばされた松明はサクラたちの顔を眩しいくらいに照らした。
「おい、てめえら、助けて欲しかったら大人しく俺たちに捕まるこったな、なあに、悪いようにはしねえってよ」
山賊たちの赤らんで下劣な笑みを浮かべた顔からは、とても言葉通りの扱いを受けられるとは思えなかった。
「……」
黙ったままのサクラに対し、ボウはその言葉を信じたのか樹にしがみつきながらも笑う。
「助けてください、おれ、こいつのせいでこんな目にあって、本当、困ってたんです、」
山賊の1人がボウへ手を伸ばし引き上げる。谷道へと戻ったボウは笑顔で感謝の言葉を述べようとし、そのまま地面へと倒れた。
「けっ、こういう人の顔見て喋る餓鬼がおりゃあ、きれえなんだ」
「なにいってんだよ、おみゃあは男なら誰でも嫌いなんだろう」
わっはっはと笑う彼等は悪びれもなくボウを足蹴にする。