二十七
「し、心配した村の人が迎えにきたんだよ、何怖がってるんだ」
サクラよりも足の速いボウは追いつくと息を切らしながらそう言った。けれどサウラは首を振る。既に互いの距離は縮まっており、サクラの耳にはその下卑た声が届いていた。
「おい、はやく捕えろ、金を持っているかもしれない」
「迷った旅人か? とにかく、久しぶりの獲物だ、囲め、囲め!」
「へっへっへ、元気のいい人間なら高く売れる、捕まえろ!!」
松明の明かりが村を囲むように灯り、2人は来た道を引き返すように谷道へと駆けた。どうやら相手は廃村を拠点にしている山賊のようだ。いつの間にかボウもサクラと同じように山賊の正体に気づき、必死で山道を抜けていった。
「な、なんなんだよ! おい、サクラ、これどういうことだ?!?!」
後ろにいるサクラへ振り返りもせずボウが聞くが、
「……そんなの、知らない、」
サクラはボウに構っている余裕は無く、とても焦っていた。村に辿りつく谷道は一本道である。もしその一本道を先回りされていたら2人は山賊に捕まるだろう。だから、山賊よりも速く、谷道を渡りきらなければならない。しかし、あの谷道は少し踏み外したら切り立った崖の下。それは山賊とて同じ事だが、履き慣れぬ草履と、ボウが一緒にいる状態で逃げ切れるかどうかサクラには全く自信が無かったのだ。