十八
崩御の日からサクラを取り巻く様々なことが急にこれまでとは全く違う速さで変わり始めたように感じていた。また、ようやく思い出した自分の記憶に戸惑うことが多く、サクラはへとへとに疲れていた。
(すっごいいじわるで嫌だけど、ボウが言っていたことから色んなこと知れた。この村のこどもたちは、私が何をしたのか知らない。アサ様や大人たちは知ってる。わたしが、死んだちゃーを生き返らせたことを)
そしてサクラは、あの時記憶の中で自分が呼んだ声が気になって仕方がなかった。
――「お願い……【 】、ちゃーを元に戻して」
その言葉は確か、先日アサの言いつけを破って井戸へ水を汲もうとした時にも脳裏で閃いたはずだ。自分の中にあって、自分の意志とは全く別のところにあるソレが何なのか、サクラは頭を悩ますばかりであった。
(それに、ちゃーを生き返らせた時、あれから逃げて、山の中を走って、でもその後どうしたのかは、まだ思いだせていない)
これまで何度も苦しみ続けてきた悪夢なのにその結末が一切思い出せない。
(もしかして最後どうしたのか思い出せないから、こんなに怖いの……?)
無限に続く記憶の夢。それは幼いながらに聡明なサクラにとってもどかしい気持ちと知りなくない恐ろしい気持ちを同じぐらいに抱えたものであった。
(でも、きっと、思い出さないとわたしは……)
微睡む思考の中でサクラは確かに、あの事件のことを思いださないといけないという気持ちを固めたのであった。