十四
知っている自分は偉いとでも言いたげな動作はいつものことで、サクラは気にも留めず尋ねる。
「どうして? 龍王様がいないと何が変わるの?」
興味津々なサクラの態度に気を良くしたのか、ボウは手を止め畑の横に座り込み話し始める。
「龍王様がいるからこの国は龍の恵み……つまり水の恵みで溢れているんだ。その龍王様が不在ということは、雨は降らなくなるし、水脈も途絶えてしまう。つまり、俺たち農民にとって死活問題になるんだよ」
サクラは驚く。これまで王様と自分の生活が繋がっているとは思いもしなかったからだ。
そんなに凄い王様が亡くなった。確かにそれは大変なことだ、とようやくサクラは頭の中で理解することが出来た。
「龍王様って凄いんだね……」
サクラが純粋に出した言葉に、ボウは呆れたように溜息をつく。
「今更そんなこと言ってんのかよ、お前は本当に使えない奴だなあ」
今まで誰も教えてくれなかったことなのだ。サクラはいつも通り意地悪なボウの態度に少し傷つきながら草むしりを再開した。
日が照ってきて昼になると、サクラはようやくアサから休んでもよいと言われた。ボウを含むアサの家族たちは既に母屋の方で昼食を片づけたところである。残り物の麦ご飯で作られた握り飯を一つ貰いサクラは井戸近くの柵に腰かけた。