十三
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「皇子はたくさんいるのに次の龍王様が公表されてない……もしや皇子の中には龍王様がいないのでは」
「まさか、前の龍王の皇子の中に必ず一人龍王がいるのが天の習わしだろ」
「でも実際、皇子の中で誰一人次の龍王だと名乗り出てないじゃないか」
「このままではもしかすると、昨年植えた作物は全部駄目になるんじゃと恐ろしいよ」
あの閃光があってから、方々で始終言い争うような会話が村の中を飛び交っていた。まだ日が昇って間もないというのに多くの人が行き来している。
サクラは畑の雑草取りをアサから言いつけられていたが、話の内容が気になり耳を傾けていた。
(……龍王様と作物の実りが関係しているのはなんでだろう)
この国の民は殆ど知っている事実であったが、幼い頃に両親から捨てられ教えてくれる人がいなかったサクラには不思議でたまらなかった。
「手を止めるなよ、」
一緒に畑の土の手入れをしていたアサの三男ボウがサクラを叱る。しかし、サクラの顔を見て察したおかにんまり笑うと、鼻高々に話し始めた。
「お前は知らないかもしれないけどな、龍王様がいるかいないかで、この国のありとあらゆることが変わるんだぜ」