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第二話:ま、転生して十二年経った訳だ

タイトル通りです。

ちなみに、主人公の名前は転生後は「シルヴィール」になりました。


母親は「シルヴィ」もしくは「シルヴィ―」で呼ぶので、混乱なさらぬよ~。







「シルヴィー、ご飯よー」

うとうとしていたら、遠くから母の声が聞こえてきた。

「ん……くはぁ…」

大きく伸びをする。

転生してから早十二年、俺は結構なイケメンに成長していた。

……自分で言うなって?

だって、俺の前の世界の時の120倍くらいカッコ良いんだもん。

そして、俺は耳元から流れていた音楽を止める。

これが俺が神に頼んだ能力の内の一つ。

名付けるなら、「懐かしき故郷、どこでも音楽プレーヤー」。

………うっせ、センスより伝わりやすさだバカやろ。

要は、俺が元いた世界の音楽が聴けるという、音楽プレーヤーだ。

見た目はあの光の玉とおんなじで、更に他の人には見えない。

ちなみに、歌詞も光に表示出来るので、とても便利な物だ、だが。

俺自身の手により、殆どがボーカロイドである。

曲のダウンロード自体はいつでもどこでも出来るし、更に言えば容量は無限大だし、おまけにプレイリストまで作れる。

だから別に、入れっぱなしでも良い、のだが……。

……悪いか!ボカロだってな、良い曲沢山有るんだよ!

ネタも混じってるけど!

「シルヴィール!どこなのー?」

「ここだよー、母さん。」

立ち上がって体に付いた草を払う。

「……シルヴィ、またお稽古サボってたでしょ?」

そう言って少し怒った振りをする美人さん。

母親だ。ついでに当たりだ。

この人、マジで優しい。

しかも子供に理解が有るし、叱る時は叱ってくれる。

良い母親。

「聞いてる、シルヴィ?お稽古しないと、立派な戦士にはなれないんですからね?」

だけど、息子を戦士にしようとする。

かなり危ない母親じゃないか……。

まぁ、この世界ではそれは共通の事項だ。

魔物と戦うよりも、人間と戦う方が命は安全だから。

ちなみに、この世界の戦闘系職業の人口比率は、こんな感じだ。

対人………………92%【戦士】

対モンスター……7.8%【ハンター】

対魔王……………0.2%【勇者】

である。

わざわざ魔王とモンスターを分けているのは、その目的が違うからだ。

対モンスターは、お金を稼ぐ為。

町を襲っているモンスターを倒したり、素材を売ったり。

まぁ、モンハンのハンターみたいな存在だと考えてくれて構わない。

んで、対魔王は、ほんとにそういう職業。

まぁ地球よりも遥かに広いこの世界、0.2%でも実は4万人はいるんだけど。

その4万人で、魔王のいるダンジョンを攻略していく訳だが。

うん、俺が生まれてから、魔王が倒れたという話は一度も聞いてない。

毎年何千人かが対魔王に志願し、そしてその総人口は毎年変わらず。

ほんとに、危険なジャンルなのだ。

…ま、魔王が一杯いるのも理由の一つだろうが。


Q.さて、俺はどの職業になりたいのか。

A.どれも嫌です。


……だって戦いたくないしー。

基本チキンだしー。

俺の親父だって、普通に商人やってるしー。

まぁ、商人になるには、少なくとも元となる財力とは別に、俺達の国では学歴も必要だから、めんどくさがりな俺はパスだけどな。

「……母さんは、俺が歌手になったら駄目なの?」

「…………歌手になるにはね、とんでも無い運と、それから安定したお客さんが必要なの。…ほら、さっさとご飯食べちゃいなさい」

まぁ、この国で歌手が成功するとは思わない。

基本、この国で歌手が成功すると言ったら、貴族に気に入られるか、他の国……たとえばミレムへ行って、そこで活躍するしかない。

実のところ、俺には戦士と歌手を両立させる素晴らしい手が有るのだが……。

そんな事を言ったら、「そんな怠け者は直ぐに死んで終わりだ」とか言われるだろうから、止めておく。

大体、俺の能力が分かる…筈なのは、明日だしな。







さて、次の日。

今日は大事な日で、俺も気合を入れていかなきゃいけない。

……つっても、俺がやる事は発声練習位だし、それにそもそも発声練習は今日やる事には何の関係も無い、普通は。

今日俺がやらないといけないのは、その名もずばり「異常値測定」。

名前から既に異常だが、内容は普通に、魔力、気力、能力の有無を確認する物。

それぞれが違う物である為、「異常値測定」とか言う名前に収まったんだそうだ。

まぁ、それが有るって事は、俺が遂に日頃の無意味な「お稽古」から解放されるって事だ。

大体、剣とか振ろうが握ろうが、俺にとっては疲れる以外の何物でも無い。

重いとしか感じないし、別に力が湧いた気にもならない。

ま、要は初めから剣士とか戦士向きじゃないって事だな、俺が。

そんな訳で、今日は発声練習に気合を入れるのだった。

これから毎日必要になるから、な。

しばらくして家に引っ込み、そしてまともな服に着替えて玄関へ向かう。

「ほらシルヴィー、準備は終わったかしら?」

「準備って言っても、持つ物は何も無いけどね」

玄関口で尋ねられそう返すと、母は呆れた様な顔をした。

「心の準備よ……というかその様子じゃ要らないみたいだけど」

うん、要りません。

だって能力は分かってるし。

……問題は。

一応母に聞いてこの世界にそういう種類の道も有るのは知っているが、俺が能力を活かせる職業に就くなら、明らかに対人より対モンスターの方が良い、という事だろう。

…命の危険はなるべく回避したかった。

が、どうせ一度死んだ命だ。

別に消えなくなってるんだし、そこはまぁ良いだろう。

のどかな田舎道を、母とともに歩く。

母は若干緊張している様だが、まぁ……しょうがないよな、子供に何かしらの力が有れば、母親としては嬉しい限りだし。

何しろ死ぬ確率がぐっと下がるのだ。

…いや、まぁ中には強力な物だと判断され、そのまま【勇者】ルートに行く奴もいるから、その場合は逆に生存率ががくっと下がるが。

ちなみに、俺の場合は問題無い。

まずもって、そんなに危険な能力と判断されないだろうしな。

だから精々対モンスタールート。

安全第一ってね♪

……くそっ、俺のキャラが♪を使うと気持ち悪いだと…………!?

まぁ、んな事は転生前から知ってたし、つーかどうでも良いな、これ。

えっと、じゃあ………ローリンガール聴いとくか。

…………うん、良い曲。

テンポ良い。……けどさ、歌うとちょっとキーが高いんだよねー。

今は…まぁ大丈夫なんだけど、転生前は正直しずはとデュエッた時とか辛かった。

「…ほんと緊張感無いのね、シルヴィは。」

気付けば鼻歌にして歌っていた様で、母に呆れた目で見られた。

「もうすぐ着くんだから、ちょっとは緊張しなさいよね」

そう溜め息をつく母の言う通り、道の大分先に、目指す建物が見えてきた。

【ハンターズギルド】。

そう言えば一言で説明が付きそうな、そんな場所である。

【ハンタークラス】の人達から【勇者クラス】が主に関係して、【戦士クラス】、要するに対人の戦いしかしない人達には、余り縁の無いところ。

依頼をハンターの代わりに受注し、請け負った依頼を【ハンタークラス】に、事によっては【勇者クラス】にお願いしたりしている。

一般人でも依頼でき、そういう面ではまぁ関わりは有るとも言えるが、矢張り一般人が最もこの血気盛んな建物と関わるのは「異常値測定」の時だ。

「異常値測定」は、次の三つの場所で行える。

まずは、それを専門に請け負っている店。少々値は張るがそれでも確実性と、客に基本的無干渉の応対により人気だ。

次に、その筋も請け負ってくれる教会。

この場合、その教会の神の信者であれば無料で可能。

まぁ他の一般人でも無料で可能だが、その場合は神の教えを延々と説かれるらしいので不人気。

…無料は確かにデカいが、そんな面倒な事になるなら、と最後に選ぶのは【ハンターズギルド】。

料金はお手頃設定で、信頼性は少々欠けるかもしれないが一番人気の場所である。

問題としては、良い力を持っていると引っこ抜かれる。

それが嫌な親は、専門の店に行って鑑定して貰ったりする訳だ。

…んで、異常値が検出されない奴も勿論いる訳で、そういう人は大抵が剣をひたすら鍛え始める。

でまあ、“そういう人の”集まりである【ハンターズギルド:剣の里】の入り口に、俺は辿りついた。






「へぇ、結構賑わってんだな」

ギルドに入ると、ごつい兄さんの集団を予想していた俺は、結構その予想を裏切られた。

見回すと目に付くのは矢張りごつい兄さん達ではある。

だが、それに混じって俺と同世代の子供、そしてその付添いらしき親達も見る事が出来た。

まぁ、この辺りに一つしか無いギルドだ。

恐らく、俺と同じ様に「異常値測定」を受けに来たんだろう。

後は、腹の出た商人達。

俺の父は痩せ細って全然商人らしくないが、父も良く考えりゃギルドに護衛を頼む訳で、いるのは当然だったか。

そんな訳で、イメージしていた「寄らば斬る」見たいなオーラは全然無く、むしろ和気藹々(わきあいあい)としていた。

……いやま、流石にそんな殺気ビンビンなギルドはまともに機能しないと思うが。

「ほら、受付行くわよ」

母に手を引かれ、意識が周りから自分へと戻る。

向かう方を見ると、……おぉ、レベル高ぇ………!

そこには、よくあるギルドカウンターに、よくある感じでお姉さんが並んでいるんだが……。

すごく、レベルが高い。

……なるほど、ギルドの受付が、冒険者の荒んだ心を癒す為に皆可愛いってのは、ガセじゃなかったのか…。

それなら、痴漢対策にカウンター裏にはごっついお兄さんが待機している、というのも…?

いや、流石にそれはガセかな。」

受付には結構な列が出来ていて、しばらく時間が掛かりそうだった。

あ、そーだ。

ここで少し、魔力と気力と能力の違いについて説明しよう。

まず、この三つはお互いに干渉不可能だ。

これは別に基本的な決まりでは無く、絶対だそうだ(少なくともギルド本部公式発表によれば)。

んで魔力ってのは、その名の通り魔法を使う為の力。

…じゃあニュアンスが変だな。

魔法の元が、魔力みたいな感じっつーか…気力で出来るのも魔法っつーし…。

…えっと、魔力を使うと、理論的な攻撃が出来る。

意味が分からない?

まぁ、要は「呪文」や「魔法陣」、「儀式」等、決まった形式で発動するのが魔法。

んで、それと対極に位置するのが気力。

これは、イメージで攻撃する。

拳に纏わせたり、体を覆ったり、またかめ○め波みたいにして撃ったり。

使用者の想像力によりレパートリーが大きく変化するが、残念な事にどんなにすごい気力使いでも、激しい戦闘中に複雑な気力を扱う事は出来ない。

まぁ、魔力使いも戦闘中には目くらまし以外じゃ肉体強化ぐらいしか使えないが。

んで、これらの力は勿論、個人個人での絶対量が違う。

使えば消費するのは当然だ。

回復の方法はと言えば、魔力は夜に、気力は昼に自然回復する。

後、睡眠でもそこそこの量は回復できる。

ま、要するに魔力一本や気力一本じゃ戦えないって事だ。

だから魔力使いだろうが気力使いだろうが、剣はある程度使えるらしい。

え?俺?

だから剣は嫌いだっての。

あぁそうだ、さっきも言ったがこの二つは絶対に相容れない。

そんな場合の代表例として、例えば敵モンスターが放ってきた気力の塊を、光属性魔法と勘違いして魔法で迎撃し、結果お互いの攻撃がすり抜けあってどっちも死亡、なんて笑い話が有る。

ちなみに、魔力と気力を併用して扱える者も勿論いて(俺に期待したか?前例が有るんだよ)、大体の奴が対魔王戦、要するに【勇者】に引き抜かれていく。

俺はそんなんじゃないから安心しろ。

でだ、肝心の能力。

これは魔力とも気力とも違う原理で動く、謎の力らしい。

発現率は結構低く、その為解明は進んでいない。

最も一般的に発動しやすい能力は、「獣使役(ビーストテイム)」。

要はモンスターと話せたり、また仲間にしたり出来る能力だ。

一般的とは言っても、その数は確か数百人程度。

それが一番なんだから、他の能力は、というと……。

……まぁ例えば、「悪魔癒(イビルアタック)」。

これは、相手にダメージを与えた分、自分を回復するという能力。

勿論…と言うべきかは分からんが、誰かを回復するとその分自分が傷付く。

これの能力者は、確かこの大陸にはいなくて……えっと、全国に34…いや、一人死んで33だっけ?

授業は話半分だったから覚えて無いけど。(学校やその他の世界設定はまた後で!)

その他にもまだまだ有るが、取り合えずそんな感じか。

あ、そーだ。

取り合えず、この三種類の最高峰三人の情報を。

魔力の最高峰、アスフェル・オークレイン。

御年108歳の老体ながら、魔力で自らの老化を止めている。

ちなみに、魔力使いでは珍しく、肉体はよぼよぼ。

だが、逆を言えば魔力のみで相当に強い、という事だ。

気力の最高峰、リーガン・アル・ベル。

確か今年で28。気力使いは例外無く短命で、彼の様に若い事が多い。

だが、魔王討伐に最も貢献している、との噂だ。

…狩れてねーんだし、魔王の方が強いんだけどな。

能力の最高峰、ジョー。

謎。

全世界で、彼に対抗できる物はモンスターのみで、人間に勝ち目は無いと言われている。

その能力は、「虚言癖(トゥルーワード)」。

相手と対峙した際に発動する能力で、相手について「何か一言」言う事が出来る。

この「何か一言」が言われるまでは攻撃が通らず、そして、言ったら。

その発した言葉が、例えば「お前は俺に負ける」だったとしよう。

その通りになる。

言った言葉が何だろうが、相手に関する事なら全て現実化する。

しかもこの場合の「対峙」とは、ジョーの前…直線距離20mの範囲に入った時点なので、同じ人物にだって何度でも使用可能だ。

ならばその範囲外から攻撃すれば良い。

そう思うかもしれない。

確かに周りに誰もいなければそれは有効だ。

だが、奴は周りにボディーガードを三人付けている。

そいつらがいる限りジョーに攻撃は通らないし、そいつらはジョーの「虚言癖(トゥルーワード)」で不死身程度の生命力になっている為、一切手が出せないのだ。

……ん?何故悪人を話す様に語るのかって?

ジョーが悪人だからだ。

そして、奴の能力はモンスターには通じない。

つまり。

あいつは自分にとんでもない能力が有るのを知った。

だがモンスターには効かないらしい。

ならば、対人間に使えば良い、とそう考えたんだろうな。

……ここから東に大陸を三つ程超えると、奴の“支配地”が広がっている。

魔王のダンジョンから一定範囲を取って、国三つ分ほどの広さに広がっているのだ。

それ程までに強大な王国を形成したジョーは、現在の年齢、不明。

だが、超の付く危険人物である。

…下手すりゃ、魔王より。

握った拳が震えるのが分かった。

あいつの所業は伝わっている。

とある人物から聞かされているが、そのせいで俺はジョーを殺したくて堪らなくなっていた。

…いつか、必ず……!

「シルヴィ、ほら、貴方の番よ?」

「えっ?」

はっとして顔を上げると、受付の長蛇の列は消え去っていて、いつの間にか俺の番になっていた。

「やっと緊張してきた?」

ジョーの事を考えていたのを、どうやら緊張に取られたらしい。

まぁ否定する必要も無いので、曖昧に頷いておいた。

「こんにちは、本日は御依頼ですか?それとも測定ですか?」

受付のお姉さんが眩しい笑顔で訊いてくる。

…っく、年上でも、破壊力が半端無い……!

俺はお返しとばかり、にこっと笑い返した。

「……………なっ…///」

ふはは、赤くなってる、赤くなって……る?

おい待て、俺は十二歳だ。

そして自慢じゃないが、結構背は低かったりする。

要は成長途中の少年で、例え容姿が整っていようが赤くなってはいけないのだ、絶対。

「……ぇ、えっと…そ、そうだ!本日は御依頼ですか?それともデートですか?」

「色々間違った!!」

駄目だこの人、有り得ない。

「…えっと、この子の異常値測定お願いします」

見かねた母が口を挟み、俺は無事に受付を終えた。





~~~~~




「えぇ~、折角こんな早くに来たのに、昼過ぎに測定かよ~……」

「文句言わないの。…人数多かったし、今日は無理かと思ったけど……何故か受付の人が奮闘して、何とか今日にして貰ったの」

受付が奮闘?

……あー、何か腹いてーなー。

明日でいーかなー。

俺が身の危険に憂鬱になっていると、視界の端に知り合いが見えた。

あ、ちなみに今はギルドの外に出て、近くの広場で休憩中だ。

測定まで後三時間近く有る為、暇である。

「あ、シル!お~い!」

気付いた様で、こちらに手を振ってくる。

手を振ってくる。

手を振ってくる。

手を振ってくる。

……手、疲れねーのかな。

「振り返しなさいよ!」

おっと、ぐんぐん近寄ってきた。

俺を睨む強気そうな顔に、俺はへらへら笑いながら声を掛ける。

「よおチル、奇遇だな」

「奇遇ってあんた……っくぅ、ムキィー!!」

地団太を踏み始めた。

さて、愉快なこいつはレチル・クローム。

世に言うツンデレタイプな女の子で、どうやら百合っぽい。

え?相手は俺じゃないのかって?

いやいや、基本俺はこいつを弄るだけだし、こいつも俺の前じゃずっと不機嫌だ。

デレた事なんて一度たりとも無いね!

「ん、お前は何してんだ、チル」

「私は朝市見てたけど…あんたこそおばさまと一緒に何してるのよ」

朝市…だと!?

俺の知る限り、歳のいった方々の買い物コースだ、この世界じゃ。

もう一度言おう、この世界じゃ。

大体の主婦は足を使ってでもより安い移動市場(その名の通りで、商人の集団が町を回る物。この国には7つ有った筈だ。)を追っ掛けるし、子供はそこらのインチキ商人に集ったりする。

わざわざ朝市に行く辺り、こいつは精神年齢がげふんげふん。

「俺はアレだよほら、異常値測定」

言うと、チルは顔を思いっ切り顰めた。

「あんたギルドで測定するの?……うぅん………ま、精々受付に気を付けてね」

「お前は何を知っている!?」

な、ゆ、有名なのかあの人!?

何故こいつから注意される!?

「あら、そう言えばレチルちゃんはどこで受けるの?」

ここで、ずっと会話を傍観していた母がチルに訊いた。

えっと、チルは確か誕生日が……あれ?

「お前、ひょっとして来週?」

「うん。私はおじさんの店で受けるわよ。……ていうか、言ってくれれば貴方も安くでして貰ったのに」

あぁ、そういやチルのおじさんは専門店やってたんだっけ。

恐らくチルは無料でして貰うんだろうな、だが…。

「来週ってお前な、そうフラフラしてんな!良い能力が貰えるように、お祈りしなきゃ駄目だろーが!」

「あらあら、ずっと何もしてなかった貴方が言うセリフかしら、シルヴィ?」

いやな、母さん。俺のは事前に分かってたからだ。

この世界の子供は、普通この時期にゃ自分の夢見る力が手に入ります様に、もしくは何も有りません様にって祈るモンなの!

「私は良いの。大体、祈ったってどうにかなる物でも無いでしょ?」

「……………まぁ、そうかもな」

だが、お前がそんなに落ち着いてるのは納得いかねえ…。

もっと騒げよ、もっと期待しろよ。

あ?俺が何だって?




~~~~~




「ん……、良いんですか?ほんとに」

チルと一緒に昼飯を食べる事にした。

普段中々入らない様な高級店で、チルが恐縮するのも頷ける。

まぁ、世の親達の例に漏れず、俺の母さんも笑顔で奢るだろうが。

「良いの良いの。どうせ夫の稼ぎは良いし、それにシルヴィの晴れの日なんですもの。万が一の為に用意したお祝いのお金を、将来のお祝いに投資しただけよ」

おい母よ。息子の結婚相手を指定するな。

……まぁチルは可愛いし、正直な所俺は大歓迎だが…あいつは百合だ。

「……将来のお祝い?」

それに馬鹿だ。

「ふふっ、シルヴィを宜しくね?」

母の付け足した言葉で、やっと理解が追い付いたよう。

「ななっ……そそそそんな……///」

ほら、顔を真っ赤にして怒っている。

俯いてるから表情は見えないが、きっと阿修羅より怖い顔だろうな。

……暇だし、曲聴こうか。

【Calc.】 96猫さんの歌ってみたで。

……96猫さんのバージョン、やっぱ好きだわ~。

俺、96猫さん大好きだ。…しずはにゃ出せねえ声が有る!

「えっと………その、こちらこそ、宜しくお願いします……」

つーかしずは、元気にしてるかなー。

こっちとあっちの時間の関係がどうか知らないが、まぁ俺がいなくても元気にやってるだろう。

……うーん、それにしてはあいつの歌が全然ダウンロードリストに無いんだが…。

まさか、歌手を諦めた、とか……?

そりゃ無いな、うん。

「「…………………」」

曲が切れたところでチル達に目を向けると、二人とも何故か俺を睨んでいた。

「ん?どうかしたか?」

俺に話しかけてたのかな?

「どうして……」

「は?」

チルが肩を震わせ、阿修羅より怖い顔で叫んだ。

「どうしてこの距離で聞いて無いのよー!!!」

うるせっ。

それからは何度聞こうが、烈火の如き表情で押し黙って、一切説明してくれなかった。

一体何だってんだ、全く。


登場曲:ローリンガール(wowaka feat.初音ミク)

   :Calc. ※96猫さんの歌ってみた(ジミーサムP feat.初音ミク)


ちなみに、作者はボカロの知識が浅いです。

ですから、オススメの曲とか有ったら教えて欲しいです。

……まぁ、ボカロ以外も出す予定ですが。

作者の好きなアーティスト

RADWIMPS,DECO*27,ボーカロイド(知ってる範囲で)


こんな感じです。


オススメのアーティストや曲が有れば、教えてくださー。

ではでは、次の更新はいつになるやら。

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