第一話:転生する時、神がいるってどうよ
この小説は、実在する人物、団体、小説に一切関係が御座いません。
作中に登場する曲等は、作者が褒め称える以外は関係御座いません、きっと。
さて、来ましたよ。
え?何がって?
察しが悪いなぁ、そりゃあ勿論。
「それで?転生する?しない?」
異世界転生!
うん、俺ついさっきまで生きてました。
そんで、遂に高校デビュー!
今日は入学式だった訳だ。
轢かれた訳だ。
入学式の皆、すっげぇごめん!
後しずは、すっげぇごめん!
多分お前ら悲しんでるけど、俺はすっごい嬉しいよ!
「ねぇ君、転生するの?しないの?」
思えば、結構充実した人生だったのかなー。
別にリア充じゃねーけど、鬱る様な人生じゃねーし。
死んで、悔いが無いかっつったら……やっぱ、しずはを置いて先に逝っちゃった事か。
ん?
あぁ、しずはってのは、幼馴染の。
二人とも歌うのは好きだったし、しずはも、そして自慢じゃないが俺もそこそこの歌唱力は有ったと思うし、そんな訳で「一緒に歌手になろうね」的な事を言い合っていた訳だ。
あ?婚約?しねーよんなもん。
「………転生」
ま、あいつの事だから流石にしばらくしたら立ち直るだろ。
ちゃんと好きな奴もいたっぽいし。
んで、俺は晴れて第二の人生を歩む訳だ。
「……うぅ…無視、しないでよぉ…」
ん?
あぁ、そういや何か話しかけられてたか。
目を向けると。
「ひっく…うわぁぁぁぁああ」
号泣する女の子がいた。
先程、俺に神と名乗ってきた奴だ。
うん、神よ。
精神鍛えよう、な?
~~~~~
「無視するなんて酷いですっ!悲しくて泣いちゃうじゃないですか!」
「美徳だ。素晴らしいじゃないか」
「ど、どこがですかぁっ!褒めてもポイントは増えませんからっ!」
ポイント。
それが、確か転生の時に重要だとか…?
「あの、……神様?で良いよな。…ポイントって、何だっけ?」
「」
あぁー、神様がフリーズしたよ。
目が潤んでいく。
…え?また泣くの?
「五回も説明させて、覚えてないなんて……ふぇえ、酷いですぅ!」
何て酷い奴だ、五回も説明させて覚えてないなんて。
と言うか俺だろうな、きっと。
「も、もう、これが最後ですからね!次聞いたら、悲しくて転生取り消しますから!」
「よし、聞こうか。寧ろ懇切丁寧に、迅速に分かり易く」
「こ、懇切丁寧で迅速はちょっと…」
うん、俺この神様好き~。
可愛い。というか、可愛い。
…まぁ、要するに可愛いんだが。
神様は、光の玉みたいのを生み出すと、それに触れる様言ってきた。
「こうか?」
右手を伸ばし、軽く触る。
熱くもピリピリする感じも無く、オーラ的な何かを感じ取った訳でも無い。
だが、その光の表面に文字が浮かんだのは、恐らく何か有ったからだろうな。
「何て書いてありますか?」
神様が尋ねてくる。
……お持ち帰りしたいな~。
まぁ、神様を持ち帰る程俺はバカじゃないが。
「え~と、何々……。ポイント、293。それと、転生可能な世界……ってのが、書いてあって、名前がずらずらならんでる……」
「あ、はい。成程です」
神様は顔を綻ばせて、そして少し考え込む様にした。
「うーん」とか言いながら、上目遣いで空中を睨む神様。
何故だろう、このまま考え込めば良いのにとか、そう思ってしまう。
「293ポイントか……うーん…」
「多いのか?少ないのか?」
どの位なのか全然分からない。
正直、三桁って事は結構いい線いってると思うんだが……。
「あの、普通の人の平均値だと……」
「平均値だと?」
俺は若干の期待を持ちながら、そう促す。
「2000は堅いです」
「桁が違った!?」
ひ、低いじゃん!
293とか、むしろ底辺じゃん!
「……あの、でも私、前に247ポイントも見た事有るので、そんなに落ち込まないで下さい」
「ぐはあっ……」
最後の傷が抉られたっ!?
たったそれだけの違い、だと……?
つーか、これだとひょっとしてだが、俺は今までで二番目に低い?
…まさかな。うん、人生気楽にいこう。
っつっても俺の人生、既に一度終わったけど。
「ところで、このポイントは何に使うんだ?」
「転生の際、転生者の希望を叶える時に消費します」
神様は、相変わらず頭を抱えながらではあるが、そう答えた。
……ん?
ってかそれ、やばくね?
「ポイントが少ないと、どうなるんだ?」
「転生先の世界がだいぶ制限されたり、後は転生後の能力指定等、そういう行為が制限されたりします。」
えぇ~。
それは困る。
別にチート転生に憧れが有る訳じゃ無いけど、正直自分なりに「こんな転生したいな~」とか、考えは有ったのだ。
「ん、例えば俺のポイントならどんな世界に行けるの?」
そう聞くと、神様は苦笑いをした。
「あはは………その名前の数だけ、行けるんですが…」
「マジか!って事は結構選択肢有るんじゃね?」
おぉ、ざっと見ると(光の玉に浮かび上がった名前は、スクロール出来た)100は有りそうだ。
「あの、でも…」
「じゃ、これとかも行けんのかよ!?うわぁすっげぇ!」
名前で何となく分かる世界、そして俺も読んだ事の有るタイトルのついた世界、等結構充実している。
選択肢あんじゃん!293、舐めてたけど結構良いじゃん!
「……あの、ちゃんと話は最後まで聞いて下さい」
「ん?まだ何か有るのか?」
もう大体ポイントについては理解したんだが。
それに今は世界を選びたいし、ポイントで得られる能力の説明は後で良い。
「そこに現れている世界の殆ど、行っただけでポイント全消費する筈ですよ?」
「…………へ?」
神様はちょっとだけ申し訳無さそうな顔をして、そして少し光を操作した。
「ほら、これでそれぞれの世界に必要なポイントが分かる筈です」
「………………………にひゃく、きゅうじゅうさん…」
ふざけるな、何だこの世界の羅列は。
えー、簡単に調べたら、117有った世界の内、94の世界がポイント消費300だった。
何故俺のポイントを超えてるのか、と聞くと、「ちょっとは融通を利かせているんです」、だそうだ。
良心的なプランだな、ほんとに。
だが、そのせいで傷付く俺の心をどうしてくれよう。
残った23の世界の内、実に18がポイント200。
俺にとって大きな痛手なので、あまり考えたく無い。
残りの五個の配分は、次の通り。
・ポケットモンスター シリウス 必要ポイント:100
・manisiifkkskah 必要ポイント:100
・湖の傍の魔界 必要ポイント:60
・お針子の世界 必要ポイント:30
・不人気な例のアレ 必要ポイント:0
さて、まず聞かせて貰おう。
「何でポケモンあんだよ!しかもシリウスって、アルタイルじゃねーのか!」
「いや、だって作者さんはシリウスしか内容知らないし…」
っく、ダメだこの神、作者に汚染されている……!
「ってか、100って少なすぎだろ!」
「あぁ、それは転生者が2000人を超えt」
「よし、他の場所にしようか」
ふざけんな、何でそんなにいるんだ。
…あぁ、行きたかったなぁ、ポケモン。
でも二次ファン潰れたし、俺は残りのイミフな世界から選ぶしか無いのか…。
「……なぁ、あのアルファベットの羅列は何?」
「あぁ、あれはほら、要するに行ったら発狂すr」
「よし、他の場所にしようか」
もう嫌だ、残りの場所からまともなのが出る気がしない。
大体、湖の傍の魔界って何だよ。
世界じゃなくて場所じゃん!
行く気失せるし、それに魔界限定はちょっと……。
さて、残るは一つか……。
「なぁ、不人気な例のアレって…?」
あ゛?お針子がどうかしたか?
行く訳ねーだろ。
「あぁ、その世界はですねー……」
さて、ここから神様の可愛らしくもたどたどしい解説が始まるのだが、それは割愛させて頂く。
だって理解するまで十五回も聞く羽目になったんだもん。
さて、俺から説明しよう。
売れ残り過ぎて、最早名前さえ伏せて表示される様になった世界。
正式名称は「ちきゅう3世」。
ふざけてんのか?
おいふざけてんのか?
そして、世界観は結構まともだった。
曰く、良くあるRPGの様な世界。
適度にモンスターが沸いて、適度に戦士や魔法使いがいて、適度に国が有って、適度に戦争したり。
何事も適度が重要だが、この世界は有る一点において、適度さが全く無かった。
曰く、ラスボスが一杯現れる。
結構広い世界の様で、地球の十八倍の表面積が有る星らしい。
重力はどうかと言うと、法則ごと違うから同じだそうな。
で、その広い世界が故に、結構そこかしこに魔物の巣やダンジョンが有り。
そして全部で25有る大陸の殆ど一つ一つに、ラスボス級のモンスターのダンジョンが有るらしい。
しかも、勇者が現れて倒そうが、五十年もすればまた元に戻るのだとか。
それと、最近のゆとり勇者物の様にラスボスが良い奴ってのは無いそうで、住民はなるべくダンジョンから離れたところに国を構えるらしい。
まぁ、モンスターには流石に友好的な奴もいるみたい。
で、大事なのはその先で。
まず、この世界には魔力が有る。
所謂魔法だ。
まず、この世界には気力が有る。
所謂魔法だ。
まず、この世界には能力が有る。
所謂魔法だ。
……ゴメン、めんどいから全部魔法にしたけど、どうやら全部違うみたいだ。
まぁその説明は後に回す。
んで、その所謂魔法たちは、発現率が適度に有るらしい。
……ほんっと、何事も適度な世界だな。
一言で言えて便利な限りだ。
で、この世界で一番大事な事は。
曰く、死んだらそのまま消滅。
いや。
いやいやいやいやいやいやいやいや。
転生どころか、天国地獄、冥界魔界すらなく、そのまま消滅だそうだ。
いや、駄目だろ。
何が「ちきゅう三世」だ、不人気な例のアレで十分じゃねーか。
「どうします?この世界にしますか?」
「いえ、消える位ならポイントが無くなる方がマシです」
そう返すと、神様はちょっと寂しそうな顔をしてから、「はい……」と頷いた。
「そうですよね、こんな世界やっぱり駄目ですよね………」
……うん、何故彼女は悲しそうなんだ?
何か思い入れが有るのだろうか?
「なぁ、その世界に何か有ったのか?」
そう尋ねると、一瞬神様は不思議そうな顔をして、それから直ぐに納得した様な表情を浮かべた。
「いえ、そういうんじゃなくて…………私が作った世界ですから」
「あー……はは」
………うーん。
驚くべきか、それとも慰めるべきか。
神様として、世界を作る事が普通なのかそうじゃないのか、全然分からない。
「…私の他にも、神様がいるんです」
そう言って、彼女は少しむくれた様な顔をする。
「皆の世界は人気なのに……私の世界は、可愛い名前にしても、泣く泣く0ポイントに設定しても、全然………ぐすっ…だ、誰も転生してくれなくて……ふぇぇぇぇ」
いや、泣くな。
神に泣かれても困るし。
…つーか「ちきゅう三世」、舐めてるとしか思えないんだが。
断じて可愛くない!
とは言わない俺、優し過ぎるぜ…。
「…うん、可愛いかどうかは良いとして、多分その世界は誰も来ないと思うぞ?」
「ど、どうしてですかぁっ!…ひっく、そんな事言うなんて、酷いですぅっ!」
だって。
消えるんだもん。
「……なぁ、多分その『消えちゃう』設定無くしたら、皆来てくれる思うぞ?」
「ふぇ?」
神様は、「皆来てくれる」に反応したのか、顔を上げてくれる。
「だからさ、誰だって消えたくないし。正直それで躊躇する奴が殆どだと思う」
あ?消えたい奴もいる?
そんな奴、初めから転生しないだろ。
「…でも」
「でもも何も、その設定が有る限り誰もこねーよ。だから、俺も他の世界にするわ」
手をひらひら振りながら言う。
「……あの」
神様が、意を決した様な顔でこちらを見てきた。
「…消えなくしたら、貴方も、来てくれますか……?」
「え?出来んの?」
ぶっちゃけ出来ないと思ってたし、だからこそ大量ポイント消費も覚悟してた。
なのに、出来るとか言うのだ。
「良いのか?一度作った世界の設定変更して?」
「………ほんとは絶対に駄目ですけど、……どうせ誰も来ない世界しか作れないなら、少しくらい規約違反したって、皆が来る世界の方が良い筈です」
そう言いながら、突然ノートパソコンを取り出した。
「………………何してんの?」
「プログラムし直しです!世界の設定変えなきゃいけないから……どうしよ、モンスターも強くしちゃって良いよね…全体的にレベル5上げて……うん、こんなもんかな」
パタン。
ノートパソコンを閉じると、にっこり微笑んできた。
………ぷろぐらむ?
「はい、これで大丈夫だと思いますよ?」
「えっと、ぷろぐらむって……?」
彼女は表情を変えず、にこにここちらを見ている。
……………。
……………………。
………よし降参、俺の負け。
「…うん、じゃあ付けて貰う能力の方だけど……」
「はい、ご自由におっしゃって下さい!」
自由じゃないだろ、293ポイントじゃ。
「俺のポイントでさ、こんな事出来ないかな……?」
俺は、自分の構想を伝えていく。
……け、決して普段から厨二病宜しく転生の準備をしていた訳じゃないぞ!
ただ、その、何だ………まぁ、こんな能力あったら良いなー、ってさ。
「……これをしちゃうと、他の人みたいに『全属性で最強で』とか『創造は付けてね』とか出来ませんよ?」
「あー、良いよ良いよ。どうせそういうの嫌いだし、俺」
あ、勘違いしないで。
読んでて楽しいよ、楽しいけどさ。
ずっとスター状態のマリオ、プレイしてて楽しいのは小学校低学年までだって。
まぁ、そう言う訳で、293ポイントでも案外何とかなる物だった。
「では、転生させて頂きます♪」
そう言って、神様は腕を振り上げ、………固まった。
「……忘れるところでした」
そして、光の玉を指差す。
ポイント残高、4ポイント。
「性別が選べますが、どうしますか?」
「…………選ばなかったら?」
「ランダムになります」
…うん、まさかと思うが、しずはが来た時の用心だ。
「男で」
こうして、俺の第二の人生が始まる。
……あぁ、あの神様可愛かったなぁ。
連絡取れる能力も貰えば良かった……。
と言う訳で、転生です。