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寓話の森  作者: トワイライト


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第7回(#31~#35)

#31 未来からの手紙


ある日、一人の少年のもとに手紙が届いた。


差出人は自分だった。


正確には、三十年後の自分だった。


少年は驚いた。


手紙にはこう書かれていた。


「私は未来のお前だ」


「これから起こることを少しだけ教える」


半信半疑だった。


だが手紙に書かれていたことは次々と当たった。


翌日の雨。


試験の結果。


友人との喧嘩。


すべてその通りになった。


少年は手紙を信じた。


そして毎月届く手紙を待つようになった。


進学先。


就職先。


誰と出会うか。


何を選ぶべきか。


未来の自分は何でも教えてくれた。


少年は安心した。


失敗を避けられるからだ。


人生は順調だった。


大きな後悔もなかった。


やがて少年は大人になった。


そして気づいた。


自分はいつからか、自分で決めていない。


選んでいるようで、


手紙に従っているだけだった。


ある日、最後の手紙が届いた。


そこには一文だけ書かれていた。


**「次の手紙は、お前が書く番だ」**


男は凍りついた。


机の引き出しを開く。


そこには空の便箋が置かれていた。


その瞬間、すべてを理解した。


未来の自分は人生を教えてくれたのではない。


人生をなぞらせていただけだった。


---


解釈


人は失敗を避けたいと思います。


しかし失敗を避け続けることは、自分で選ぶ機会を失うことでもあります。


未来が分かることと、自分の人生を生きることは別です。


この話は、「自由とは不確実性を引き受けることかもしれない」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#32 地図の外


ある王国では、生まれたときに地図を渡された。


その地図には、その人が行くべき場所がすべて記されていた。


学校。


仕事。


結婚。


住む家。


老後の暮らし。


すべてだ。


人々は安心していた。


迷う必要がないからだ。


地図の通りに進めばよかった。


ある少年も地図を受け取った。


最初は従っていた。


だが成長するにつれ、疑問を持つようになった。


「地図の外には何があるんだろう」


周りの大人たちは笑った。


「何もないさ」


「だから地図に載っていないんだ」


少年は納得できなかった。


ある日、地図に描かれていない道へ入った。


すると森があった。


川があった。


見たことのない景色が広がっていた。


何もないどころではなかった。


だが同時に危険もあった。


道に迷い、


失敗し、


何度も後悔した。


それでも少年は進んだ。


何十年も経ち、老人になった。


ある夜、焚き火の前で自分の地図を広げる。


地図はほとんど真っ白だった。


地図通りに生きなかったからだ。


しかし老人は笑った。


そして裏返した。


そこには無数の線が描かれていた。


自分が歩いた道だった。


誰かに与えられた地図ではない。


自分で描いた地図だった。


---


解釈


人は正しい道を知りたがります。


しかし他人が用意した道を歩くことと、自分の人生を生きることは同じではありません。


失敗や遠回りは地図には載りませんが、


振り返ったとき、それこそが自分だけの道になっています。


この話は、「人生は見つけるものではなく、自分で描いていくものかもしれない」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#33 正しい答え


ある学校では、一生に一度だけ受けられる試験があった。


その試験にはたった一問しかない。


そして、その答えによって人生のすべてが決まると言われていた。


生徒たちは必死に勉強した。


過去問はない。


出題範囲も分からない。


それでも皆、正しい答えを探し続けた。


ある日、試験の日が来た。


問題用紙が配られる。


そこには一文だけ書かれていた。


**「あなたは何を望みますか?」**


教室は静まり返った。


生徒たちは困惑した。


数学ではない。


国語でもない。


正解が分からない。


ある者はお金と書いた。


ある者は名誉と書いた。


ある者は愛と書いた。


何時間も悩んだ末、


全員が答案を提出した。


結果発表の日。


生徒たちは驚いた。


全員が合格だった。


学校中が騒然となった。


「採点ミスだ」


「正解は何だったんだ」


生徒たちは教師に詰め寄った。


すると教師は言った。


「この試験に正解はありません」


皆が困惑した。


教師は続けた。


「人生を決めるのは答えではなく、その後だからです」


「何を望むかよりも、その望みとどう向き合うかの方が重要なのです」


生徒たちは納得できなかった。


だが何十年も後になって、


その言葉を思い出す者がいた。


望みを叶えた者もいた。


叶わなかった者もいた。


しかし誰もが気づいた。


人生を変えたのは、あの日の答案用紙ではなかった。


その後の毎日だった。


---


解釈


人は人生のどこかに「正解」があると思いがちです。


進路、仕事、結婚、夢。


しかし多くの場合、選択そのものよりも、選んだ後の行動の方が人生に大きな影響を与えます。


この話は、「正しい答えを探すことより、答えを正しくしていくことが大切なのかもしれない」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#34 完成した庭


ある王は、世界で最も美しい庭を作ろうとしていた。


名庭師たちを集め、


最高の花を植え、


珍しい木を運ばせた。


庭は年々美しくなった。


しかし王は満足しなかった。


「あの花の色が気に入らない」


「あの木は少し曲がっている」


命令が繰り返された。


花は植え替えられ、


木は切り倒され、


池の形も何度も変えられた。


庭師たちは疲れ果てた。


だが王は言う。


「完璧な庭ができれば、私は満足する」


何十年も経った。


王は老人になった。


そしてついに、


どこにも欠点のない庭が完成した。


花は完璧に並び、


木々は寸分違わず整えられ、


落ち葉一枚落ちていない。


王は喜んだ。


「ついに完成した」


その日、王は庭を歩いた。


美しい。


確かに美しい。


だが、なぜか心が動かない。


風が吹く。


しかし木々は揺れない。


鳥は来ない。


虫もいない。


花は咲いている。


だが香りがしない。


王はようやく気づいた。


自分が作ったのは庭ではなかった。


変化のない「完成品」だった。


翌朝。


王は庭師たちに命じた。


「もう手を加えるな」


庭師たちは驚いた。


王は笑った。


「庭は完成した瞬間に死ぬらしい」


それから庭には雑草も生えた。


落ち葉も積もった。


鳥も集まった。


王は初めて、その庭を美しいと思った。


---


解釈


人は完璧を求めます。


しかし生きているものは、不完全だからこそ変化し、成長し、美しく見えることがあります。


欠点をなくすことと、生きていることは同じではありません。


この話は、「完璧さ」と「生命らしさ」の違いについての寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#35 もう一つの扉


ある男は、長い旅の末に一つの扉へ辿り着いた。


古く大きな扉だった。


扉にはこう書かれていた。


**「答え」**


男は喜んだ。


子どもの頃から探していたものだ。


人生の意味。


幸福の条件。


なぜ生きるのか。


そのすべてが、この扉の向こうにあるのだろう。


男は扉を開いた。


部屋の中には一人の老人がいた。


老人は机に座り、本を読んでいる。


男は尋ねた。


「答えはどこですか?」


老人は微笑んだ。


そして部屋の奥を指差した。


そこにも扉があった。


男は首をかしげた。


その扉にはこう書かれていた。


**「さらに良い答え」**


男は急いで向かった。


扉を開く。


するとまた部屋があり、


また老人がいた。


そして奥には扉。


**「さらにさらに良い答え」**


男は走った。


次の扉へ。


その次の扉へ。


また次の扉へ。


何年も。


何十年も。


扉を開け続けた。


老人になった頃、


男はふと立ち止まった。


そして最初の部屋を思い出した。


あの老人は何を読んでいたのだろう。


男は引き返した。


長い年月をかけて、


ようやく最初の部屋へ戻る。


老人はまだそこにいた。


男は机の本を覗き込んだ。


本の表紙にはこう書かれていた。


**「人生」**


男は笑った。


ずっと答えを探していた。


だが答えを探している間、


読まずに通り過ぎていた本があったのだ。


---


解釈


人は「もっと良い答え」を求め続けます。


もっと良い仕事。


もっと良い人生。


もっと良い自分。


しかし、その探求自体に夢中になるあまり、


今ここにある現実を見落としてしまうことがあります。


この話は、「人生は答えを得るためのものではなく、読むための本なのかもしれない」という寓話です。

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