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寓話 人生の教訓を描いた短い物語  作者: トワイライト


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50/103

第50回(#246~#250)

#246 最後に開く扉


ある国の外れに、


不思議な塔があった。


その塔には百の扉があり、


最上階には大きな宝が眠っていると言われていた。


多くの挑戦者が訪れたが、


誰も頂上までたどり着けなかった。


ある日、


一人の若者が塔へやって来た。


彼は宝を手に入れようと決意し、


塔の中へ入った。


最初の扉は簡単に開いた。


二つ目も、


三つ目も問題なかった。


しかし十番目の扉あたりから、


少しずつ重くなり始めた。


若者は汗を流しながら進んだ。


二十番目。


三十番目。


四十番目。


扉を開けるたびに疲労は増していった。


五十番目の扉を開けた時、


若者は思った。


「まだ半分もあるのか」


心が折れそうになった。


だが宝を思い浮かべ、


再び歩き始めた。


六十番目。


七十番目。


八十番目。


その頃には、


最初の勢いは消えていた。


宝への期待よりも、


ただ前へ進むことだけを考えていた。


九十九番目の扉に着いた時、


若者は床に座り込んだ。


体は限界だった。


「ここまで来たのに」


「あと一枚なのに」


最後の扉は、


今までで最も重そうだった。


若者は何度も押した。


だが動かない。


力を振り絞っても、


少しも開かなかった。


絶望した若者は、


その場で眠ってしまった。


翌朝、


目を覚ました若者は、


ぼんやりと最後の扉を見た。


そして気づいた。


扉には取っ手が付いている。


今までの扉は全て押して開いた。


だから最後も同じだと思い込んでいた。


若者は立ち上がり、


取っ手を引いた。


すると扉は驚くほど軽く開いた。


その先には宝があった。


若者は呆然とした。


自分は力が足りなかったのではない。


やり方を変えていなかっただけだったのだ。


塔を出た後、


若者は多くの人にこの話をした。


しかし皆、


最後の扉の重さばかりを気にした。


すると若者は首を振った。


「大切なのはそこじゃない」


「私は最後まで、


今までの方法が正しいと思い込んでいたんだ」


人々は考え込んだ。


成功のためには努力が必要だ。


だが時には、


努力を増やすことより、


考え方を変えることの方が重要な場合もある。


塔は今日もそこに立っていた。


そして最後の扉は、


新しい挑戦者を静かに待っていた。


---


解釈


人はうまくいかない時、もっと頑張ろう、もっと力を出そうと考えがちです。


しかし問題によっては、努力不足ではなく方法の思い込みが原因であることがあります。


同じやり方を続けて結果が出ないなら、一度立ち止まって視点を変えることも大切です。


この話は、「壁を越える鍵は、力を増やすことではなく、考え方を変えることの中にある場合がある」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#247 遅れて咲く時計草


大きな庭園の片隅に、


さまざまな花が植えられていた。


春になると、


チューリップが咲いた。


続いてバラが咲き、


ラベンダーが香りを広げた。


訪れる人々は、


それぞれの花を褒めた。


ところが庭の隅に植えられた一株だけは、


いつまで経っても花を咲かせなかった。


それは時計草と呼ばれる植物だった。


周囲の花々は次々と咲いている。


それなのに、


時計草は葉を伸ばすばかりだった。


時計草は不安になった。


「私は何か間違っているのだろうか」


隣の花に尋ねた。


「どうして私は咲かないのだろう」


隣の花は答えた。


「もっと早く咲けばいいのに」


別の花も言った。


「私なんて春には咲いたよ」


時計草はますます落ち込んだ。


庭師も毎日様子を見ていたが、


特別なことはしなかった。


水をやり、


土を整えるだけだった。


夏が近づいた。


多くの花はすでに見頃を終えていた。


時計草は焦った。


「もう遅い」


「みんなは咲いたのに」


「私だけ何もできていない」


ある日、


時計草は庭師に尋ねた。


「私は失敗した花なのでしょうか」


庭師は少し笑った。


「誰がそう決めたんだい」


「だって私はまだ咲いていません」


すると庭師は空を見上げた。


「朝日と夕日はどちらが正しいと思う?」


時計草は答えられなかった。


どちらも必要なものだからだ。


「花も同じだよ」


庭師は言った。


「咲く時期が違うだけだ」


それからさらに時が過ぎた。


真夏のある朝、


時計草は初めてつぼみを付けた。


そして数日後、


庭園で誰も見たことのないような花を咲かせた。


複雑で美しい模様。


まるで時計の文字盤のような姿だった。


人々は足を止めた。


「こんな花があったのか」


「今まで気づかなかった」


その頃には、


春の花々はほとんど姿を消していた。


だからこそ時計草は、


庭園の主役になった。


時計草はようやく理解した。


自分は遅れていたのではなかった。


ただ自分の季節が、


まだ来ていなかっただけなのだ。


それから時計草は、


他の花と比べることをやめた。


春の花には春の役目がある。


夏の花には夏の役目がある。


そして自分にも、


自分の時がある。


庭園には今日も花が咲いていた。


それぞれ違う時を生きながら。


---


解釈


人は他人と比べて、自分が遅れていると感じることがあります。


しかし成長や成果の現れる時期は人それぞれです。


誰かの早さを基準にすると、自分の歩みを見失ってしまいます。


この話は、「他人の時計ではなく、自分の時計で成長することが大切である」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#248 風を待つ風車


広い草原の村に、


一基の大きな風車が立っていた。


その風車は村の粉ひきに使われ、


人々の暮らしを支えていた。


風が吹けば羽根は勢いよく回り、


小麦は粉になった。


しかし風が止むと、


風車も静かになった。


ある年、


新しい風車が隣に建てられた。


若く立派な風車だった。


大きな羽根を持ち、


よく目立った。


古い風車は少し気になった。


風が吹くたび、


新しい風車は誰よりも速く回った。


村人たちも褒めた。


「なんて力強いんだ」


「さすが新しい風車だ」


古い風車は次第に自信を失った。


自分は昔ほど速く回れない。


軋む音もする。


ある日、


風のない日が続いた。


草原は静まり返り、


どの風車も動かなかった。


新しい風車は不満そうだった。


「退屈だ」


「何もできない」


だが古い風車は黙って空を見ていた。


数日後、


突然強い嵐がやって来た。


激しい風が草原を吹き抜けた。


新しい風車は喜んだ。


「待っていたぞ!」


羽根は猛烈な速さで回り始めた。


ところが風は強すぎた。


回転はどんどん速くなり、


ついに部品の一つが折れてしまった。


風車は大きな音を立てて止まった。


一方、


古い風車はゆっくりと回っていた。


強風になると、


自然に力を逃がす仕組みが付いていたのだ。


昔の職人が工夫したものだった。


嵐が過ぎた後、


新しい風車は尋ねた。


「なぜ壊れなかったんだ」


古い風車は答えた。


「私は風に勝とうとしなかった」


「風が強い時は、


少し譲ることを覚えたんだ」


新しい風車は黙った。


自分は速く回ることばかり考えていた。


強さとは、


押し返すことだと思っていた。


しかし古い風車は違った。


耐えるべき時と、


力を抜くべき時を知っていたのだ。


その後、


修理された新しい風車は変わった。


風が吹けば回る。


だが無理には回らない。


強風の日には、


少し力を逃がすようになった。


そして何年も経つ頃には、


村で最も長く働く風車になっていた。


村人たちは言った。


「丈夫な風車だ」


だが古い風車は知っていた。


丈夫だったのは木材ではない。


無理をしない知恵だった。


草原には今日も風が吹いていた。


優しい風も、


荒れた風も。


そして風車たちは、


それぞれの速さで静かに回り続けていた。


---


解釈


人は強くあろうとするあまり、常に全力で頑張り続けようとすることがあります。


しかし本当の強さとは、無理を押し通すことではなく、状況に応じて力を抜いたり、譲ったりできることでもあります。


長く続けるためには、耐える力だけでなく、自分を守る知恵も必要です。


この話は、「折れない強さとは、常に踏ん張ることではなく、必要な時にしなやかに力を逃がせることである」という寓話です。


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#249 色を忘れた絵筆


ある町に、


名高い絵描きがいた。


彼の描く絵はどれも美しく、


遠くの国からも人々が見に訪れた。


絵描きには一本の愛用の筆があった。


長年使い続けた筆で、


彼はどんな景色も鮮やかに描いた。


筆もまた、


そのことを誇りに思っていた。


「私は特別な筆だ」


「美しい作品は私が描いているのだ」


そう考えるようになっていた。


ある日、


絵描きは大きな依頼を受けた。


町の広場に飾るための巨大な絵だった。


筆は張り切った。


ところが描き始めると、


妙なことに気づいた。


今日は青色ばかり使われる。


空を描き、


川を描き、


遠くの山を描く。


何日経っても青ばかりだった。


筆は不満になった。


「なぜ他の色を使わないのだ」


「私はもっと華やかな絵を描きたい」


だが絵描きは黙々と作業を続けた。


さらに数日後、


今度は緑色ばかりになった。


草原、


木々、


畑。


どこも緑だった。


筆はいら立った。


「青ばかりだったと思ったら、


今度は緑ばかりか」


「こんな単調な仕事はつまらない」


ついには、


自分は才能を無駄にされているとまで思った。


しかし絵描きは何も言わなかった。


季節が変わる頃、


巨大な絵は完成した。


広場で幕が外されると、


人々は歓声を上げた。


そこには壮大な風景が描かれていた。


青い空。


緑の森。


赤い屋根。


金色の麦畑。


無数の色が調和し、


美しい一枚の絵になっていた。


筆は驚いた。


自分が不満に思っていた青も、


緑も、


全て必要だったのだ。


その夜、


筆は絵描きに尋ねた。


「なぜ最初から全体を見せてくれなかったのですか」


絵描きは笑った。


「見せても理解できなかっただろう」


「一色だけを使っている時には、


誰も完成図を知らないからね」


筆は静かになった。


振り返ると、


自分は目の前の作業だけを見ていた。


なぜこれをするのか。


どんな意味があるのか。


それを知らないまま不満を抱いていたのだ。


それから筆は、


どんな色を使う日でも文句を言わなくなった。


黒だけの日も、


灰色だけの日もあった。


それでも信じていた。


今の一筆は、


まだ見えない大きな絵の一部なのだと。


そしてその考えは、


筆を以前よりずっと穏やかにした。


---


解釈


人は目の前の仕事や経験の意味が分からないと、不満や焦りを感じることがあります。


しかし人生では、今取り組んでいることの価値がすぐには見えない場合も少なくありません。


後になって振り返ると、一見無関係だった経験が大きな成果や成長につながっていることがあります。


この話は、「全体像が見えない時でも、今の積み重ねには意味があるかもしれない」という寓話です。


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#250 砂時計の職人


砂漠の町に、


砂時計ばかりを作る職人がいた。


彼の作る砂時計は評判が良く、


旅人も商人も遠方から買いに来た。


しかし職人には、


少し変わった癖があった。


完成した砂時計をすぐには売らないのだ。


必ず工房の棚に並べ、


何日も眺めていた。


弟子は不思議だった。


「もう完成しています」


「なぜ売らないのですか」


職人は答えた。


「まだ時間を見ていないからだ」


弟子には意味が分からなかった。


砂時計は時間を測る道具だ。


完成しているなら十分ではないか。


ある日、


弟子は自分で砂時計を作った。


ガラスは美しく、


形も整っている。


彼は自信満々で師匠に見せた。


職人は頷いた。


「では棚に置いておこう」


翌日、


職人はその砂時計をひっくり返した。


砂が落ち始める。


最初は順調だった。


だが途中で少し詰まり、


最後には一気に流れ落ちた。


時間は大きくずれていた。


弟子は驚いた。


見た目では全く分からなかったからだ。


職人は言った。


「形を見るだけでは足りない」


「本当に知りたいなら、


時間を通さなければならない」


それから弟子は学んだ。


どんなに美しく見える砂時計でも、


実際に使ってみなければ分からない。


やがて弟子は立派な職人になった。


しかし今度は別のことで悩み始めた。


自分の人生だった。


早く成功したい。


早く認められたい。


そう思うたびに焦っていた。


ある夕方、


年老いた師匠が尋ねた。


「お前はなぜ急ぐ」


弟子は答えた。


「早く結果を出したいからです」


職人は静かに笑った。


そして一つの砂時計を手渡した。


「これを見なさい」


砂は一定の速さで落ちていた。


速くもなく、


遅くもない。


ただ静かに流れていた。


「砂時計は、


上の砂を一気に落とそうとはしない」


「一粒ずつ落ちるから、


正しく時を刻める」


弟子はその言葉に考え込んだ。


振り返れば、


技術も知識も信頼も、


全て少しずつ積み重なってきた。


一日で身についたものは何一つなかった。


それから弟子は焦ることをやめた。


目の前の一日を丁寧に過ごした。


すると不思議なことに、


以前より多くのことが身についた。


数十年後、


彼もまた職人となり、


若い弟子にこう語った。


「時間を味方にした者は強い」


「なぜなら時間は、


急ぐ人ではなく、


積み重ねる人に力を貸すからだ」


工房の棚には、


静かに砂の落ちる音が響いていた。


誰にも聞こえないほど小さな音だったが、


確かに未来を作っていた。


---


解釈


人は早く結果を出そうとして焦ることがあります。


しかし多くの成長や成果は、一気に生まれるものではなく、小さな積み重ねによって形作られます。


目立つ成功の裏には、長い時間をかけた地道な継続があります。


この話は、「大きな成果は特別な一日ではなく、積み重ねた一日の集合によって生まれる」という寓話です。


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