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寓話 人生の教訓を描いた短い物語  作者: トワイライト


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第5回(#21~#25)

#21 地平線を追う男


ある男は、子どもの頃から地平線に憧れていた。


遠くに見える、空と大地が交わる場所。


そこまで行けば、きっと何か特別なものがある。


男はそう信じていた。


大人になると旅に出た。


毎日歩いた。


山を越え、


川を渡り、


砂漠を進んだ。


だがどれだけ歩いても、地平線は遠ざかる。


男は諦めなかった。


「もう少しだ」


「あと少しで着く」


そう言いながら歩き続けた。


何十年も。


やがて老人になった。


足は弱り、


目もかすんでいた。


それでも男は歩いた。


すると道端で遊んでいた子どもが尋ねた。


「おじいさん、どこへ行くの?」


男は答えた。


「地平線の向こうだよ」


子どもは不思議そうな顔をした。


「でも地平線は逃げるよ」


男は笑った。


「知っている」


「じゃあ、なんで追いかけるの?」


男は少し考えた。


そして振り返った。


そこには今まで歩いてきた道が続いていた。


山も。


川も。


町も。


出会った人々も。


男は初めて気づいた。


自分は一度も地平線に辿り着いていない。


だが、地平線を追ったからこそ、


ここまで来ることができたのだと。


男は子どもに言った。


「地平線は目的地じゃない」


「歩き出す理由なんだ」


---


解釈


人生には、到達できない目標があります。


理想の自分。


完全な幸福。


究極の答え。


それらは手に入らないかもしれません。


しかし、人はそうした理想を追いかけることで成長し、前へ進みます。


この話は、達成よりも追求そのものに価値があることを描いた寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#22 何も描かれていない地図


ある国の王は、世界一正確な地図を求めていた。


学者たちは集められ、


何年もかけて地図を作った。


山。


川。


町。


森。


すべてが細かく描き込まれていた。


王は満足しなかった。


「まだ不正確だ」


さらに調査が行われた。


一本の道。


一本の木。


一軒の家。


すべてが地図に記された。


だが王は首を振った。


「まだ足りない」


学者たちは悩んだ。


そして何十年もの研究の末、


ついに新しい地図を完成させた。


王は期待して広げた。


そこには何も描かれていなかった。


真っ白だった。


王は激怒した。


「ふざけるな!」


学者たちは静かに答えた。


「陛下は完璧な地図を望まれました」


「そうだ」


「世界は常に変化しています」


「木は育ち、人は移動し、川は流れを変えます」


王は黙った。


学者は続けた。


「描いた瞬間に、その地図は過去になります」


「だから完璧な地図は存在しません」


「唯一正確なのは、まだ何も描かれていない地図だけです」


王は白紙を見つめた。


そこには何もなかった。


しかし初めて、


世界そのものより正確な地図を見た気がした。


---


解釈


人は物事を完全に理解したいと思います。


しかし現実は常に変化しており、


どんな知識も説明も、得た瞬間から少しずつ古くなっていきます。


完璧な理解を求めることは大切ですが、


「すべてを知ることはできない」という事実を受け入れることもまた知恵なのかもしれません。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#23 答えの図書館


ある町に、不思議な図書館があった。


その図書館には、あらゆる質問の答えが書かれた本が収められていると言われていた。


人生の意味。


宇宙の始まり。


未来の出来事。


どんな疑問にも答えがある。


ある青年は興味を持ち、その図書館を訪れた。


受付で尋ねる。


「人生の意味を知りたいんです」


司書はうなずき、一冊の本を渡した。


青年は震える手で本を開いた。


そこには確かに答えが書かれていた。


だが青年は首をかしげた。


意味が分からなかった。


司書に聞く。


「難しすぎます」


司書は別の本を渡した。


今度はもっと分かりやすかった。


だが読み終えると、また疑問が生まれた。


司書はさらに本を渡した。


青年は何年も図書館に通った。


疑問が生まれるたびに本を読む。


答えを知るたびに新しい問いが生まれる。


やがて老人になった。


本棚のほとんどを読み尽くしていた。


ある日、司書が最後の一冊を差し出した。


青年は老人になった手でページを開く。


そこには一文だけ書かれていた。


「これ以上の答えはありません」


老人は笑った。


長年探してきた終着点だった。


しかし本を閉じた瞬間、


新しい疑問が頭に浮かんだ。


「なぜ、これ以上の答えはないのだろう?」


司書は微笑んだ。


「だから、この図書館は終わらないのです」


---


解釈


人は答えを求めます。


しかし多くの場合、答えは疑問を終わらせるのではなく、新しい疑問を生み出します。


知識とは終点ではなく連鎖です。


この話は、「問い続けること」そのものが人間の本質かもしれない、という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#24 同じ本


ある町の図書館には、一冊しか本がなかった。


棚も一つ。


本も一冊。


それだけだった。


旅人は驚いた。


「これで図書館なのか?」


司書はうなずいた。


「はい」


旅人は本を開いた。


そこには冒険譚が書かれていた。


海を渡り、財宝を探す物語だった。


なかなか面白かった。


翌年、旅人は再び町を訪れた。


ふと思い出し、図書館へ向かう。


相変わらず本は一冊だけだった。


旅人は笑った。


「またあの冒険譚か」


だが開いてみると、今度は恋愛小説だった。


旅人は首をかしげた。


「本を入れ替えたのか?」


司書は首を振った。


「同じ本です」


数年後。


旅人は老人になっていた。


再び図書館を訪れる。


本を開く。


今度は老人の人生を描いた物語だった。


まるで自分のことのようだった。


老人は司書に尋ねた。


「これは一体何の本なんだ?」


司書は答えた。


「あなたは毎回、同じ本を読んでいます」


老人は笑った。


「そんなはずはない」


「内容が全部違うじゃないか」


司書は静かに言った。


「違うのは本ではありません」


「読んでいる人です」


老人は本を見つめた。


若い頃には冒険に見えた。


大人になると恋愛に見えた。


老いてからは人生そのものに見えた。


本はずっと同じだった。


変わり続けていたのは、自分だった。


---


解釈


同じ出来事でも、年齢や経験によって受け取り方は変わります。


本や映画、思い出が昔と違って見えるのは、作品が変わったからではなく、自分が変わったからです。


この話は、人が世界を見ているようで、実は自分自身を見ているのかもしれないという寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#25 最後のページ


ある国には、一冊だけ特別な本があった。


その本には、その人の人生がすべて書かれているという。


生まれた日から死ぬ日まで。


出会う人。


成功。


失敗。


すべてだ。


だが誰も読もうとはしなかった。


結末を知ってしまえば、人生がつまらなくなるからだ。


ある青年だけは違った。


彼はどうしても気になった。


自分はどんな人生を送るのか。


何になるのか。


幸せになれるのか。


迷った末に、本を開いた。


しかし最初のページは読まなかった。


途中も読まなかった。


最後のページだけを見た。


そこには一文だけ書かれていた。


**「彼は納得して本を閉じた」**


青年は困惑した。


それだけだった。


成功したのか。


失敗したのか。


何も分からない。


だが不思議と安心した。


未来は分からないままだったが、


最後に納得できるなら悪くないと思えた。


それから青年は人生を生きた。


成功もした。


失敗もした。


後悔もした。


何度も自分の人生を嫌になった。


それでも時々、あの一文を思い出した。


そして長い年月が流れた。


老人になった彼は、再び本を開いた。


今度は最初から最後まで読もうと思った。


しかし本を開いた瞬間、気づいた。


自分はもう内容を知っていた。


それは本に書かれていたからではない。


自分で生きてきたからだった。


老人は笑った。


そして静かに本を閉じた。


---


解釈


人は未来を知りたがります。


しかし人生の価値は、結末ではなく、その過程にあります。


どんな人生だったかを決めるのは未来の出来事ではなく、


最後に自分がどう受け止めるかです。


この話は、「良い人生」とは成功した人生ではなく、納得できる人生なのかもしれない、という寓話です。

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