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寓話 人生の教訓を描いた短い物語  作者: トワイライト


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14/103

第14回(#66〜#70)

#66 雲を追う少年


ある少年は、空を眺めるのが好きだった。


特に雲を見ることが好きだった。


大きな雲。


小さな雲。


珍しい形の雲。


少年は毎日、気に入った雲を追いかけた。


「あの雲の向こうには何があるんだろう」


そう思って走り続けた。


しかし、


雲はいつも遠ざかっていった。


少年は悔しかった。


「もっと速く走れば追いつけるはずだ」


何年も走り続けた。


大人になっても、


少年は雲を追っていた。


ある日、


疲れ果てた男は丘の上で休んだ。


すると、


隣にいた老人が言った。


「ずっと何を追いかけているんだ?」


男は空を指した。


「雲です」


老人は空を見上げた。


そして笑った。


「雲は追いかけるものではない」


「見上げるものだ」


男は黙った。


初めて立ち止まり、


ゆっくり空を眺めた。


雲は追いかけなくても、


風に乗って形を変えながら流れていた。


大きくなったり。


消えたり。


また現れたり。


男は気づいた。


自分は雲を見るために走っていたのに、


走ることに夢中で、


一度も雲を楽しんでいなかった。


それから男は、


歩きながら空を見るようになった。


---


解釈


人は目標や理想を追いかける中で、達成することばかりに集中してしまうことがあります。


しかし、目的に向かう過程そのものにも価値があります。


急いで手に入れようとするだけではなく、今見えている景色を楽しむことも大切です。


この話は、「追いかけることに夢中になると、本当に見たかったものを見失うことがある」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#67 鏡を磨く男


ある男は、古い鏡を持っていた。


その鏡には不思議な力があり、


映った人の本当の姿を見せると言われていた。


男は毎日、その鏡を磨いた。


少しの汚れも許さない。


少しの曇りも残さない。


「鏡がきれいなら、正しい自分が見える」


そう信じていた。


何年も磨き続けた。


鏡は誰よりも美しくなった。


ある日、


男は鏡を覗き込んだ。


しかし、


そこに映った顔を見て驚いた。


疲れた表情。


険しい目。


不満そうな顔。


男は怒った。


「こんなはずではない」


「鏡が間違っている」


男はさらに強く磨いた。


朝も。


夜も。


鏡が傷つくほど磨いた。


すると鏡は割れてしまった。


男は落ち込んだ。


その時、


近くにいた老人が言った。


「なぜ鏡ばかり磨いたんだ?」


男は答えた。


「正しい自分を見るためです」


老人は割れた鏡を拾った。


「鏡は姿を変えるものではない」


「映しているものを教えるものだ」


男は黙った。


初めて、


鏡ではなく自分自身を見つめた。


そして少しずつ、


表情を変えていった。


---


解釈


人は問題の原因を外側に求めることがあります。


環境や周りの人を変えようとしても、自分自身が変わらなければ見える景色は変わりません。


大切なのは、現実を映すものを壊すことではなく、自分と向き合うことです。


この話は、「変えるべきものは外側ではなく、自分の内側にあることがある」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#68 音のない鐘


ある村に、大きな鐘があった。


その鐘は昔から、


村に大切な知らせを伝える役目を持っていた。


朝を知らせる鐘。


祭りを知らせる鐘。


危険を知らせる鐘。


村人たちはその音を頼りに暮らしていた。


ある日、


鐘を鳴らす塔が古くなり、


鐘は音を出さなくなった。


村人たちは困った。


「もうこの鐘には価値がない」


「新しい鐘に変えよう」


そう話し合った。


しかし、一人の老人だけは反対した。


「もう少し待ってみよう」


村人たちは不思議に思った。


「音が出ない鐘に何の意味があるのですか?」


老人は答えた。


「昔、この鐘は何百年も村を見守ってきた」


「音がなくなっても、その時間まで消えるわけではない」


数日後、


村の子どもたちが鐘の周りで遊び始めた。


鐘に触れる。


模様を見る。


昔の話を聞く。


村人たちは思い出した。


この鐘は音だけの存在ではなかった。


多くの人の記憶や時間を刻んできたのだ。


村人たちは鐘を修理した。


そして再び音が鳴った。


しかし今度は、


音を聞くためだけではなく、


そこに込められた歴史も大切にするようになった。


---


解釈


人は役に立つかどうかだけで価値を判断してしまうことがあります。


しかし、価値は機能だけで決まるものではありません。


そこに込められた思い出や経験も、目には見えない大切な価値になります。


この話は、「役割を失ったものにも、存在した意味は残り続ける」という寓話です。


■■■■■■■■■■■■■■■■


#69 砂時計を逆さにする男


ある男は、古い砂時計を持っていた。


その砂時計は不思議な力を持っていた。


逆さにすると、


過ぎた時間を少しだけ戻すことができるのだ。


男は最初、


小さな後悔を直すために使った。


言い過ぎた言葉を取り消す。


失敗した選択をやり直す。


忘れ物を取りに戻る。


男は満足した。


「これがあれば、間違いのない人生を送れる」


そう思った。


しかし、


何度も時間を戻すうちに、


男は大切なことに気づいた。


過去を変えるたびに、


そこで出会った人との思い出も変わってしまう。


失敗から学んだことも消える。


苦しんだ時間もなくなる。


ある日、


男は大きな失敗をした。


砂時計を手に取った。


そして逆さにしようとした。


しかし、手が止まった。


その失敗があったからこそ、


今の自分がいると気づいたからだ。


男は砂時計を棚に戻した。


それからは、


後悔を消すためではなく、


後悔から何を学ぶかを考えるようになった。


やがて砂時計は古くなり、


砂は落ちなくなった。


しかし男は、


もう時間を戻したいとは思わなかった。


---


解釈


人は過去の失敗や後悔をなかったことにしたいと思うことがあります。


しかし、失敗や遠回りも含めて、今の自分を作っている大切な経験です。


過去を変えることよりも、過去から何を得るかが未来を変えます。


この話は、「後悔は消すものではなく、成長へ変えるもの」という寓話です。


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#70 名前のない木


ある森に、大きな木があった。


その木は何百年も生きていた。


しかし、


他の木と違うところがあった。


名前がなかったのだ。


周りの木には、


立派な名前がついていた。


美しい花を咲かせる木。


珍しい実をつける木。


薬になる木。


人々は名前のある木ばかり見に来た。


名前のない木の前を通っても、


誰も足を止めなかった。


木は寂しく思った。


「自分には特徴がない」


「存在する意味がないのかもしれない」


ある日、


一人の旅人が木の下で休んだ。


旅人は言った。


「この木は落ち着くな」


木は驚いた。


「私には何もありません」


すると旅人は笑った。


「だからこそ、ここに来る人は自由に感じられる」


「名前や役割が決まっていないから、自分の感じ方で見ることができる」


木は初めて気づいた。


自分には、


特別な花も。


珍しい実もない。


しかし、


長い年月そこに立ち続け、


多くの人に木陰を与えていた。


それから木は、


名前がないことを気にしなくなった。


ただ静かに、


そこにあり続けた。


---


解釈


人は周りと比べて、自分だけの特徴や価値を探そうとします。


しかし、目立つ才能や特別な役割がなくても、存在そのものが誰かの支えになることがあります。


価値は名前や評価によって決まるものではありません。


この話は、「特別でなくても、そこにいる意味は存在する」という寓話です。


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