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婚約破棄されたので定時退社します ~追放された宮廷魔法師は隣国で溺愛されて最強になりました~  作者: 渚月(なづき)


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第1話 終わりの鐘が鳴る前に

魔法省の廊下は、いつも薄暗い。

けれど今日は、その暗さが妙に肌に馴染んだ。


婚約破棄の書状は、驚くほどあっさりしていた。

蝋で封をされた羊皮紙一枚。差出人は王太子殿下。


理由は「能力不足および王家への貢献の欠如」。


(……ああ、そう来たか)


私が三年かけて設計した防御魔法陣。

あの論文の著者欄から、いつの間にか私の名前は消えていた。


知っていた。気づいていた。

証拠を揃えるまでは動かないと決めていた。

なのに──先に切られた。


研究室の鍵を返し、荷物をまとめる。

手帳だけは胸ポケットに入れた。三年分の記録が詰まった、私だけの手帳。


正門を出ると、夕刻の風が頬を撫でた。

足元で白銀の小さな塊が、靴にすり寄る。ルル。唯一ついてきてくれた存在。


さて。定時退社だ。

もう残業する義理はない。


国境の向こうに、小さな公国があると聞く。


一歩を踏み出す。振り返らない。


──けれど、振り返る必要がなくなる日が来るとは、このとき思ってもいなかった。


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