表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 天城ハルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/12

第8話 最低ランクの補助

 冒険者ギルドの空気は、学園とはまるで違っていた。


 酒と汗と鉄の匂い。

 怒号と笑い声が入り混じり、秩序よりも現実が優先される場所。


「――次、登録完了。新人だな?」


 受付嬢が、俺の冒険者証をカウンター越しに差し出す。


 ランクは、当然のように最低位。

 名前の横に刻まれた等級を見て、周囲の冒険者たちが一瞬だけ視線を向け、すぐに興味を失った。


「補助職か」

「珍しいな」


 誰かがそう呟いたが、声に期待はない。


「戦えない補助は、基本的に固定パーティ向けです」

 受付嬢は事務的に説明する。

「単発依頼だと、敬遠されがちですが……」


「大丈夫です」


 俺は頷いた。


「指示と調整ができます」

「前に出る必要はありません」


 その言葉に、受付嬢はわずかに首を傾げた。


「……分かりました」

「では、こちらの依頼を」


 差し出されたのは、簡単な依頼票だった。


 ――《薬草採取/危険度:低》

 ――《新人向け》


(まあ、最初はこんなものか)


 内容を確認し、受注する。


 集合場所はギルド前。

 時間になると、二人組の冒険者が現れた。


「俺が前衛のガルド」

「後衛のミーナよ」


 二人とも、まだ若い。

 装備も使い込まれているが、上質とは言えない。


 彼らは俺を見ると、少しだけ戸惑った表情を浮かべた。


「……補助?」

「薬草採取に?」


 正直な反応だ。


「戦えません」

 俺は先に言った。

「その代わり、危険を避ける指示は出せます」


 ガルドは一瞬考えてから、肩をすくめる。


「まぁ、人数増える分にはいいか」

「足引っ張らなきゃな」


 その言葉に、俺は苦笑する。


「それだけは、気をつけます」


 森へ向かう道すがら、俺は自然と二人の歩幅や癖を観察していた。


 ガルドは前に出たがる。

 ミーナは魔力管理が甘い。

 索敵は雑だが、反応は悪くない。


(……修正すれば、十分回る)


「この先、左の茂みは避けた方がいい」

「地面が柔らかい。魔物が潜んでる可能性が高い」


 俺がそう言うと、ガルドは少し驚いた顔をした。


「……分かるのか?」


「可能性の話です」

「右から回りましょう」


 結果として、遭遇戦は一度も起きなかった。


 薬草も効率よく集まり、予定より早く作業が終わる。


「……あれ?」

 ミーナが首を傾げる。

「いつもなら、もっと危ない目に遭うんだけど」


「運が良かったんだろ」


 ガルドはそう言ったが、その表情にはわずかな疑問が残っていた。


 帰路、俺はほとんど指示を出していない。

 出す必要がなかったからだ。


 ギルドに戻り、依頼完了。


 報酬は少ない。

 だが、二人の様子は行きよりも明らかに軽い。


「……なぁ、アレン」

 ガルドが言う。

「次も一緒に来ないか?」


「え?」


「正直、楽だった」

「何も起きなかったし」


 その言葉に、胸の奥が少しだけ温かくなる。


「……構いません」


 そう答えながら、思った。


(学園と同じだ)


 勝てている。

 無傷だ。

 でも、理由はまだ理解されていない。


 それでいい。


 今はまだ、

 最低ランクの補助で。


 俺は、自分の冒険者証を見つめる。


 この小さな依頼の積み重ねが、

 どこへ繋がっていくのか。


 その時は、まだ誰も知らなかった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ