第7話 学園を出る日
学園の正門は、思っていたよりも重々しかった。
高い石造りの門。
紋章が刻まれ、威圧感すらあるそれを、俺は一人でくぐる。
見送りはいない。
引き止める声もない。
それが、この学園での俺の評価だった。
(……静かだな)
外に出ると、街の音が一気に流れ込んでくる。
馬車の走る音。
商人の呼び声。
生活のざわめき。
学園の中とは、まるで別の世界だ。
少しだけ、足が止まる。
不安がないわけじゃない。
この先、何をすればいいかも決まっていない。
けれど――
(ここに残るよりは、ずっといい)
それは、はっきりしていた。
学園では、俺は「評価しづらい存在」だった。
役に立っていても、それが証明できない。
だが、外の世界は違うかもしれない。
結果がすべて。
生き残れるかどうか。
そのシンプルさが、今は心地よかった。
街を歩きながら、自然と考えてしまう。
(戦えない俺に、何ができる?)
答えは、すぐには出ない。
けれど、学園で過ごした日々が無意味だったとは思わない。
人の動き。
戦場の流れ。
判断の重み。
それらは、確かに身についている。
「……まずは、仕事だな」
目指すのは、冒険者ギルド。
学園の推薦はない。
ランクも、実績もゼロ。
それでも、やるしかない。
建物の前に立ち、深呼吸を一つ。
扉を開けると、カウンターの向こうで受付嬢が顔を上げた。
「いらっしゃいませ。ご用件は?」
「冒険者登録を」
自分でも驚くほど、声は落ち着いていた。
「身分証はお持ちですか?」
「はい」
書類を出すと、受付嬢は手際よく確認する。
「……学園出身、ですか」
「補助職……戦術補佐?」
一瞬、視線が止まる。
ああ、やっぱりそうだ。
戦えない補助は、歓迎されない。
「登録は可能ですが」
彼女は淡々と告げる。
「最初は最低ランクからになります」
「依頼も、簡単なものだけになりますが――」
「構いません」
即答だった。
「できることから、始めます」
受付嬢は少しだけ驚いた顔をしてから、頷いた。
「では、こちらにサインを」
ペンを握り、名前を書く。
アレン・クロウ
その文字を見て、ふと笑ってしまう。
(ここから、やり直しだ)
いや、違う。
やり直しじゃない。
続きだ。
学園では評価されなかった。
だからといって、無価値だったわけじゃない。
この世界が、それをどう判断するか。
それを、これから確かめる。
登録証を受け取り、ギルドを出る。
空を見上げると、雲ひとつない青空が広がっていた。
「……行こうか」
誰に言うでもなく呟いて、歩き出す。
この先で待っているのは、
評価でも、称賛でもないかもしれない。
だが――
必要とされる場所が、きっとどこかにある。
そう信じて。
――こうして、
評価外だった学園戦術補佐の成り上がりは、
静かに幕を開けた。
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