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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第53話 記録に残すもの

 魔物の流れは、三日目の夜に弱まった。


 完全に消えたわけではない。

 だが、揃っていた動きは崩れ、散発的な影へ戻りつつある。


 城壁の上で、参事が言った。


「……山は越えましたか」


「峠は越えました」

 俺は答える。

「下り切るまでは、まだ分かりません」


 断定はしない。

 だが、街の空気は明らかに変わっていた。


 翌朝、参事は広場に人を集めた。


「今回の件について」

 静かな声が響く。

「判断の経緯を、記録します」


 ざわめきが起きる。


「責任を、残すためです」

「成功も、失敗も」


 騎士団長が腕を組む。


「報告書か」


「違います」

 参事は首を振る。

「次の判断のための材料です」


 机が運び込まれ、紙が置かれる。


 区画ごとに、担当者が前に出る。


「第一区画、移動開始時刻――」

「第三区画、避難判断遅延――」


 失敗も、隠さない。


 数名の死者の名も、記される。


 広場の空気は重い。

 だが、逃げない。


 参事が、最後に言う。


「この記録に、特定の名は残しません」


 視線が、こちらに向く。


「判断は、街のものです」


 俺は何も言わない。


 それでいい。


 夕方。


 記録帳は簡素な革表紙に綴じられた。


 題はない。

 日付だけが書かれている。


「あなたの名も、書きません」


 参事が確認する。


「不要です」


 即答。


「理由だけがあれば、十分です」


 参事は、深く頷いた。


「……残すのは、正解ではなく」

「過程、ですね」


「ええ」


 森のざわめきは、さらに弱まっている。


 完全に終わったわけではない。

 だが、街はもう、次を考えている。


 夜。


 宿の窓から広場を見る。


 灯りの下で、若い兵士が記録帳を写している。


 誰に命じられたわけでもない。


 判断は、共有され始めている。


 俺は、荷物をまとめる。


 ここでやることは、もう多くない。


 魔物が消えれば、

 俺はただの冒険者に戻る。


 それでいい。


 残るのは、

 名前ではない。


 **判断の痕跡だ。**

ここまでご覧いただきありがとうございます。


あと数話で完結となります。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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