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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第49話 同じ形の違い

 報せは、昼過ぎに届いた。


「北西のラド区が、分割避難を実施しました」


 参事の声は落ち着いている。

 だが、机の上の指先がわずかに強張っていた。


「独自判断、ですか」


「ええ」

「こちらの成功を聞いて、すぐに」


 ラド区は、森と丘に挟まれた小地区だ。

 街道は細く、逃げ道は限られている。


 俺は地図を広げた。


「区画は?」


「二分割です」

「森側を空け、住民を丘側へ」


 形だけを見れば、似ている。


「地形は?」


「……袋状です」


 丘に囲まれ、出口は一つ。


「報告は?」


 参事が目を伏せる。


「魔物が丘側へ回り込みました」

「退路が狭く、混乱が出たと」


 静かな部屋に、外の喧騒が遠く響く。


「死者は」


「数名」


 短い沈黙が落ちた。


 騎士団長が、低く言う。


「同じことをしただけだ」


「形は、同じです」


 俺は否定しない。


「では、何が違う」


「出口です」


 地図に指を置く。


「こちらは三方向に流せました」

「ラド区は一方向です」


 団長は歯噛みする。


「なら、事前に言うべきだった」


「求められていません」


 それ以上でも、それ以下でもない。


「同じやり方が通じると?」

 参事が、静かに問う。


「通じません」


 即答だった。


「同じ形でも」

「条件が違えば、意味も変わります」


 部屋が静まり返る。


「……あなたのやり方は」

 参事が言葉を選ぶ。

「再現できないのですね」


「再現するものではありません」


 責めるでもなく、慰めるでもなく。


 ラド区の死者は戻らない。


 だが、それを

 “正解の誤用”にしてはならない。


「判断は」

 俺は静かに続ける。

「借りられます」

「ですが、責任は借りられません」


 参事が、ゆっくりと頷いた。


 夕刻。


 ラド区の煙が、遠くに見える。


 被害は限定的だ。

 壊滅ではない。

 だが、確かに失われた。


 城壁の上で、参事が呟く。


「成功の形だけが、先に走る」


「ええ」


「止められませんか」


 俺は、首を横に振る。


「止めるのも、判断です」


 誰かが真似る。

 誰かが間違える。

 それもまた、選択の結果だ。


 森の奥では、まだ影が動いている。


 街は、立っている。


 だが、

 **同じ形が、同じ結果を生むわけではない。**


 それだけは、

 はっきりと示された。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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