第47話 早すぎる剣
決断は、会議の外で下された。
翌朝、森の縁から火の手が上がった。
「騎士団が出ました!」
城門へ駆け込んできた兵が叫ぶ。
若手騎士団長が、独断で部隊を率いたのだ。
参事が、わずかに目を閉じる。
「止められませんでしたか」
「進言はしましたが……」
伝令は、悔しそうに歯を食いしばる。
「“今なら勝てる”と」
勝てる。
その言葉は、間違いではない。
森に集まり始めていた魔物は、まだ小規模だ。
迎撃は十分可能。
被害も限定的だろう。
だが。
「……勝ちました」
正午前、報告が届く。
「損害、軽微」
「魔物群、撃退」
城壁の上で歓声が上がる。
参事は、こちらを見た。
「結果としては、正しかったのでは?」
俺は、森の奥を見つめたまま答える。
「戦闘があった場所は、どこですか」
「街道沿いです」
「……そうですか」
風向きが変わっていた。
焦げた匂いと血の匂いが、森の奥へ流れていく。
「勝ったことで」
俺は、静かに言う。
「目立ちましたね」
参事が、わずかに息を呑む。
夕方。
斥候が戻る。
「魔物の動きが変わりました」
「散っていた群れが、街道方向へ寄っています」
城壁の空気が、重くなる。
若手騎士団長が、苛立ちを隠さず言う。
「集まるなら、叩けばいい」
「数が増えれば?」
参事が問う。
「増える前に叩く」
正論だ。
だが、連鎖は止まらない。
「いまの時点で」
俺は、淡々と言う。
「勝敗の問題ではありません」
団長が睨む。
「どういう意味だ」
「勝ったことで」
森に視線を向ける。
「この街が“ある”と示しました」
沈黙。
「魔物は、理由で動きません」
「刺激で動きます」
団長は、言い返せない。
夜。
街道に、遠く黒い影が見え始める。
数はまだ読めない。
だが、明らかに増えている。
参事が、低く言った。
「……早すぎましたか」
「いえ」
否定する。
「早かったからこそ、まだ選べます」
「何を」
俺は、地図を広げる。
「分けましょう」
全面ではない。
一部でもない。
“戦った区画”を空ける。
「今なら、まだ間に合います」
勝利は、間違いではない。
だが、
**勝ったことで動き出したもの**がある。
その流れを読むか。
もう一度、剣で止めに行くか。
判断は、街のものだ。
俺は、結論を言わない。
ただ、
次の手を、並べるだけだった。
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