第44話 依頼が来ない街
最初に違和感を覚えたのは、三日後だった。
掲示板の前に立っても、
目が止まらない。
(……少ないな)
依頼そのものは、出ている。
だが、
特定の地域からのものが、抜け落ちていた。
「……気づきました?」
フィオナが、小声で言う。
「南東の街、レイハルト」
「西の農業都市、ミルド」
「どちらも、依頼が止まっています」
「……以前は?」
「頻繁でした」
「特に、護送や巡回」
理由は、分かっている。
国家補助。
それが、絡む地域だ。
数日後、答え合わせはあっさり来た。
小商人の一人が、酒場でぼやいていた。
「ギルドに頼みたかったが」
「国から言われてな」
「“判断が読めない冒険者は避けろ”ってさ」
悪意はない。
むしろ、困っている様子だった。
「補助が切られるのは、困る」
「街としては、選べんよ」
それが、現実だった。
夕方。
ギルドの奥で、フィオナが資料をまとめている。
「……依頼が来ない街が、増えています」
「選択の結果ですね」
「はい」
沈黙。
「……後悔は、ありませんか?」
彼女の問いは、
心配ではなく、確認だった。
「ありません」
即答だった。
「俺を選ばない判断も、正しい」
それが、建前ではないことは、
彼女にも伝わったらしい。
「……でも」
フィオナは、少しだけ視線を落とす。
「助けられない人が、出ます」
「ええ」
それは、否定できない。
「それでも」
続ける。
「無理に関われば」
「別の歪みが生まれます」
沈黙が、落ちる。
その夜。
一通の手紙が、宿に届いた。
封は、簡素。
差出人は、
見覚えのある自治都市だった。
国の補助は、ありません
それでも、依頼したい
判断は、あなたに任せます
短い文面。
条件も、保証もない。
だが。
(……来たな)
選ばれなかった街がある。
同時に――
選んできた街も、ある。
俺は、手紙を折りたたむ。
国家に守られない場所。
だが、
判断が必要な場所。
次の舞台は、
もう決まっていた。
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