第43話 距離を取るという判断
翌日から、変化は数字に表れた。
国家案件の掲示が、減った。
正確には――
俺の名前が、そこから消えた。
「……最近、国家系の依頼、回ってきませんね」
フィオナが、事務机の書類を整理しながら言う。
「意図的、ですね」
「でしょうね」
驚きはなかった。
断った以上、想定内だ。
「代わりに」
彼女は、別の束を示す。
「自治都市や辺境領からの依頼が、増えています」
国家直轄ではない場所。
判断が現場に委ねられる地域。
(……逃げ道も、用意されてる)
完全な排除ではない。
だが、
中央からは距離を取られた。
その頃、王都。
同じ議題が、別の部屋で扱われていた。
「囲い込みは、失敗だな」
「強く出れば、対立する」
「緩くすれば、意味がない」
結論は、早かった。
「……当面、距離を取る」
「記録上は?」
副官が尋ねる。
「“協力実績あり・現在は自主活動中”」
「危険度、中」
便利な分類だった。
「監視は?」
「継続」
「だが、接触は最小限に」
それが、国家の判断だった。
一方、現場では。
「……国の仕事、来なくなったな」
冒険者の一人が、何気なく言う。
「その方が、助かるって話もあるけどな」
「面倒な制約、多いし」
笑い話のように流れる。
だが、
その裏で、影響は確実に出始めていた。
国家補助が減る。
物資支援が遅れる。
小さな不便が、積み重なる。
(……これが、代償か)
自由の裏側。
夕方。
フィオナが、真剣な顔で言う。
「アレンさん」
「一部の街では……」
言葉を切る。
「あなたが関わるなら、国家補助が下りにくくなる、と」
それは、圧力ではない。
だが、
選別だ。
「……だから」
彼女は、慎重に続ける。
「あなたに依頼するか、迷っている街もあります」
「それでいい」
即答だった。
「選ぶのは、向こうです」
無理に関わるつもりはない。
夜。
ギルドの外で、空を見上げる。
星は、変わらない。
国家に近づけば、守られる。
離れれば、自由になる。
どちらが正しいかではない。
ただ、
同時には選べない。
その現実が、
ようやく形になった。
(……ここからだな)
中央を離れた場所。
判断が、結果に直結する場所。
そこに、
次の舞台がある。
国家は距離を取った。
だが、
現場は、まだ近い。
それで、十分だった。
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