表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/55

第41話 本音の条件

 三日目の朝。


 ギルドに、再び使者が来た。


 前回と同じ男。

 だが、今日は回りくどさがない。


「……お時間をいただけますか」


「はい」


 場所は、ギルドの奥の応接室。


 扉が閉まると同時に、男は書類を一枚、机に置いた。


「これが」

 一拍置いて言う。

「国家としての、正式な条件です」


 紙面に並ぶ文字を、静かに追う。


・任務期間中の行動報告義務

・判断内容の逐次記録

・国家監督官の最終承認

・緊急時における指揮権の一時委譲


 最後の一文で、指が止まった。


「……指揮権?」


「形式上です」

 男は、即答する。

「責任の所在を明確にするための措置です」


 形式上。

 責任。


 聞き慣れた言葉だ。


「判断は、私が行う」

「責任は、国家が負う」


 男は、そう言い切った。


「それは」

 俺は、視線を上げる。

「私の判断を、国家が使うという意味ですね」


「……そうなります」


 否定はしなかった。


「報酬も、増額されています」


「報酬は、問題ではありません」


 それも、本音だった。


「問題は」

 続ける。

「判断の自由が、なくなることです」


 男は、少しだけ眉を寄せる。


「自由と責任は、両立しません」


「そうですね」


 俺は、頷いた。


「だからこそ」

 言葉を続ける。

「責任を負う覚悟のない自由は、選びません」


 一瞬、男の表情が曇る。


「……では、なぜ保留を?」


「自由を守るためです」


 即答だった。


 沈黙が、落ちる。


 やがて、男は深く息を吐いた。


「正直に言います」

「あなたの判断は、危険です」


「どの点が?」


「再現性がない」

「属人性が高すぎる」


 それは、これまで何度も聞いた指摘だ。


「だから」

 男は、静かに言う。

「国家の枠に入ってもらう必要がある」


「枠に、ですか」


「ええ」

「管理できなければ、使えない」


 それが、本音だった。


「……一つ、質問があります」


「どうぞ」


「この条件を受けた場合」

「私は、現場の判断を変えなければなりませんか?」


 男は、少し考えた。


「……はい」

「国家判断を、優先していただくことになります」


 その答えで、

 すべてが揃った。


 俺は、書類を閉じる。


「返答は?」


 男が、促す。


「……まだです」


 男の目が、わずかに細くなる。


「期限は、本日中です」


「分かっています」


 それでも、即答はしない。


「私は」

 最後に、はっきり言った。

「判断を、預けるつもりはありません」


 拒否ではない。

 だが、

 譲歩でもない。


 男は、何も言わず立ち上がった。


「では」

「結論を、お待ちします」


 扉が閉まる。


 部屋に残された俺は、椅子にもたれた。


(……これが、本音か)


 丁寧さの裏にあったもの。


 善意でも、敵意でもない。


 管理欲だ。


 それ自体は、理解できる。


 だが――

 そこに入った瞬間、

 俺の判断は、俺のものではなくなる。


 それだけは、選べない。


 返答まで、あと数時間。


 答えは、

 もう、ほとんど決まっていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ