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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第40話 答えを保留する理由

 返答期限まで、三日。


 それは、十分な時間のようで、

 考えるには短すぎる時間でもあった。


 俺は、依頼書を畳み、引き出しにしまった。


 今は、答えない。


 それだけを決める。


 翌朝。


 ギルドの掲示板は、いつも通り賑やかだった。


「次、どこ行く?」

「南の街道、護送出てるぞ」


 変わらない日常。


 それが、少しだけ救いだった。


「アレンさん」


 フィオナが、声を落として言う。


「国家案件の件ですが……」

「上から、返事を急かされています」


「急かす、ですか」


「はい」

「期限前ですが、“目安だけでも”と」


 つまり、

 態度を測っている。


「返事は、期限通りにします」


 それ以上は、言わなかった。


 余計な言葉は、判断材料になる。


 午前の依頼は、単独での巡回だった。


 意図的に、誰も同行させない。


 監視も、記録もない時間。


(……久しぶりだな)


 森の中を歩きながら、考える。


 国家に協力すること自体は、悪くない。

 問題は――

 どこまで譲るかだ。


 判断を渡すのか。

 責任を曖昧にしたまま、使われるのか。


 それだけは、受け入れられない。


 昼過ぎ。


 街道沿いの丘で、立ち止まる。


 遠くに、以前避難させた村が見える。


 煙が上がり、

 人が、戻ってきている。


(……守れた)


 それは、誰に言われなくても分かる。


 だからこそ。


(次は、守る“やり方”を選ばされる)


 同じ結果でも、

 やり方次第で、

 意味は変わる。


 夜。


 宿に戻ると、カイルが待っていた。


「……返事は?」


 単刀直入だ。


「まだです」


 それだけ答える。


「悩んでいますか?」


「いいえ」

 少し考えてから、言い直す。

「整理しています」


 カイルは、静かに頷いた。


「国家は」

「あなたの沈黙を、警戒しています」


「でしょうね」


 沈黙は、曖昧だ。

 曖昧なものは、扱いづらい。


「でも」

 俺は、続ける。

「即答しないのは、逃げではありません」


「……どういう意味ですか?」


「条件を、見ているだけです」


 カイルは、メモを取らなかった。


 そのことに、少しだけ驚く。


「……それも、報告しますか?」


「いいえ」

 彼は、首を振る。

「これは、私個人の判断です」


 初めて、

 監視役ではない顔を見た気がした。


 部屋に戻り、灯りを落とす。


 答えは、まだ出ていない。


 だが、

 出さないという選択は、

 確かに存在している。


 国家は、期限を切った。

 だが、

 俺の判断まで、切れはしない。


 この三日で、

 何を守り、

 何を譲らないか。


 それだけを、考える。


 戦わずに、結果を出す。


 その価値を、

 誰に渡すのか。


 ――答えは、

 まだ、引き出しの中だ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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