第4話 学園の方針転換
全校集会が開かれる、という知らせは突然だった。
午前の訓練が終わった直後、鐘が鳴り、生徒たちは講堂へと集められる。
ざわめきの理由は、皆なんとなく分かっていた。
最近、噂になっていたからだ。
「制度改革、ってやつか」
「国の方針が変わったらしいぞ」
前方の壇上に立ったのは、学園長と数名の教官たち。
マルグリット教官の姿もある。
学園長は一度、場を見渡してから口を開いた。
「本日をもって、本学園は教育方針を一部改定する」
講堂が静まり返る。
「近年、魔物の活動が活発化している」
「それに伴い、国は即戦力となる人材の育成を、より強く求めている」
淡々とした説明。
感情を挟む余地はない。
「これまで本学園では、多様な職能を育成してきた」
「だが、今後は実戦能力を重視した教育へと移行する」
その言葉に、何人かの生徒が顔を見合わせた。
「具体的には――」
学園長は資料に目を落とし、続ける。
「非戦闘職、補助職の定員を縮小する」
ざわ、と空気が揺れた。
「代替可能な役割については、整理対象とする」
「これは能力の優劣ではなく、制度上の判断だ」
……制度上。
その言葉が、妙に重く響いた。
俺は、無意識のうちに手を握りしめていた。
(やっぱり、そう来るか)
驚きはなかった。
むしろ、腑に落ちたという感覚に近い。
戦えない。
数字に残らない。
評価しづらい。
――切るなら、俺だ。
「対象となる生徒には、後日個別に通知する」
「今後も学園に残る者は、より厳しい実力評価を受けることになる」
学園長はそう締めくくり、集会は終わった。
講堂を出ると、すぐにざわめきが広がる。
「補助職、減らすってよ」
「やばくないか?」
「実力あるやつは大丈夫だろ」
そんな声が、あちこちから聞こえてくる。
「……アレン」
隣で、リィナが小さく名前を呼んだ。
「大丈夫?」
心配そうな目。
だが、俺は肩をすくめた。
「まぁ……想定内かな」
「俺、戦えないし」
「でも――」
何か言いかけて、彼女は言葉を飲み込む。
確証がない。だから、強く言えない。
「結果がすべて、だもんね」
自分に言い聞かせるように言って、俺は歩き出す。
その背中を、リィナは見つめていた。
(違う……気がする)
だが、その違和感は、まだ形にならない。
一方、レオンたちは楽観的だった。
「補助職整理か」
「まぁ、強いやつは残るだろ」
「だよな」
「俺たちには関係ない」
レオンはそう言って笑う。
「アレンもさ、前に出れば評価変わるかもだし」
「今からでも――」
「いいよ」
俺は首を振った。
「急に変われるもんじゃない」
「それに……今さらだろ」
言葉にすると、案外あっさりしていた。
自分の立ち位置は、もう決まっている。
この学園は、俺を必要としていない。
それだけのことだ。
その日の夜。
寮の部屋で、一人机に向かいながら思う。
(もし、ここを出ることになったら……)
行く先は決まっていない。
何ができるかも分からない。
それでも――
不思議と、完全な絶望ではなかった。
この場所で評価されないなら、
別の場所で役に立てばいい。
その考えが、静かに胸に芽生えていた。
翌日から、学園の空気は明らかに変わる。
評価。
選別。
整理。
そして俺の机の上に、
一通の封書が置かれることになる。
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