第39話 丁寧すぎる依頼
その依頼は、直接ギルドに届いた。
封蝋付き。
正式文書。
それだけで、普通の案件ではないと分かる。
「……国家案件、です」
フィオナが、少し硬い声で言う。
「内容は?」
「調査依頼」
「名目上は、ですけど……」
言葉を濁す。
嫌な予感しかしない。
文書を受け取り、目を通す。
対象:北方旧街道周辺
目的:魔物動向および住民帰還の安全確認
期間:二週間
付随条件:国家監督官の同行
備考:
本依頼は“助言”を主目的とする
(……助言、ね)
便利な言葉だ。
責任を負わせず、
しかし判断だけは使う。
「報酬は?」
「高額です」
即答だった。
「破格と言っていい」
分かりやすい。
断りづらくするための条件だ。
「……同行者は?」
「指定されています」
「前と同じ、カイルさんです」
胸の奥が、静かに冷える。
監視役の継続。
つまり、
評価は終わっていない。
その日の午後。
非公式だが、国家側の使者が姿を見せた。
年配の男。
役職は名乗らない。
「ご無沙汰しています」
「先の件では、お世話になりました」
丁寧すぎる態度。
頭を下げる角度まで、計算されている。
「今回は、あくまで調査です」
「判断は、すべて現場に委ねます」
「現場、とは?」
「……あなたです」
はっきり言った。
逃げ道を塞ぐ言い方だ。
「権限は?」
「ありません」
「責任は?」
「……ありません」
その答えに、違和感が確信に変わる。
「それは」
俺は、静かに言う。
「責任を、後から決めるという意味ですね」
使者は、否定しなかった。
「我々は」
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「あなたの判断を、信頼しています」
信頼。
だが、自由は与えない。
それが、この依頼の本質だった。
夜。
宿の部屋で、依頼書を机に置く。
条件は、悪くない。
むしろ、良すぎる。
だが。
(……逃げ場が、ない)
断れば、
“協力的でない”という評価が残る。
受ければ、
管理下に入る。
どちらも、
選ばされている。
「……即答は、しない」
それだけは、決めた。
返答期限は、三日。
その三日が、
今後の立場を決める時間になる。
俺は、灯りを落とす。
静かな部屋で、
次の一手を考え始めた。
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