第38話 近づく現場、遠ざかる声
最近、依頼の組まれ方が変わった。
それを一番早く感じ取っていたのは、現場の冒険者たちだった。
「……この依頼、アレンが入る前提で組まれてるな」
「だな」
「判断役が最初から想定されてる」
ギルドの掲示板の前で、そんな会話が交わされる。
護送経路。
撤退基準。
交戦条件。
以前なら、
現場で話し合って決めていた項目が、
最初から細かく記載されていた。
(……真似してる、か)
悪いことではない。
むしろ、必要な変化だ。
だが、
それが俺の存在を前提にしていることだけが、引っかかる。
午前の依頼は、交易路の安全確認。
同行した冒険者は、顔なじみばかりだった。
「正直さ」
一人が、ぼそりと言う。
「国の指示より、お前の一言の方が助かる」
「それは、良くない」
即座に返す。
「俺は、いつもここにいるとは限らない」
「分かってる」
別の冒険者が言う。
「だから、聞いてるんだ」
「……聞いてる?」
「どう考えてるか」
「何を見て、判断してるか」
その言葉に、少しだけ驚いた。
(依存、じゃない)
学ぼうとしている。
「……危険を探してるだけです」
「それだけ?」
「それだけです」
それ以上、特別なことはしていない。
ただ、
“戦わなくて済む道”を
探しているだけだ。
依頼は、問題なく終わった。
ギルドに戻ると、フィオナが資料を持って待っていた。
「アレンさん」
「最近の国家案件なんですが……」
「減ってますね」
資料を見るまでもなかった。
「はい」
彼女は頷く。
「直接の要請は、ほぼ止まりました」
理由は、分かっている。
(扱いづらい)
それだけだ。
「代わりに」
フィオナは、少し困ったように言う。
「ギルド内部からの依頼が、増えています」
「……内部?」
「他の街のギルドです」
「あなたの判断を、参考にしたいと」
それは、国家よりも厄介な流れだった。
善意だ。
だが、
拡散は、管理より早い。
夕方。
カイルが、ギルドを訪れていた。
だが今日は、声をかけてこない。
遠くから、様子を見るだけだ。
(距離を取ってるな)
それは、監視をやめたわけじゃない。
判断材料が、揃ったという合図だ。
夜。
ギルドの上階から、街を見下ろす。
灯りが増えている。
平和だ。
その平和を、
誰がどう評価するかで、
立場は変わる。
国家は、俺を使いにくいと判断した。
現場は、俺を必要だと思っている。
その溝は、
埋まらない。
(……次は、選ばされる)
国家が再び声をかけてくる時は、
条件付きだ。
自由を削る形で。
その時、
どう動くか。
まだ、答えは出ていない。
だが、
一つだけ確かなことがある。
俺は、現場を捨てない。
それだけは、
選択肢から外れていなかった。
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