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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第32話 終息という名前の空白

 避難は、正式に終了した。


 王都からの通達は、短い。


「レムナス周辺地域における警戒態勢を解除する」

「住民の帰還を、段階的に認める」


 それだけだった。


 勝利宣言はない。

 敵撃破の報告もない。


 ただ、

 終わったという事実だけが残る。


 後日、まとめられた被害報告書を見て、

 誰もが一度、言葉を失った。


「……死者、二百弱」


 国家規模の魔物異常としては、

 信じられない数字だった。


「都市壊滅、ゼロ」

「主要拠点の破壊、なし」


 過去の同規模事例と比べれば、

 被害は十分の一以下。


 だが。


「戦果欄は……空白です」


 報告官の声が、少しだけ困惑している。


 討伐数。

 英雄名。

 武勲。


 どれも、書けない。


「……説明が、難しいな」


 将軍が、正直に呟く。


「勝っていないのに、守れている」


 それが、この事態の本質だった。


 評価会議は、重かった。


「成功、と言えるか?」


 問いは、宙に浮く。


「結果だけ見れば、成功だ」

「だが、再現性がない」


 国家側の意見は、割れた。


「彼の判断が、たまたまだった可能性もある」


 “彼”という言い方が、

 意図的に名前を避けていることを示している。


 名指しすると、

 評価しなければならなくなるからだ。


 一方、ギルド内部の評価は違った。


「……あれは、奇跡じゃない」


「再現できる」

「判断の積み重ねだ」


 冒険者たちは、現場を知っている。


 誰が、どこで、何を選んだか。


 数字にはならないが、

 確かな因果があった。


 夕方、フィオナが俺に言う。


「……国の評価、出ませんでした」


「でしょうね」


 驚きはない。


「“功績は確認できるが、特筆事項なし”」

「そういう書き方です」


 便利な言葉だ。


「……それで、いいんですか?」


 フィオナは、少し不安そうだ。


 俺は、地図を畳みながら答える。


「評価されるために、やったわけじゃない」


 それは、強がりでも諦めでもない。


「英雄が出なかったなら」

「それが、一番平和です」


 彼女は、少しだけ笑った。


 街には、人が戻り始めている。


「……何も、壊れてないな」


「家も、店も」


 その声を聞きながら、思う。


(空白のまま、終わった)


 歴史書には、

 おそらく一行で済まされる。


 だが、

 その一行の裏に、

 何があったかを知っている人間はいる。


 それで、十分だった。


 ただ――

 この“空白”は、

 別の場所で、別の意味を持ち始める。


 戦わずに、結果を出した存在。


 それは、

 国家にとって、

 扱いづらい前例だった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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