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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第30話 信頼が集まる場所

 避難は、続いていた。


 だが、現場の空気は、明らかに変わっていた。


「次、どう動く?」

「判断を」


 声が、俺に集まる。


 以前なら、

 国家の将軍や現場指揮官に向けられていた問いだ。


 今は――

 自然と、俺を経由する。


「……東の街道は、使えません」

「魔物の影が、まだ濃い」


 そう言うだけで、

 誰も反論しない。


 理由を求められない。

 説明を要求されない。


 判断として、受け入れられている。


 その事実が、少しだけ怖かった。


(……依存が、始まってる)


 俺がいなくなったら、どうなる?


 その問いが、頭をよぎる。


 昼過ぎ。


 国家側の指揮所では、空気が重かった。


「命令が、通らないな」


 将軍が、低く言う。


「現場が、独自に動いている」


「独自、ではありません」

 副官が答える。

「……彼に、従っている」


 名前は、出なかった。


 だが、誰のことかは分かっている。


「責任の所在が、曖昧だ」


「責任は……」

 副官は、言葉を選ぶ。

「彼の判断に、集まっています」


 それが、国家にとって一番困る状況だった。


 一方、現場では。


「……アレン」


 若手将軍が、俺の元に来た。


 以前の硬さは、ない。


「次の判断を、聞かせてほしい」


 命令ではなく、要請。


 それが、すべてを物語っていた。


「このまま、魔物は散ります」

「人が、いないからです」


「……迎撃は?」


「不要です」

「むしろ、近づけます」


 彼は、黙って頷いた。


 納得ではない。

 受け入れだ。


 夜。


 フィオナが、ぽつりと言う。


「……怖くありませんか?」


「何が?」


「あなたに、判断が集まりすぎていること」


 俺は、少し考えてから答える。


「怖いですよ」


 正直な言葉だった。


「でも」

 続ける。

「誰かがやらないと、止まる」


 それだけだ。


 英雄になりたいわけじゃない。

 権力が欲しいわけでもない。


 ただ――

 止められる人間が、必要なだけだ。


 翌朝。


 魔物の進行は、明らかに鈍っていた。


「……減ってます」


 斥候の報告に、誰も声を上げない。


 驚きより、納得が先に来る。


「人が、いない」


 俺が、静かに言う。


「それだけで、十分です」


 戦わずに、勝つ。


 それは、

 戦果としては、残らない。


 だが、

 現場の人間たちは、もう知っている。


 誰の判断で、ここまで来たかを。


 国家の命令より。

 書類の承認より。


 生き残った人たちが、

 その答えだった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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