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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第28話 善意が引き金になる

 異変は、報告書より先に届いた。


「……魔物の進路、変わりました」


 伝令の声が、わずかに震えている。


 地図の上で示された矢印は、

 俺が想定していたものとは、明らかに違っていた。


「……中央に寄ってる」


 フィオナが、息を呑む。


 本来なら、

 人の気配が消えた地域を避け、

 自然に分散していくはずだった。


 だが今は――

 避難済み区域を横断し、街道沿いに集まり始めている。


「原因は?」


 俺が問う。


「……迎撃です」


 答えたのは、ギルド代表だった。


「若手将軍の一隊が、独断で接触した」

「“戦果を示す必要がある”と」


 その瞬間、胸の奥が冷えた。


(……引き寄せた)


 魔物は、意図を持たない。

 だが、刺激には反応する。


 戦闘は、

 進路を示す合図になる。


「被害は?」


「部隊は撤退」

「死者は出ていないが……」


 言葉が、詰まる。


「街道沿いの避難ルートに、魔物が向かっています」


 最悪だった。


 避難計画の“安全な通路”が、

 一気に危険地帯へ変わる。


「……変更が必要だ」


 俺は、即座に言った。


「第二ルートは?」


「使えません」

「地形が狭く、収容力が足りない」


 選択肢が、削られていく。


 その時、当の若手将軍が現場に現れた。


「被害は、抑えた」


 自信と焦りが混じった声。


「だが、魔物の数が増えた」


 自分で言って、気づいていない。


「……なぜ、迎撃した」


 俺は、静かに問う。


「避難だけでは、国が納得しない」

「戦果が必要だった」


 彼の言葉は、正直だった。


「俺は、間違ったことをしたとは思っていない」


 否定もできる。

 怒鳴ることもできる。


 だが、それでは意味がない。


「結果として」

 俺は、淡々と告げる。

「避難路が危険になりました」


 若手将軍は、言葉を失う。


「……では、どうする」


 その問いは、

 初めて“俺に頼る声”だった。


「三つ、選択肢があります」


 地図を広げる。


「一つ」

「迎撃を続け、魔物を引き離す」

「被害は、出ます」


「二つ」

「避難を中断し、街に籠もる」

「包囲される可能性が高い」


「三つ」


 少し、間を置く。


「一部を切り捨て、主流を守る」


 空気が、凍りついた。


「……切り捨てる、とは」


「避難路を二分します」

「遅れている集団を、別ルートに誘導」

「全員は、救えません」


 それが、現実だった。


 若手将軍は、歯を食いしばる。


「それが……最善か」


「現時点では」


 誰も、反論できない。


 善意で始めた迎撃が、

 全体を危険にさらした。


 だが、

 それを責めても、何も戻らない。


「……決断してくれ」


 将軍が、頭を下げた。


 俺は、目を閉じる。


(ここが……境界線だ)


 完璧は、もうない。


 それでも――

 選ばなければならない。


 俺は、静かに言った。


「三つ目を、取ります」


 その瞬間、

 この避難計画は、

 理想から現実へと変わった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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