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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第26話 数字にならない成功

 避難は、順調だった。


 少なくとも――

 表面上は。


「第一陣、予定通り完了」

「第二陣も、想定時間内です」


 報告は、淡々と積み重なる。


 死者、ゼロ。

 負傷者、軽傷数名。


 数字だけ見れば、理想的だった。


 だが。


「……報告書が、薄いな」


 国家側の監察官が、書類をめくりながら言う。


「戦果がない」

「魔物との接触記録も、ほとんどない」


「避難が主目的ですから」


 俺は、事実だけを返す。


「魔物を倒す計画ではありません」


「それが、問題なんだ」


 監察官は、はっきり言った。


「王都は、“成果”を求めている」

「避難だけでは、説明がつかない」


 その言葉に、会議室の空気が少し重くなる。


「説明、とは?」


「国民への説明だ」

「なぜ街を空にしたのか」

「なぜ軍を動かしたのか」


 俺は、少し考えてから答えた。


「……生きているから、では駄目ですか?」


 一瞬、静寂。


「それは、感情論だ」


 監察官は、そう切り捨てた。


「数字で示せ」


 数字。


 倒した数。

 被害の数。

 勝率。


 だが、

 避難が成功した理由は、

 どれも数字にしにくい。


「魔物が、街に来ていません」


 俺は、別の角度から言った。


「それが、結果です」


「来ていないだけだ」

「来たら、どうする」


「来させない判断をしています」


 それ以上、説明はできなかった。


 分かり合う前提が、違う。


 現場に戻ると、冒険者たちの空気は違った。


「助かってる」

「正直、戦わなくていいのが一番だ」


 彼らは、数字よりも体感で分かっている。


「昨日なら、ここで当たってた」

「今は、いない」


 それが、答えだった。


 だが、その声は、上には届かない。


 夜。


 フィオナが、静かに言った。


「……評価、されませんね」


「予想通りです」


 俺は、苦笑する。


「勝っていない」

「だから、成功に見えない」


「それでも」

 彼女は、少しだけ声を強くする。

「人は、生きています」


「はい」


 それで、十分だと思っている。


 だが――

 それを“正解”と認めない人間がいる。


 それも、理解できる。


(だから、ここが分岐点だ)


 このまま避難が完遂すれば、

 結果は残る。


 だが、

 評価は、残らないかもしれない。


 それでも。


 俺は、地図を見る。


(それでいい)


 評価されるために、

 判断しているわけじゃない。


 だが、

 評価されない判断が、

 どこまで許されるか。


 その境界線が、

 静かに、近づいていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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