表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/55

第25話 肩書きだけの権限

 避難計画は、日の出と同時に動き出した。


 正確には――

 動かさざるを得なくなった、が正しい。


「王都への正式報告は、こちらで行う」


 国家側の将軍が、疲れた声で言う。


「現場判断については……」

 一瞬、言葉を切る。

「君に委ねる」


 その言葉に、会議室が静まり返った。


「委ねる、とは?」


 ギルド代表が、慎重に確認する。


「避難経路」

「移動順」

「撤退判断」


 将軍は、短く答えた。


「現場で最も状況を把握しているのは、彼だ」


 視線が、俺に集まる。


 重い。

 だが、逃げ場はない。


「……承知しました」


 俺は、そう答えるしかなかった。


 その場で、簡易任命書が作られる。


臨時役職

避難計画補佐官


権限:助言

責任:現場判断に準ずる


(……責任だけ、重いな)


 名目上は補佐。

 だが、実際には――

 失敗すれば、俺の判断になる。


「アレンさん」


 フィオナが、小さく声をかけてくる。


「……無理は、しないでください」


「分かっています」


 そう答えながら、内心では分かっていなかった。


 無理をしない、という選択肢は、もうない。


 レムナスの街は、まだ眠っていた。


 避難は、混乱を避けるため、夜明け前に始める。


「第一陣、出します」


 伝令が走る。


 家族単位。

 荷物は最小限。


「置いていく物の目安は、これです」

「戻れる前提で、考えないでください」


 その言葉に、住民の顔がこわばる。


 怒号は出ない。

 だが、理解も完全ではない。


(……当然だ)


 誰だって、

 理由も分からず家を捨てたくはない。


「説明は、最低限でいい」

 俺は、指示を出す。

「不安を煽らない」

「動線だけを伝えて」


 冒険者たちが、静かに動く。


 彼らは、俺を見ていた。


 指示の内容ではない。

 迷いがあるかどうかを。


 俺は、迷っていないように振る舞った。


 それが、唯一できることだった。


 昼前。


 予想より早く、魔物の影が確認される。


「……来たか」


 想定内だが、早い。


「第二陣、前倒し」

「第三陣は、経路変更」


 判断を、立て続けに下す。


 誰も、止めない。


 誰も、疑わない。


(……信頼されてる、んだよな)


 そう思った瞬間、

 胸の奥が、少しだけ痛んだ。


 信頼は、重い。


 夕方。


 将軍が、険しい顔で近づいてくる。


「王都からの催促だ」

「戦果の報告を求められている」


「……ありません」


 俺は、即答した。


「魔物は、まだ倒していません」


「それでは――」


「被害も、出ていません」


 その一言で、将軍は黙った。


 戦果はない。

 だが、

 失われた命も、まだない。


「……続けろ」


 それだけ言って、彼は去った。


 空が、赤く染まる。


 まだ終わらない。


 むしろ――

 ここからが、本番だ。


 俺は、地図を見下ろしながら思う。


(これでいい)


 勝たなくていい。

 褒められなくていい。


 生きていれば、それでいい。


 その価値を、

 この場だけは、俺が守る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ