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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第24話 想定外は、いつも静かに来る

 報告が届いたのは、夜明け前だった。


 冒険者ギルドの緊急鐘が、短く鳴る。

 それだけで、嫌な予感は確信に変わった。


「……偵察部隊、です」


 フィオナの声は、いつになく硬い。


「戻ってきたのは、半数だけ」

「残りは……撤退途中で、分断されました」


 地図が、机の上に広げられる。


 魔物の出現地点。

 移動経路。

 そして、迎撃予定だった線。


(……早すぎる)


 俺は、内心でそう呟いた。


 国家側の想定より、

 魔物の集結が半日以上早い。


「規模は?」


「予測の……一・五倍です」


 フィオナが、息を詰める。


「正確には、まだ把握できていません」

「数が多すぎて」


 会議室に集まった顔ぶれが、重くなる。


「迎撃部隊は?」


「間に合いません」

 誰かが答える。

「布陣完了まで、あと一日必要です」


 だが、魔物は待たない。


 その時、俺ははっきりと言った。


「……防衛線は、もう意味を持ちません」


 数人が、こちらを見る。


「魔物は、こちらの準備を待たない」

「戦う意思があるなら、もう動いている」


 誰も、否定できなかった。


 国家側の監察官が、低い声で言う。


「……想定外だな」


「想定外、ではありません」


 俺は、淡々と返す。


「最初から、可能性としてはありました」


 空気が、張り詰める。


「では、どうする?」


 その問いが、ようやく俺に向けられた。


「迎撃を続ければ」

 俺は、地図を指す。

「街に近づいた場所で、戦闘になります」

「被害は、確実に出ます」


「撤退は?」


「撤退ではなく」

 言い直す。

「避難です」


 その言葉に、誰かが舌打ちした。


「今さら、街を動かせるか」


「今なら、まだ動かせます」


 声は、静かだ。


「魔物は、まだ街を包囲していません」

「進路を外せば、追ってこない」


 沈黙。


 やがて、ギルド側の代表が口を開いた。


「……彼の言う通りだ」


 国家側が、反発する。


「だが、命令系統は――」


「命令系統は、現場を救えません」


 初めて、言葉が強くなった。


 俺は、すぐに深呼吸する。


(……焦るな)


 判断を誤れば、意味がない。


「選択肢は、二つです」


 そう前置きして、続ける。


「迎撃して、被害を覚悟する」

「避難して、街を空にする」


「どちらが、国家として――」


「どちらが、生き残れますか?」


 その問いに、誰も答えなかった。


 答えが、出ているからだ。


 やがて、国家側の将軍が、苦々しく言う。


「……避難計画を、提示しろ」


 それは、命令でも承認でもない。

 責任を伴う判断だった。


「今すぐに、です」


 俺は、頷いた。


「準備は、できています」


 それが、全員の視線を集めた。


「……最初から?」


「はい」


 俺は、地図をもう一枚広げる。


「避難は、三方向に分散」

「夜間移動を基本にします」


 誰かが、息を呑んだ。


「この状況を想定して」

 俺は、淡々と続ける。

「準備していました」


 それは、

 “選ばれなかった選択肢”だった。


 だが今、

 それしか残っていない。


 外では、空が白み始めていた。


 時間は、もう残されていない。


 それでも――

 まだ、間に合う。


 そう信じられるだけの根拠が、

 ようやく、この場に揃った。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


明日からは1日1話の投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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