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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 蒼月アルト


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第22話 防衛という名の様子見

 王都からの通達が届いたのは、その日の午後だった。


 冒険者ギルドの奥、臨時の掲示板に貼り出された文書を見て、

 誰もが一度、言葉を失った。


「……国家案件、だな」


「防衛準備要請……か」


 書かれている内容は、表向きにはもっともらしい。


 ――辺境都市レムナス周辺における

 ――魔物出没増加への対応

 ――防衛線構築および戦力集結


 だが。


(避難、の文字がない)


 それが、すべてだった。


「防衛を固める、ってことは」

 誰かが言う。

「街は動かさない、って判断だな」


「被害が出てない以上、そうなるだろ」


 現場責任者たちの反応は、予想通りだった。


 フィオナが、静かに俺を見る。


「……やっぱり、ですね」


「ええ」


 俺は、短く頷く。


「国家としては、動けない」

「避難は“失敗した時”の選択肢です」


「失敗、ですか……」


 フィオナは、苦い顔をする。


「でも、防衛が成功すれば」

「街は守られる、という判断ですよね」


「成功すれば、です」


 そこに、すべての問題が詰まっている。


 簡易会議が、再び開かれた。


 今回は、王都から派遣された監察官も同席している。


「被害が出ていない段階での大規模避難は」

 監察官は、淡々と告げる。

「混乱を招きます」


「責任問題にもなる」


 誰もが、その言葉の意味を理解していた。


 守れれば英雄。

 失敗すれば、責任者探し。


「……防衛線は、間に合いません」


 俺は、あえて口を開いた。


 一斉に、視線が集まる。


「現地の防壁は古い」

「増援が到着するまでに、魔物が集結します」


「根拠は?」


 監察官が、鋭く問う。


「過去の移動速度と、現在の散発出現数です」


 地図を示す。


「迎撃を選べば」

「勝てる可能性はあります」

「ただし、被害ゼロはあり得ません」


 室内に、沈黙が落ちる。


「……君は、補助だろう」


 監察官の声には、わずかな苛立ちがあった。


「判断は、指揮官が行う」


「ええ」

 俺は、否定しない。

「ただ、判断材料を出しているだけです」


 それ以上、踏み込まなかった。


 今、俺が前に出る理由はない。


 会議は、防衛準備を進めることでまとまった。


 増援の手配。

 防壁補修。

 冒険者の動員。


 すべて、“正しい手順”だ。


 だが。


(時間を、買えていない)


 それが、どうしても気になった。


 会議後、フィオナが声を潜めて言う。


「……何か、できませんか?」


「今は」

 俺は、正直に答える。

「国家の判断を待つしかありません」


 それでも。


「準備は、しておきましょう」


「準備?」


「はい」

 俺は、静かに言った。

「避難する前提の、準備です」


 まだ、表には出さない。


 だが、

 動かすべき時は、必ず来る。


 その確信だけは、

 ますます強くなっていた。


 その夜。

 レムナス方面から届いた小さな報告が、

 すべてを裏付け始める。


 ――魔物の目撃数、増加。

 ――進路、依然として街を囲う形。


 まだ、被害は出ていない。


 だが、

 時間は、確実に削られていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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