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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 天城ハルト


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第19話 勝たなくていい理由

 本番の実習は、予定よりも早く始まった。


 原因は単純だ。

 予定ルート上で、想定外の魔物の動きが確認された。


「数は……多いな」


 教官の一人が、緊張を隠さずに呟く。


 前衛の生徒たちが、自然と武器に手をかける。

 学園の訓練では、こういう時――

 戦って突破するのが正解だった。


「迎撃態勢を――」


 誰かがそう言いかけた瞬間。


「待ってください」


 俺は、静かに声を出した。


 全員の視線が、こちらに集まる。


「この数を正面から受けると、被害が出ます」

「実習としても、意味がありません」


 教官が、反射的に眉をひそめる。


「だが、任務目標は――」


「“生徒を無事に帰す”ことですよね」


 言葉は丁寧だが、迷いはなかった。


 マルグリット教官が、一歩前に出る。


「……続けなさい」


 その一言で、空気が変わる。


「この群れ、縄張り意識が強い」

「動線を外せば、追ってきません」


 地図を広げ、指で示す。


「ここから西へ」

「距離は伸びますが、安全です」


 沈黙。


 これまでの学園のやり方なら、

 「逃げる」選択肢は評価されなかった。


「……撤退、ですか」


 レオンの声が、震える。


「回避です」

「撤退ではありません」


 言い直す。


「戦わない選択が、最適な場合もあります」


 その言葉に、教官たちが互いに視線を交わす。


 やがて、学園長が小さく頷いた。


「……従おう」


 命令は短かった。


 生徒たちは、戸惑いながらも動き出す。


 結果は――

 予想通りだった。


 魔物は追ってこない。

 誰一人、傷つかない。


 実習は、そのまま終了となった。


「……戦果、なし」


 教官の一人が、ぽつりと呟く。


「ですが」

 別の教官が、静かに言う。

「被害も、なしです」


 その言葉が、重く響く。


 学園の評価基準は、

 “どれだけ倒したか”

 だった。


 だが、今この場で――

 それが正解ではなかったことを、全員が理解してしまった。


 帰還後の簡易会議。


 誰も、声を上げない。


 マルグリット教官が、ゆっくりと口を開く。


「……我々は」

「戦うことを、教えすぎた」


 学園長が、深く息を吐く。


「そして、戦わなくて済む判断を」

「評価しなかった」


 沈黙の中、名前が出る。


「アレン・クロウ」


 俺は、顔を上げる。


「君がいた頃」

「我々は、勝っていた」


 それは、告発ではない。

 謝罪に近い。


「君がいなくなってから」

「我々は、壊れ始めていた」


 誰も否定しなかった。


 レオンは、拳を握りしめている。


 彼は、初めて理解した。


 勝利とは、

 前に出ることではない。

 斬ることでもない。


 選ばないことも、また勝利なのだと。


 会議が終わり、外に出る。


 夕暮れの校舎が、静かに影を落としていた。


「……アレン」


 マルグリット教官が、俺を呼び止める。


「我々は、君を評価し損ねた」

「心から、そう思っている」


 俺は、少しだけ首を振った。


「評価されなかったから、今があります」

「だから……それでいいです」


 それ以上、言うことはなかった。


 学園側は、理解した。

 完全に。


 だが――

 理解した時点で、もう遅かった。


 俺には、帰る場所がある。


 学園には、もうない。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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