第17話 学園案件
その依頼票を見たとき、最初に感じたのは懐かしさだった。
「……学園?」
ギルドの相談スペースで、フィオナが静かに頷く。
「はい」
「正式名称は“王立育成学園・対外協力要請”」
胸の奥が、少しだけ重くなる。
「内容は?」
「対外実習への戦術補助参加です」
「名目は“外部アドバイザー”」
アドバイザー。
随分、綺麗な言葉だ。
「指名、ですか」
「はい」
フィオナは、依頼票の該当欄を指で叩く。
《補助役:アレン・クロウ》
そこに、迷いはなかった。
「……断れますよね?」
確認すると、フィオナは即座に答える。
「もちろんです」
「強制ではありません」
「学園側も、その点は理解しています」
理解している。
それが、余計に厄介だった。
「条件は?」
「報酬は相場以上」
「日程はあなたに合わせる」
「現場判断の裁量も、あなたに委ねる」
――出来る限り、へりくだっている。
(必死だな……)
そう思ってしまう自分がいて、少し驚く。
学園にいた頃、
俺は“切られる側”だった。
今は――
選ぶ側に近い。
「……少し、考えてもいいですか」
「はい」
フィオナは頷く。
「今日中でなくて構いません」
相談スペースを出ると、ガルドとミーナが待っていた。
「学園案件だって?」
もう、噂は早い。
「……うん」
「行くのか?」
ミーナが、真剣な目で聞いてくる。
「分からない」
正直な答えだった。
「戻るわけじゃない」
「ただの仕事、だと思う」
「それなら」
ガルドが肩をすくめる。
「行ってこいよ」
「今のお前なら、何も失わねぇ」
その言葉が、胸に残る。
(失わない……か)
夜、宿の部屋で一人になる。
机の上に置かれた依頼票を、じっと見つめる。
学園。
追放された場所。
怒りはない。
恨みも、正直ほとんどない。
ただ――
終わったはずの場所が、また目の前に現れた。
(何を、期待してるんだろうな)
向こうが。
謝罪か。
復帰か。
それとも、都合のいい協力か。
俺は、深く息を吐いた。
(俺は、もう学園の人間じゃない)
それだけは、はっきりしている。
翌朝、ギルドでフィオナに伝える。
「受けます」
「……よろしいんですね?」
「はい」
「ただし、条件があります」
フィオナは、真剣な表情になる。
「現場の判断は、俺に任せてください」
「学園の指示でも、危険だと思ったら従いません」
彼女は、少しだけ笑った。
「その条件、先方も想定しています」
「……むしろ、それを望んでいます」
依頼票に、受諾の印が押される。
こうして、
俺は“外部の人間”として、
再び学園と関わることになった。
それが、
後悔型ざまぁの始まりだとは、
この時点では、まだ誰も口にしなかった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、
ブックマーク や 評価 をお願いします。
応援が励みになります!
これからもどうぞよろしくお願いします!




