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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 天城ハルト


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第14話 前提として組まれる人間

 翌朝、ギルドに入った瞬間、空気が変わったことはすぐに分かった。


 ざわめきが、少しだけ抑えられている。

 視線が、意図的に外される。


(……気のせい、じゃないな)


 受付カウンターへ向かうと、フィオナがすでに待っていた。


「アレンさん」

「少し、お時間いいですか?」


 案内されたのは、これまで使われていなかった奥の小部屋だった。

 簡易的だが、明らかに“内部用”の場所。


 そこには、昨日の会議で見かけた上司――

 ギルド副責任者が座っていた。


「座ってくれ」


 促され、椅子に腰を下ろす。


「まず、礼を言おう」

 副責任者は、事務的だが誠実な声で言った。

「昨日の対応で、被害を最小限に抑えられた」


「いえ……いつも通りです」


 本心だった。


「そう言うだろうな」


 副責任者は小さく笑う。


「だからこそ、話がある」


 机の上に、数枚の書類が置かれた。


「危険度中以上の依頼についてだ」

「今後は、補助を含めた編成管理を、ギルド側で行う」


 フィオナが補足する。


「つまり、依頼主が勝手に補助を決めることはできなくなります」

「編成は、ギルド基準で組まれます」


「……それは」


 一見すると、普通の制度変更だ。


 だが。


「その基準の中心に、君がいる」


 副責任者は、はっきりと言った。


「アレン・クロウ」

「君が参加できない依頼は、無理に通さない」


 一瞬、言葉が詰まる。


「それって……」


「囲い込みだと思うか?」


 副責任者は、問いかけるように言う。


「否定はしない」

「だが、独占するつもりもない」


 フィオナが続けた。


「あなたが“足りない”現場が多すぎるんです」

「無理に回すと、事故が出る」


 事故。

 その言葉に、胸が少しだけ重くなる。


「俺がいないと、危ない……?」


「そうだ」


 即答だった。


「それが、もう数字で出ている」


 副責任者は、淡々と事実を並べる。


「成功率」

「被害率」

「撤退判断の早さ」


「どれも、君が入るかどうかで変わる」


 俺は、視線を落とした。


(学園では、こういう話はされなかったな)


「ただし」


 副責任者が、声の調子を変える。


「君に無理をさせるつもりはない」

「危険度の高すぎる依頼には、出さない」


「……ありがとうございます」


「それと」


 もう一枚、書類が出される。


「正式なランクは、すぐには上げない」

「だが、報酬と裁量は調整する」


 つまり――

 実質的な扱いだけを上げる。


 派手さはない。

 だが、重い。


「君は、前に出る必要はない」

「今まで通りでいい」


 副責任者は、そう言って立ち上がった。


「だが、君がいる前提で、我々は動く」


 それは、評価ではなく――

 運用だった。


 部屋を出た後、フィオナが並んで歩く。


「……すごいですね」


「そうですか?」


「はい」

 彼女は、少しだけ笑う。

「“必要だから残す”じゃなくて」

「“いないと困るから組み替える”」


 俺は、返す言葉が見つからなかった。


 ギルドの掲示板には、新しい内部向け通達が貼られている。


「編成管理強化のお知らせ」

「補助職の役割再定義について」


 そこに、俺の名前はもう書かれていない。


 だが――

 書かれなくても、前提になっている。


 依頼を選ぶ冒険者たちが、自然と聞いてくる。


「今日、アレンは入ってるか?」

「いないなら、別の日に回そう」


 そのやり取りを聞きながら、俺は思う。


(……評価されてる、ってことなんだよな)


 それでも、胸は浮つかない。


 ただ、

 役割が定まったという感覚だけが、静かにあった。


 そして、この変化は――

 まだ、外には伝わっていない。


 だが、遠くないうちに。

 学園にも、必ず届く。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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