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非戦闘職として学園を追放された俺、冒険者ギルドでは危険回避の前提になっていました 〜戦わない戦術補佐は、勝たないことで評価される〜  作者: 天城ハルト


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第1話 勝利の裏側

勝つことと、生き残ることは、必ずしも同じじゃない。


俺は、戦えない。

剣も振れないし、魔法も使えない。


それでも、

「ここで戦えば危ない」

「今は引いた方がいい」

そう判断することはできた。


だが、それは学園では評価されなかった。


数字に残らない。

派手じゃない。

だから、不要だと判断された。


これは、

戦わなかったせいで追放された俺が、

戦わない判断こそが求められる場所に辿り着く話だ。

 歓声が、少し遅れて耳に届いた。


「すごいぞレオン!」

「さすが主席候補だ!」


 闘技場の中央で、剣を掲げたレオン・ヴァルディスが喝采を浴びている。

 魔物を模した訓練用ゴーレムはすでに崩れ落ち、勝敗は明らかだった。


 ――模擬戦、終了。


 俺はというと、闘技場の端。

 砂埃の立つ戦場から少し離れた、石段の影で静かに息を吐いていた。


「……予定通り、か」


 誰にも聞こえない小さな声で、そう呟く。


 レオンたちのパーティは、今日も無傷に近い勝利を収めた。

 敵の動き、魔力の残量、前衛と後衛の交代タイミング――

 すべて、事前に想定した通りだった。


 だから俺は、剣も魔法も振るわない。

 戦場に立つ必要がなかった。


「次、右から来る。無理に前に出るな」

「三十秒後に回復。今は温存」

「後衛、一歩下がれ。死角になる」


 俺が出したのは、それだけだ。

 短く、地味で、目立たない指示。


 だが、それで十分だった。


 敵の攻撃はすべて空を切り、味方の一撃は的確に急所を捉える。

 危険な場面は訪れず、誰一人として倒れることもない。


 結果――圧勝。


「さすがレオンだな」

「やっぱりあいつがいると違う」


 観戦席のざわめきが、そう結論づける。

 教官たちも頷き、記録係が何かを書き留めていた。


 俺の方を見る者はいない。


「……まぁ、そうだよな」


 苦笑しながら、俺は立ち上がる。

 自分でも分かっている。俺は、目立つ役割じゃない。


 戦術補佐。

 非戦闘職。


 前に出て剣を振るわけでも、派手な魔法を放つわけでもない。

 数字に残る戦果もない。


 だから評価されない。


「アレン、行くぞ」


 レオンが振り返り、声をかけてくる。

 その表情に、悪意はない。ただ、当然のような顔だ。


「お疲れ」

「次も頼むぞ。お前の指示、分かりやすいしな」


 ――分かりやすい。


 それだけ。


 礼でも感謝でもなく、便利だから使う、という響き。

 俺は軽く頷いて、彼の後ろを歩く。


「今回も俺が決めたな」

「いや、あの一撃は完璧だった」

「当然だろ?」


 仲間たちの会話は、自然とレオン中心になる。

 誰も、俺の名前を呼ばない。


 それでいい。

 俺はそういう役目だ。


 ……そう、思っていた。


 後日掲示された成績表を見て、少しだけ胸がざわついた。


 《実技成績》

 レオン・ヴァルディス:A

 他前衛:B

 回復役:B

 ――アレン・クロウ:C


「やっぱり、こんなもんか」


 個人成績は低評価。

 理由は明確だ。


 《戦闘参加率:低》

 《撃破数:0》


 数値だけ見れば、俺は何もしていないに等しい。


「戦えない者は、実戦では役に立たない」


 教官マルグリットの言葉が、脳裏に浮かぶ。

 正論だ。反論できない。


 俺は強くない。

 剣も、魔法も、人並み以下だ。


 ただ――


「……勝ててるんだけどな」


 誰にも聞こえないように呟いて、成績表から目を逸らす。


 この学園では、勝利の“理由”は問われない。

 前に立つ者だけが評価される。


 それが当たり前で、

 それが正しいのだと、俺自身も思っていた。


 だからこの時は、まだ知らなかった。


 この評価が、

 この学園での俺の居場所を、静かに削り取っていることを。


 そして――

 ここから追い出された時、初めて“世界が歪んでいた”と気づくことを。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


当面の間は、1日に3話を投稿予定です。


ブックマークをして、続きを楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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