07
「クリスマス本番は流石に二人きりにしてあげたいからやめるけど二十四日ぐらいは集まりたいな?」
「二十四日にみんなで集まるから二十五日なら可能ね」
嫉妬しているとかなんとか言っている格先輩だけどクリスマス本番に二人きりで集まろうとするような人ではないから安心すればいい。
「み、みんなとは……?」
「後藤家と若尾家で集まるのよ」
これは出会った年からしているから今年も続けられそうで安心しているところだった。
ただ? 格先輩が言い出したことでよく私の両親もあっちのご両親もよく受け入れてくれたなというところ、だけどそのきっかけ一つで仲良くなれたのだからいいことだろう。
「えぇ……二人きりで盛り上がるつもりはないってこと?」
「ふふ、是恒先輩――」
「む」
「英梨は盛り上がりたいのでしょう? だったらいいことじゃない」
敬語をやめさせたり名前を呼び捨てにさせたりと面白い人だ。
「まー遥ちゃんも気にせずに誘えるからいいんだけどさーだけどそんな感じで大丈夫なの?」
「大丈夫よ」
「当日になって『やっぱり格先輩と集まりたい』とか言われても受け入れないからね? 流石にそれをしたら真白ちゃんが相手でも怒るからね?」
「しないわよ、だから安心してくれていいわ」
不安そうな顔をしていたから髪に触れてみたら「そういうことをすればいいと思っているのも微妙なんだけど」と今度は不満がありますといった顔になった。
そこまで時間が経過していないから格先輩にだってしていないのにいい加減な対応に見えてしまうみたいだ。
「こら、真白さんを困らせないでください」
「いやいや、真白ちゃんが私を困らせてくるんだよ、そもそも頭を撫でればなんとかなると思っているところが駄目でしょ」
「英梨先輩は贅沢ですね」
「そりゃ私も一人の人間だからね」
英梨といれば遥がすぐに来てくれることはいいことだ。
顔を合わせれば言い合い的なことをしてしまうこともないし最近は私にだけではなく英梨にも甘えるようになったから見ていて楽しい。
そもそもそれが自然な形だから二人きりで会いたくなるぐらいになってくれればもっと最高だった。
「あ、また保護者みたいな顔をしているよ……」
あ、これは最近よく言われるようになったことだ。
私が考えている以上に顔に出ているらしくて言葉で刺される。
まず最初にぶつけられたときに保護者みたいな顔とは? と聞いてみたけど「保護者みたいな顔だよ」と返されただけで理解は深まってはいない。
「どうしても自分を抜きにして考えたがる癖が直らないみたいですね」
「確かに遥ちゃんとも仲良くしたいけどあくまでメインは真白ちゃんなのになあ」
「私も英梨先輩とだって仲良くしたいですけどあくまでメインは真白さんです」
延々平行線になるだけだからここで止めておいた。
「それよりどこで集まるつもりなの?」
先程も言ったように二十五日は特に盛り上がらないから私のお家でも全く構わなかった。
何故か気に入ってくれている二人からすればすぐに出してくると思ったけど、
「あー私の家はそんなに広くないから微妙かな、遥ちゃんの家とかどう?」
「大丈夫ですよ」
「よし、それなら遥ちゃんの家で決定っ」
と、あっという間に遥のお家で集まることになって、うん。
「となるとあとは……クリスマスプレゼント、だよね」
「いまからいきましょう」
「いこう!」
そして二人で走って出ていってしまったからなんなのと呟くしかなかった。
私のことを出しておくことで相手に警戒されないようにしているだけなのだろうか。
「お、真白まだ残っていたのか」
「ええ、いまから帰るところよ」
彼はとことん普通だ。
常に一定の形だから落ち着ける、あの二人もできればこんな感じでいてもらいたい。
ただどうしても崩さずにいられないという状態になったのならどんどんと守らずにいるべきだという考えは変わらない。
「それならもう少しだけ待てないか? 一緒に帰ろうぜ」
「ええ、それなら外で待っているわ」
「おう、すぐにいくからな」
冬で見ていて寒いからジャージぐらい着てほしいけどね。
「お待たせ」
「ええ、帰りましょうか」
最近はあの二人と帰ってばかりだったから新鮮だった、小さい頃からいままでずっと一緒に帰っていたのに不思議だ。
「は……は……びゃっくしゅ!」
「体が冷えたのよ」
「友達と一緒に階段を上ったり下ったりしていて暑かったぐらいなんだけどなあ、やっぱり外に出ると違うよな」
なんでそんなことを……体力が有り余っているのだろうか?
暇ならごろごろ寝転ぶのではなくて走りにいくような人だからなのかもしれない。
「風邪を引かないでよ? あなたの元気がないところなんて見たくないわ」
「俺、マジで風邪は引かないからな」
「そういう過信が危険なのよ」
それになにも届いていないしわかってくれていないし。
気に入らないからといってつねったりはしないもののなかなかに複雑だった。
どれぐらいそう感じているのか相手にもわかりやすく表示されたらいいのにと思ったのだった。
「「「メリークリスマース!」」」
何故か参加している私の母も含めてみんな元気だった。
「いやー真代さんが受け入れてくれてよかったです!」
「誘ってくれてありがとう、私も英梨さんと遥さんとはゆっくりお話ししたかったからありがたいわ」
「おお……」
これは……どこに反応したおおなのだろう……。
「でも、空気が読めていない状態でもあるわよね、誘われたからっていい大人がそれならいきますなのも……」
「気にしないでください、真代さんに聞きたいことが沢山ありますから」
「そ、そう? それならいいけれど」
まあ、母のことはいいとしてずっと黙ったままの遥に意識を向ける。
そうしたらこちらを見てくれたけどそれだけだった、あとはすぐに母の方を見ていた。
本物を見てそちらがよくなってしまったとかだろうか? それならそれで何度でも連れていってあげるから安心して楽しんでもらいたいところだった。
「ちょっとちょっと、二人ともなに黙っちゃってんのさ」
「やっぱり遥さん的に駄目だったのかしら……」
母も気にしすぎだ。
誘われて受け入れて参加しているだけなのだから堂々としていればいい。
それにたとえ不満を感じていたとしてもここでそうですと言える人間はほとんどいないだろう。
ただまあ、これは間違いなくそういうことではないからなにか他の理由からきているのだ。
「……いえ、全くそんなことはないです」
「その割には表情が暗いけど……」
「だ、だって今日のご飯はほとんど私が作った物なのでそれを真白さんのお母さんに食べてもらうことを考えると緊張するんですよ……」
「あははっ、気にするのそこっ? 遥ちゃんは可愛いなあ!」
うん、英梨だけ楽しそうでいいね……。
それと珍しく参加したがっていた格先輩を参加させなかったのも英梨だった。
そのため、実は先程まで沢山のメッセージが私のところに届いていたぐらいだ。
ずるいとかずるいとかずるいとか、とにかく遥はよくても英梨に対してはいま微妙な状態らしい。
英梨は英梨で振られたことによる……わけではないよね。
「さ、冷めない内に食べましょう」
「そうですね」
遥作のご飯は美味しくていいけどどうしても拗ねている格先輩がちらついて集中できなかった。
母がいてくれるなら私がいなくても、そこまで考えて約束を受け入れたのにいい加減なことはできないと片付ける。
そもそも私達は昨日も集まっているわけだから昨日集まれなかった彼女からしたら「若尾君はわがままだよ」というそれもそこまで間違っているわけでもないような気がする。
「あ、ちょっとトイレっ」
「廊下に出てすぐのところにありますから」
「うんっ、いってくる!」
ということで英梨が一旦離脱して三人になった。
「格君は大丈夫そう?」
「微妙みたい、大爆発して走りにいってしまいそうかな」
母相手に真似をする必要もないからいままで通りの喋り方に戻す。
お家で大人しくしていてくれたらいいけど、別にお泊まりの予定にはなっていないから終わった後に時間を設ければなんとかなってくれたりしないだろうか。
何故かこのままだと私にも攻撃が飛んできそうだから少し不安ではあった。
「でも、断られたらどうしようもないわよね、それに英梨さんだってあなたに相手をしてもらいたいのよ」
「うん、ちゃんと最後まで付き合うから大丈夫だよ」
「べ、別に若尾君に意地悪がしたいわけじゃないことはわかってほしいかな……?」
「あれ、英梨先輩もう戻ってきていたんですね」
「私、毎回最速記録を狙っているからねっ、は冗談としても本当に振られたから意地悪をしてやろうとかそういう考えでいるわけじゃないからそこは、ね」
ごめんなさいと内で謝っておいた。
確かにそんなことをしても余計に微妙な状態になるだけだからするわけがないか。
「お付き合いをしているわけではないのだから真白に相手をしてもらいたいならどんどんと出していけばいいのよ、それにこの子だって付き合っているのだから大丈夫よ」
「はい、だからこれからもそこまで邪魔にならない範囲で誘わせてもらいます」
「ええ、それでいいのよ。それと真白のことをよろしくね」
「はい、お任せください」
母はどこまでいっても母目線か。
私が誰かと結婚して子どもができたときに同じようにできるのかは微妙だ。
放置するわけではないけど他の子といるときにはあまり干渉するべきではないと思っているから。
だってお友達の母でも父からでもお願いなんて言われたら強制力がすごいというかなんというか……そこにその子の意思があまり関係しなくなってしまうだろうし。
どうせなら心配だからとかではなくて一緒にいたいという考えで来てもらいたいのだ。。
でも、これまで格先輩以外は連れていくこともなかったから心配をかけていたことだろうし……こちらのことを考えて言ってくれているわけだからなにも言わずにいるのが私にできることだった。
「食べ過ぎてお腹が破裂しそう」
「英梨先輩がほとんど食べましたね、作った側としては食べてもらえて嬉しいですけど流石にどうかと思います」
美味しい美味しいと英梨先輩が食べてくれたのはいいけどその結果、二人はほとんど食べられていなかったからそこで気になるのだ。
独占的なことをされていて食べようとしても食べられなかったのならともかくとして、箸が進まないからだったとしたら……怖い。
「まあまあ、真代さんだって美味しいって言ってくれたんだからさ」
「だからこそですよ、それに二人のことも考えてくださいよ」
「でも、そこまで食べられないって二人とも言っていたよ?」
あの二人はお片付けをしてからここから出ていった。
しなくて大丈夫と言っても聞いてくれなかったから真白さんとお母さん――真代さんはよく似ている、真代さんの方もやる気が満々だったから。
「それで英梨先輩は何時までいるつもりなんですか?」
「んー今日は泊まらせてもらいたいな」
「それはいいですけど着替えとかどうするんです?」
「遥ちゃんのやつを借りる!」
「下着は――え、持ってきていたんですか」
両親も私達がお部屋で盛り上がっている間に入浴は済ませただろうからいいか。
とりあえず英梨先輩にお風呂に入ってもらうことにした、そうしたら何故か洗面所で待つことになって謎だった。
「ふぅ、先に入らせてくれてありがとう」
「ちょ、待たせていたことを忘れていたんですか?」
「裸を見られたぐらいでぴーぴー言わないよー」
こちらは気になるからちゃんと服を着てもらってから出てもらっている間に脱いで洗面所に移動。
「はいガチャーン」
「あの、まだつかっていないんですが……」
「うん、あんまり見ないようにするから洗って洗って」
見つめ合っていても変な時間になるだけだからささっと済ませて湯舟へ。
「それで? そろそろ本当のところを吐いたらどう?」
「え、なんの話ですか?」
「私に余計なことをしやがってっ、とか思っているんじゃないの?」
「先程の話ならその場だけの嘘をついたわけではありませんよ。本当に緊張していたんです、それなのにあなたがバクバクと食べてしまうから色々複雑な気持ちになりました」
あっという間に消えてしまったことについては安心、ただすごすぎて固まったのも事実だ。
「そっか、遥ちゃんにだって好かれたいからそれならいいけど」
「そもそも真白さん的にもよかったでしょう、これまで若尾先輩以外の友達と盛り上がったことはないと言っていましたし」
「でも、普段より口数が少なくなかった?」
「自分の親と友達が一緒にいる状態というのはなかなかないですからね」
とはいえ若尾先輩達とは何年も集まり続けてきたわけだからそのときはいっぱい喋っていたとしたら……って、それは当たり前だから嫉妬をできることでもないか。
「それこそ英梨先輩はどうなんです?」
「真代さんを誘ってほしいと頼んだのは私だから来てくれてすっごく嬉しかったっ、半分ぐらいは無理だろうなって考えでいたからねー」
「そうですね、あと若尾先輩についても聞きたいですね」
「本当にないよ、今回だって早い段階で真白ちゃんと約束をしていたからだよ」
そうか、急に言い出したことでもないよね。
どちらかと言えばそれは若尾先輩で。
気持ちのいい笑みだったし今度こそ完璧に信じられるのでこの話はもう終わりにしておいた。




