05
「お母さんおはよう、今日は女の先輩とお出かけしてくるから遅くなるかもしれない」
「おはよう、もうそのことについては平日のときに聞いているから大丈夫よ」
「うん、朝ご飯も外で食べるからもういくね」
それでも飲食店にいくわけではなくてお弁当を作ってきてくれるみたいだからお金を大量に消費、なんてことにならなくて済みそうだった。
自分の中では外用の服装に着替えていざ出発、大量に物を持っているわけでも長距離歩くわけでもないから気は楽だ。
「真白さんおはよ……ぉお、私服姿の真白さんだ」
「おはよう」
んーこれなら母に頼んで新しい物を買ってくるべきだっただろうか。
外用とはいっても身長が変わっていなくてずっと昔から着ている服装だから今更になって気になり始めた。
ただ? たかだかこの程度のそれで「す、すごい」などと言っている彼女がいたからなんとか冷静になれた。
「おー二人とも早いねー」
「「おはようございます」」
「おはよ、さあ公園にでもいってまずはこいつを食べよう」
少し移動したところで先輩が作ってくれたサンドイッチを食べることに。
お家で母が作ったり自分が作ったりすることもないから中々にレアだった、あとまだ八時だから三人分を用意するために何時に起きたのだろうかと気になり始める。
「美味しいです」
「よかったー」
「でも、大変だったんじゃないですか?」
「そうでもないよ、元々私は早起きをするタイプでそっちにも慣れているからね」
「わかりましたか」
先輩は優しい顔で「うん、だって真白ちゃん心配したような顔だったから」と答えてくれた。
「うぅ」
「高原ちゃん的には微妙だったかな?」
「いえ……二人ともちゃんとご飯を作れてすごいと思っただけです、それと同時に情けなくなりました」
「でも、調理実習のときも問題なくできていたでしょう?」
「あのときはみんながいたから気を付けていただけで雑なところがあるんだよ、実際に両親からは指摘されてしまうぐらいだし……自信がなくなっちゃったよ」
多感な時期だからだろうか、ちょっとしたことで不安定になりやすいみたい。
言葉を重ねることで少しはマシな状態になってくれればいいけどこの子の場合は益々悪い方に傾いていってしまいそうだ。
「私のこれだって二人に食べてもらうから丁寧なだけで雑なときの方が多いよ、ある程度のレベルで食べられればいいだけなら尚更そうなるよ」
「でも、いつも是恒先輩のお弁当は素敵じゃないですか、これだって美味しいですし」
「あ、ありがと、あはは……なんかちょっと恥ずかしいや」
言葉で駄目ならこれしかない。
「よしよし」
「ま、真白さん?」
「それにこれも。高校生になったいまでもお母さんにこうしてもらえると落ち着くのよね、だからあなたにも効果があるといいわね」
なんて嘘だ、抱きしめられたことなんて小学生の頃にはあっても最近にあるわけがない。
甘えようとしたところで「しゃっきりしなさい」と言葉で刺されてしまうだけだからどうしようもない。
「あー真白ちゃんってそういうタイプか」
「え?」
「なんでもない。だけどさ、ちょっとぷるぷるしているようだけど大丈夫かな?」
「えっと、あ、離すわね」
あともう少し続けていたら大爆発、となっていたぐらいには顔が真っ赤だった。
照れているだけならいいけど怒りからくるものだったら朝の時点で駄目になっていたから恐ろしい。
「さ、朝ご飯も食べ終わったからお散歩でもしようか、最低でもお昼までは付き合ってもらうから覚悟しておいてよ?」
「誘われて受け入れたんです、いい加減なことはしませんよ」
「よしきた、高原ちゃんも大丈夫?」
「は、はい、私もちゃんと付いていきます」
「それならレッツゴー……の前にこれを置いてきてもいい?」
歩いていれば先輩のお家の近くにもいくだろうから全く問題はなかった。
二人には前を歩いてもらって私は少し後ろを陣取る、これは格先輩のときが相手でも同じだから誤解しないでほしい。
「若尾先輩にもしたの?」
「さっきの? したことがないわね、頭を撫でたことがあるぐらいよ」
あとは手を握ったことがあるぐらいか。
格先輩がずっとあんな調子で甘々な雰囲気になったことすらない。
これから先もそこだけは変わらなさそうだ、気まずくなってしまったりするぐらいならない方がいいけど。
「そうなんだ、もう何回もしていて慣れているからしてくれたのかと思った」
「ふふ、どんな私よ、それに慣れていて私にとって当たり前に近い行為なら同性のあなたに対してもうしているはずでしょう? いまさっきやらせてもらったのは言葉よりも有効的だと思ったからよ」
「実際、真白さんと若尾先輩を見ているとやることをやっているんだろうなあとはなるよ?」
「なにもないわよ」
でも、いつどこで本命が現れるかわからないからそれぐらいでいいのかもしれない。
後の自分がなにかで引っかかってしまって行動しづらくしないためにも適度な距離を守るのが一番のはずだった。




