SS エリーゼ、新聞で公開後悔?――効果は抜群だ!
先日の新聞から、俺は長年の初恋を実らせた純愛王子だと言われている……。
否定はしない。
しないけれど――。
「あーー!星空の王子さまだ!」
街を歩いているだけで、子どもに(主に女の子)に声をかけられるようになった。
何故か、俺の周りの気温が生ぬるく感じる……。
誰もが、俺を見て優しげな笑顔を浮かべる。
そして、あの記事に、俺のサインを求められる事が多くなった。
噂では、俺とエリーゼ。レオナルドとクラリスの恋愛模様を悲劇的に書いた本まで出回っているらしい。
――顔を変えようかな……。
本気で思う、今日この頃だ。
すると、某有名な新聞社の記者がインタビューを求めてきた。
圧が凄い。
一瞬、断ろうと思ったが。
「ああ、いいよ。こちらのいう通りに書いてくれるならね」
数日後。
――『殿下、麗しの女性について語る!』
"幼い頃から、ずっとかけがえのない存在だった。
私の人生で、彼女ほど大切な女性は現れないだろう。”
――プロポーズの時には伝えましたか?
"これは内緒だけどね。
これからもっと、毎日、愛を伝える予定だ。”
"……照れる姿がとても可愛らしいんだよ。”
(証言者:アレクシス元殿下)
「私、照れてないですよね!?」
「ああ、まだ照れてないな」
「嘘じゃないですか!」
「いいや?これから……本当にするから大丈夫だ」
俺は、先日書いてあった記事のようにエリーゼの前に跪き。
彼女の両手をそっと握った。
「実は、俺の初恋はエリーゼだった」
彼女が静かに息を呑む。
しばらくの間、沈黙が流れ、時計の音だけがやけに大きく聞こえた。
「……私の初恋は遠すぎる世界の人でしたよ。だから、絵本の王子様が大好きになったんです」
「……そうか。ガッカリしたんじゃないのか?物語の方が完璧な王子ばかりだ」
全て飲み込んで、もう大丈夫だと思っていた。
しかし、声に出すと――、
「いいえ。私は絵本を言い訳に、いつも身近な王子様に伝えていたんですよ。……こんなに側にいるのに、手が届かない。ちょっとした抵抗でした」
そっとエリーゼの頬に触れてみる。
いつも強気で、よく振り回されるけれど、彼女の本質が見えた気がした。
「じゃあ、身近な「元」王子になら沢山手が届くな」
「……贅沢ですかね」
「いいや?実は王子も、姫よりも幼なじみの女の子がずっと好きだったってオチが一番好きだ」
首元まで真っ赤になっているエリーゼが愛しくて仕方ない。
もっと堪能しようと顔を近づけると――。
クッションで思い切り殴られた。
笑いが止まらない。
こんな幸せがあったなんて――。
エリーゼ。端役同士、俺たちは自由に生きよう。




